雪国以外も!この冬も積雪や凍結による転倒に注意!~職場環境のチェックやセルフケアを~

冬季は、積雪や凍結等によって、転倒などの労働災害が発生しやすくなりますが、それは積雪量の多い地域に限りません。
東京都心や普段積雪がない地域では、積雪に対する準備がないために、労働災害が発生してしまうことも多くあります。
そこで、この機会に、冬季の労働災害、とくに「転倒」への備えについて振り返ってみましょう。

冬季は転倒災害が多い

転倒災害の件数は、労働災害でも最も多く、22.5%を占めており(令和3年労働災害統計)、これまでの調査などで、発生時期は、冬季に発生しやすいことが報告されています。
2011年~2012年の転倒要因を分析した調査では、冬季の転倒件数が最も多く、原因は氷による転倒が多いことが明らかとなっています。
また、東京都では、2018年1月に積雪23センチを記録した際、積雪・凍結が原因と思われる転倒災害が大幅に増加したことが報告されており、鳥取・島根県でも、2018年1月~2月にかけての積雪とその後の凍結により、転倒が多発したことが報告されています。
つまり、冬季は特に転倒災害に注意しなければならない時期にあたるのです。

転倒災害を防止するためには?

では、転倒災害を防止するために、どのような対策が考えられるでしょうか。
積雪時、降雪時だけではなく、気温が低下した場合の凍結にも転倒のリスクが潜んでいます。
職場での対策と社員一人ひとりの対策の両方が重要となります。

職場での対策

まずは、職場での転倒リスクを把握しましょう。
下記のチェクリストで設備等の点検を行いましょう。
職場巡視の際に、転倒のリスクが潜んでいないか、今一度確認しましょう。

<チェックリスト>
□ 身の回りの整理・整頓を行っていますか。通路、階段、出口に物を放置していませんか
□ 床の水たまりや氷、油、粉類などは放置せず、その都度取り除いていますか
□ 安全に移動できるように十分な明るさ(照度)が確保されていますか
□ 転倒を予防するための教育を行っていますか
□ 作業靴は、作業現場に適したものを選び、定期的に点検していますか(耐滑性のある靴は、雪や氷、粉による滑りには適用していません)
□ ヒヤリハット情報を活用して転倒しやすい場所の危険マップを作成し、周知していますか
□ 段差のある箇所や滑りやすい場所などに、注意を促す標識をつけていますか
□ ながらスマホやポケットに手を入れたまま歩くこと、手すりを持たない階段の昇降などを禁止していますか
□ ストレッチ体操や転倒予防のための運動を取り入れていますか
□ 天気予報に気を配っていますか
□ 時間に余裕をもって歩行、作業を行っていますか
□ 駐車場の除雪・融雪は万全に、出入口などにも注意していますか
□ 職場の危険マップ、適切な履物、歩行方法などの教育を行っていますか
参照元:東京労働局「冬季の転倒災害を防ぎましょう!」

上記のように、日頃から、4S(整理・整頓・清掃・清潔)がなされているか、転倒リスクがある箇所がないか、転倒リスクが高い場所には注意標識を掲示するほか、何等かの対策が取られているかなどを確認しましょう。
また、建物内だけではなく、建物入口や駐車場などもこの機会にチェックしてください。
そして、上記のような職場環境の対策とともに、社員が安全に出勤・帰宅ができるよう、積雪や降雪が予測される場合には、勤務時間や外出などを柔軟に対応するなどの仕組みづくりも転倒災害の防止につながります。

社員一人ひとりの対策

職場環境を見直すだけではなく、社員一人ひとりが転倒しない歩き方や運動機能の維持に努めることも大切です。

(1) 雪道や凍結路での歩き方に注意しよう

雪道や凍結路では転倒やそれによる怪我を防ぐために以下の歩き方に留意しましょう。

 凍結した路面はできるだけ避ける
 雪道では、足の裏全体で雪面を踏みつけるようにして小幅で歩く
 両手を開けておくなど、すぐに受け身が取れる状態を作っておく
 雪上でも滑りにくいタイプの靴を履くようにする(革靴、ハイヒールは滑りやすいため、ゴム底の靴など滑りにくい靴を着用)

(2)運動習慣をつけて転倒しにくい体づくりを

転倒災害は、高年齢になるほど発生率が上昇し、男性の場合、60代後半は20代の4倍、女性の場合は、60代後半は20代の約16倍となっています。
この原因には、加齢による身体強度や運動機能の低下が関連しています。
また、海外の研究では、スポーツ活動をしていない労働者は転倒リスクが高まることが明らかとなっています。
つまり、運動機能の維持が転倒の予防につながるのです。
冬季は寒さで体を動かす機会が減る方も多いですが、転倒を予防するために運動習慣を身に付けましょう。
簡単にできる転倒予防の運動をここで一つご紹介します。

「スクワットをやってみよう!」
足を肩幅ぐらいに開き、手を腰に当てて、膝の角度が45度~60度程度になるように曲げます。
これを10回×2セットを目安に、無理のない範囲で行いましょう。
※息は止めずに行ってください。

お昼休みなどの休憩時間に、ご自宅でのながら運動として、気軽に取り入れられますよね。
上記のほかにも、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」で、転倒予防体操が公開されていますので、実践してみましょう。

厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

まとめ

転倒は最も発生件数が多い労働災害であり、年間を通して、会社・個人両方で予防に取り組むことが大切です。
転倒が起きやすいこの時期に改めてリスクを把握し、対策に取り組んでみてはいかがでしょうか。

<参考>
・ 大西明宏「休業4日以上の労働災害における転倒原因-月ごとの集計からみた特徴-」
・ 東京労働局「冬季の転倒災害を防ぎましょう!」
・ 島根労働局「STOP!冬の労働災害~積雪・凍結による 労働災害の防止~(PDF)」
・ 廣瀬圭子ほか「睡眠の質と転倒リスクおよび運動機能との関連(PDF)」
・ 厚生労働省「労働災害統計」
・ 中央労働災害防止協会「STOP!転倒災害(PDF)」
・ G C Gauchard、N Chau、C Touron、L Benamghar、D Dehaene、PhP Perrin、J-M Mur「Individual characteristics in occupational accidents due to imbalance: a case-control study of the employees of a railway company(PDF)」(「Occupational and Environmental Medicine」2003年、60号、330~335頁)

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根本裕美子株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

行政保健師として特定保健指導、介護予防事業などを実施するなかで、働きざかりの方の健康づくりが重要であることを実感し、現在、産業保健師として働いています。
これまでの経験を活かし、わかりやすい、役立つ情報を提供します。
【保有資格】看護師、保健師
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【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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