繊細さんも、そうでない方にも知ってほしい「繊細さん(HSP)の世界」

皆さん、HSPという言葉をご存知ですか。
数年前から認知度が高まってきましたが、「HSPっていう単語は知ってるけど、詳しいことはよくわからないな~」という方も多いのではないでしょうか。
この記事を読むことで、繊細さんは「わかるわかる!」「私だけじゃなかったんだ!」と安心してもらえれば幸いです。
そして、非・繊細さんには「へー!こういう人もいるのか!」と新たな発見につながると幸いです。
※この記事では、HSP専門カウンセラー武田友紀氏の言葉をお借りして、HSPの方を「繊細さん」、HSPでない人を「非・繊細さん」と表記します。「敏感すぎる人」や「HSPの人」というよりも柔らかくて親しみやすい表現だと感じましたので、引用させていただきました。

繊細さん(HSP)ってこんな人

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは、生まれつき敏感で、周囲からの刺激や他人の感情を過度に受け取ってしまう人のことで、1996年に心理学者エレイン・N・アーロン博士が考案した概念です。
病気ではなく、生まれもった性格の傾向といわれ、全人口の約15~20%が繊細さんとされています。
血液型がB型の人と同じくらいの割合というと、ぐっと身近な存在に感じるのではないでしょうか。
そんな繊細さんの特徴はいくつもあります。
数が多いので、3点だけ抜粋してお伝えしますね。

●職場で機嫌の悪い人がいると気になる
●人と長時間一緒にいると、疲れてしまう
●考え方が複雑で物事をじっくり考えるため、行動に移すまで時間がかかる

このような特徴を繊細さんは持っています。
その他の特徴についてはアーロン博士の公式サイトにHSPのセルフチェックリストが掲載されていますので、気になる方はご覧になってみてください。

「Are You Highly Sensitive?」

それではこの3つの特徴について、少し詳しくお話ししていきます。

繊細さんあるある3選

■繊細さんあるある①職場で機嫌の悪い人がいると気になる

繊細さんのセンサーは鋭いので、他人のちょっとした言動から感情を察知します。
たとえば、パソコンのキーボードを強く打つ、他人への指示の口調の強さなどが例にあげられます。
そして、多くの人は「相手が不機嫌なのは、自分が原因なのかも」と不安になります。
あるいは、「他の人が怒られていると、自分が怒られているように感じてつらくなってしまう」という方もいます。
繊細さんにとって、「誰かの機嫌が悪いと気付く」のは、たとえば「机にあるコップが見える」のと同じくらい自然なことです。

■繊細さんあるある②人と長時間一緒にいると、疲れてしまう

実は筆者もHSPですが、最も自分にあてはまる特徴がこれです。
私は現在30代後半ですが、学生時代や20代の頃は仕事でもプライベートでも人に誘われたらとりあえず参加し、頼まれたことは引き受けるということをしていました。
たとえば大人数の飲み会に行ったとして、帰り道では「あのときの私の発言、変じゃなかったかな?」とか「あの人つまんなそうだったな。なんでかな……」と一人反省会が始まります。
家に帰った途端にどっと疲労が押し寄せ、床で寝落ちするということも何度かありました。
その他、繊細さんの疲れるポイントとして、飲み会の場合ですと以下があります。

●その場の雰囲気(明るいか、どんよりしているか)
●話し声が部屋の中で反響しているか、通り抜けていくか
●誰が楽しんでいて、誰が笑っているか
●全員のお皿に料理が取り分けられているか
●空調のかすかな音

感じる力が強く、刺激量が許容量を超えてしまい、その結果クタクタに疲れてしまうんですね。

■繊細さんあるある③あれこれ考えてしまい、仕事を素早くこなせない

仕事でメールを作成する場面をイメージしてみましょう。
繊細さんは、「この文章だと、相手からこういう質問が来るだろう」とか「これも書いておいたほうが良いだろう」など、推測することが得意な人が多いです。
そのため、リスクを回避するためにあれこれとメールに情報を付け足していきます。
結果、メール1通送るのにとても時間がかかってしまうのです。
また、社内がバタバタしていると、繊細さんはいつの間にかそれを感じとって、必要以上に自分を「もっと早くしなきゃ!」と急かしてしまうのです。
周囲の変化に影響を受けやすい繊細さんは、こういったことにも仕事のペースを乱されてしまいます。

