労働安全衛生法とは

「労働安全衛生法」とは

労働安全衛生法(ろうどうあんぜんえいせいほう;昭和47年6月8日法律第57号)は、労働者の安全と健康を確保するために、事業主が、実施しなければならない、配慮しなければならない義務について定めた法律です。

  • 労働災害防止のための危害防止基準の確立
  • 責任体制の明確化 及び自主的活動の促進の措置を講ずる等
  • その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより、
  • 職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、
  • 快適な職場環境の形成と促進を目的とする法律である。

関連する法律や規則は、多岐にわたり、条文数は1500条を超え、頻繁に改正や条文の追加が行われている。
法律が難解であること。また政府のPR不足のため、中堅・中小企業の経営者は「法律を知らない」ことが実際には多い。

このため、中堅・中小企業の事業主(企業側)の多くは、未だに「健康は、個人の問題。自己責任が当然であり、自己で管理すべきもの」という考え方をしていたりする。

長時間労働や高すぎるストレス・プレッシャーが、労働者の心や体を傷つけていることは、医学的にも明白であり、毎年多くの判例が積み上がっているのだが、健康被害や過労自殺などから労働者を守らなければならないということを正確に認識している経営者は決して多くはない。

安衛法が制定された背景

この法律が出来た頃は、炭坑で働く労働者の塵肺被害や、工場の廃棄ガスなどによる各種の疾病が社会問題化し、健康被害を及ぼす排気物などの公害問題を解決・規制する必要があった。

また、産業廃棄物や粉じん等が、「病気」や「長期入院」「死亡」に影響を与えたことが証明された場合、会社の責任で、治療や賠償を行い、営業中止処分となったり、防止策を講じなくてはならないことになる。

このため、それまで、労働基準法のなかの一部の条文であったものを、「労働安全衛生法」として、より詳細にルールを定め、分離独立させたものが、労働安全衛生法である。

メンタル疾患の労災認定

ある広告代理店で平成2年入社の新入社員が、慢性的な長時間労働の結果、心身が疲労し、うつ病となり、平成3年に自殺するという事件が起きた。
この事件は、長い年月をかけて最高裁まで争った結果、平成12年に国内で始めて過重労働によるうつ病自殺の労災認定第1号となる。(賠償額:約1億6,800万円)

この判決以後、工場など危険な職場以外の一般事務所などでも、メンタル不調者や過労死、うつ病自殺などが発生した場合に、その責任を問われることとなり、現在では、メンタルを予防したり、長時間労働による過労死などを予防することが、企業の人事担当者の責務として、明確に法律で規定されるようになる。
怠れば、人事の責任者は、懲役などの司法処分(刑事罰)を労働基準監督署の警察権により受けることになっている。

人事部長など個人を訴えるケースが急増中

現在どこの会社でも、社員の約2%は、メンタル不調者である。
「会社の働かせ方が原因」で、メンタル疾患を発症させた場合、その責任を企業は負わなければならない。裁判ではその負担割合(企業:プライベート)を争うことになる。

企業には、労働安全衛生法により、メンタル予防に努め、月100時間超となる長時間労働を回避するなど、社員の心身の健康を配慮しなければならない義務(安全配慮義務)がある。

月100時間超の長時間労働者の医師面談(産業医面談)を実施せずに(安衛法第66条8・9違反)、 精神障害、メンタル自殺などが発生した場合、悪質なケースは、国が人事等の責任者個人を司法処分する(刑事事件)旨の通達(平成18年3月17日付け基発第0317008号)まで出されている。

最近の裁判では、会社と人事部長などの責任者個人を訴えることが主流となりつつあり、実際に、連帯責任で賠償金を支払う判例が増えている。なお、個人としての賠償責任は、社長、役員、人事部長、人事課長、直属上司などの人事ライン全員に科せられた判決もある。

ごく普通の会社が、今、最も注意をしなければならないことは、従業員の「メンタル」と言っても過言ではない。

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高橋 雅彦株式会社ドクタートラスト 代表取締役社長

投稿者プロフィール

1964年生まれ(50歳)1988年早大理工卒後、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)に入行。病院専門の融資課長などを経験し、2004年同行退社。2004年「医療」と「企業」を結ぶことを目的に「株式会社ドクタートラスト」を設立、社長就任。現在10期目。趣味は休日のパンづくり。 会社がある渋谷区松濤町会の理事を兼任。

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