2021年度の最新動向と国際比較~日本の労働生産性のいま~

年が明けて2023年になりました。
本年も「産業保健新聞」をどうぞよろしくお願いいたします。
さて今回の記事では、昨年の同時期にも解説しました、日本の労働生産性と国際比較を取り上げます。
公益財団法人日本生産性本部は、2022年11月8日に「日本の労働生産性の動向2022」を、2022年12月19日に「労働生産性の国際比較2022」を公表しました。
昨年度同様、長引くウィズコロナ生活の中で2021年度の結果はどうだったのか、日本の労働生産性の動向と、国際比較について、ポイントを絞ってご紹介していきます。

昨年の記事は以下からご覧ください。
2020年度の結果や「そもそも労働生産性とは?」というところも解説しています。

※留意いただきたいこと※
労働生産性の計測は、毎年最新の政府統計を利用して過去分を含めて計算を行っています。
そのため、国民経済計算が過去に遡及して改定を行うことなどを反映し、2020年度以前の生産性水準などの数値が昨年報告分と異なっています。

日本の労働生産性

時間当たりの労働生産性

まずは昨年の記事同様、日本の時間当たりの名目労働生産性(就業1時間当たり付加価値額)をみていきましょう。
2021年度の日本の時間当たりの名目労働生産性は4,950円でした。
2020年度の結果が4,940円ですので、わずかに上昇しました。
同じコロナ禍とはいえ、自粛の波がほぼなくなり、経済活動が正常化してきた状況が反映されているように感じます。
ちなみに1995年以降で最も高い数字であり、労働人口減少に対しての対策や働き方改革などの影響が、少しずつではありますが、労働生産性の向上に表れていると考えられますね。

また、2019年度~2020年度では下がってしまった「実質労働生産性上昇率」は2021年度では前年比で+1.2%、1.9ポイント上昇しました。
2020年度の結果では、「時間当たりの労働生産性は上がったけど、実質労働生産性上昇率は下がった」という、喜べる状況ではありませんでしたが、2021年度の結果ではどちらも上昇していますね。

1人当たりの労働生産性

次に、日本の労働生産性(就業者1人当たり付加価値額)をみていきましょう。
2021年度の日本の1人当たりの労働生産性は約808万円でした。
2018年度から2020年度までの3年間、ずっと下降していたのですが、ここでやっと上昇し回復の兆しがみえてきました。


また、就業者1人当たりの実質労働生産性上昇率をみると、前年比で+2.2%、5.9ポイント上昇という、かなり大きな差となりました。
昨年2020年度の結果が新型コロナウイルスの関係か-3.7%だったため、その反動も大きいと考えられますが、1996年度以降で最大の改善幅です。

国際比較

ここまで、日本の時間当たりと1人当たりの労働生産性について確認してきました。
2021年度はどれも回復・改善傾向ではありますが、あくまで日本国内でのお話です。
世界的にみると、日本の労働生産性はどうなのでしょうか?
「世界的に見て低い」と言われていますが、国際的に比較しても回復傾向なのでしょうか?

時間当たりの労働生産性の比較

OECDデータに基づく、2021年の日本の時間当たりの労働生産性は49.9ドルで、OECDに加盟している38カ国中27位でした。
平均は60.9ドルなので、平均値も下回っていますね。
2020年のデータでは同じく38カ国中23位(2021年の更新されたデータでは38カ国中26位)あり、この段階でデータ取得可能な1970年以降で最も低い順位だったのですが、さらに最低順位を更新したかたちです。
1位の国はアイルランドで139.2ドルなので、約2.8倍違いますね。
前述のとおり、日本国内だけで見ると労働生産性は若干ながら向上がみられるものの、国際的にみるとその向上スピードは遅いといえるでしょう。
主要先進カ国の時間当たりの労働生産性のグラフをみると、日本の順位が近年でどれほど下がったのかわかります。
私はこのグラフを見て「国内では回復傾向なのに世界でみるとこんなに下がるのか」と少しショックを受けました。

1人当たりの労働生産性の比較

続いて、1人当たりでみるとどうなのか確認していきましょう。
OECDデータに基づく、2021年の日本の1人当たりの労働生産性は81,510ドル(818万円)で、OECDに加盟している38カ国中29位でした。
なんとワースト10に入ってしまいました。
こちらの時間当たりと同様、データ取得可能な1970年以降で最も低い順位です。
ちなみに1位はまたまたアイルランドで226,568ドル。
約2.8倍の数値なので、単純に捉えるとアイルランド人1人の生産性が、日本人3人の生産性である、ということですね。

「なんでこんなに下がっているんだ!日本も回復傾向なのに!」と思いますよね。
その理由は先進国の多くは2021年には経済活動の正常化が行われていたのに対し、日本はまだ各種制限や自粛のムードがあったため経済成長率が他国とくらべ伸び悩んだことが考えられます。
2022年は日本の制限・自粛ムードもだいぶ無くなったので、来年のデータで順位が上がっていることを期待したいですね。

まとめ

何度もお伝えしていることではありますが、日本国内だけでみれば労働生産性は改善・回復傾向です。
しかし国際的にみると、真面目で働き者が集まる国であるはずなのに、下位順位という結果です。
ネガティブにならず、まだまだ改善・回復の途中であり、伸びしろがあるとポジティブに捉えましょう!

・ 生産性を上げるためには会社として、個人としてどうすればいいのか
・ もっと効率的にできる業務はないか
・ 古い型にはまりすぎてないか

など、ぜひ改革を恐れずに会社全体で考えてほしいと思います。

<参考>
・ 公益財団法人日本生産性本部「日本の労働生産性の動向」
・ 公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」

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中川果穂株式会社ドクタートラスト 広報

投稿者プロフィール

幸福度や労働生産性が高いと評される北欧(ノルウェー)へ留学した際、仕事に対する日本と北欧の良いところ悪いところをひしひしと感じてきました。この良いところをお伝えすべく、北欧の労働環境などに関しての情報はもちろん、身近な話題や疑問を分かりやすくお仕えできるよう日々勉強中です!
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