繊細さと上手につきあうために

それでは、繊細さんが少しでも心地よく過ごすためにはどうすれば良いのでしょうか。
相手の気持ちを察する能力が優れている繊細さんですが、その予想は外れることもあります。
そのため、相手の気持ちを察したら、それが合っているか言葉で確かめてみましょう。
「そんなの無理!できない!」という場合は、不機嫌の原因を自分ではない何かに目を向けるようにしてみましょう。
たとえば、「あの人機嫌悪いなー。きっとお腹でも痛いんだろう」といったものですね。
不機嫌の理由はその人しか知らないので、悩む時間やエネルギーがもったいないのです。頭を素早く切り替え、自分の目の前のことに集中しましょう。
そして、人と長時間一緒にいることでヘトヘトになってしまう繊細さんは、思い切って「相手の誘いを断る」という一歩を踏み出してみてください。
これまで強く自分を抑え込み、相手を優先してきた人が自分の意見を言い始めると、「人間関係の入れ替わり」が起こります。
「誘ったら断らないあなた」「なんでも頼み事を聞いてくれるあなた」が好きだった人は離れていきます。
ショックを受けるかもしれませんが、「素のあなたが好き」という人たちと新しく出会います。
このように、時間をかけて人間関係が入れ替わり、のびのびと自然体でいられる関係が増えていくのです。
そして、正直気乗りしない飲み会にまで参加していた時間やお金を、自分や家族そして大切な友人にかけることができるのです。
最後に、仕事のスピードが遅いと悩む繊細さんが多いですが、果たして本当に仕事が遅いのでしょうか。
上司や同僚に自分の仕事ぶりについて聞いてみると良いですよ。
「大きなミスがなく、手戻りが少ないから結果的にスムーズ」など未然に防がれたものは目立ちませんが、確実に成果につながっています。
同僚や上司が仕事を評価してくれているなら、変に勘繰らずに「そっか、私はよくできているんだな」と、そのまま受け取ってくださいね。

繊細さんの強み

何かとネガティブな内容に傾きがちな繊細さんですが、繊細さんならではの強みもありますので簡単にご紹介します。

●相手の話を深く受け止めながら聞ける
●相手のニーズを感じ取り、細やかにケアする
●相手の良いところを見つける
●他の人が気付かない小さな改善点に気付く
●リスクを察知する
●日常の小さなうれしさをキャッチする

素敵な強みがたくさんありますね。
ちなみに筆者は日頃、相談対応業務に従事しているのですが、繊細さんの強みをいかせる仕事だと感じています。

まとめ

この記事は、「生きづらさを抱えている繊細さんに配慮してください!」というものではありません。
繊細さんには自分の住む世界を再認識しすることで自分についての理解を深め、非・繊細さんには異世界の状況を知ってもらうことで知見を広げるきっかけづくりになると良いなと考えてこの記事を作成しました。
繊細さんの住む世界はまだまだ奥深いので、興味がある方はご自身でどんどん学びを得てくださいね。

<参考文献>
・ 樺沢紫苑『精神科医が教えるストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社、2020年7月)
・ 武田友紀『気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社、2018年7月)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

山本 千奈美株式会社ドクタートラスト 精神保健福祉士

投稿者プロフィール

精神保健福祉士の資格取得後は医療・行政・教育機関で対人援助業務を行っていました。
障害やさまざまな不調を抱える方々、そうでない方々も誰もがいきいきと「その人らしく」生活できる社会づくりを目指しています。読んだあとに少しでも「ほっ」と安心できるような情報を発信します。
【保有資格】精神保健福祉士、キャリアコンサルタント
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

この著者の最新の記事

関連記事

解説動画つき記事

  1. 衛生委員会等のオンライン開催についての通達が示されました

    【動画あり】もっと深く知りたい方必見!衛生委員会等のオンライン開催について詳しく説明します

一目置かれる健康知識

ページ上部へ戻る