令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の結果 ~メンタル対策とストレスの状況ついて解説~

令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の結果 ~メンタル対策とストレスの状況ついて解説~

厚生労働省より令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の結果が公表されました。
労働安全衛生調査とは、労働災害防止計画の重点施策を策定するための基礎資料とし、労働安全衛生行政運営の推進に資することを目的として周期的にテーマを変えて行う調査です。
令和3年は、以下について調査が行われました。

① 事業者が行っている安全衛生管理
② 労働災害防止活動及びそこで働く労働者の仕事や職業生活における不安やストレス
③ 受動喫煙等の実態

今回はその中で、
・ メンタルヘルス対策への取組状況[事業所調査]
・ 仕事や職業生活に関する強いストレス[個人調査]
の2点について調査結果をみていきたいと思います。

メンタルヘルス対策への取組状況

まず事業所におけるメンタルヘルス対策について、詳しい内容をお伝えします。

令和3年の調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は全体で59.2%〈令和2年調査61.4%〉であり、約6割の事業所が対策に取り組んでいます。
労働者数別でみると、50人以上の事業所で94.4%〈同92.8%〉、30〜49人の事業所で70.7%〈同69.1%〉、労働者数10~29人の事業所で49.6%〈同53.5%〉となっており、50人以上の事業所は9割以上がしっかりと対策に取り組んでいるということが見受けられます。

また、前々回の同調査(平成30年)で公表されたメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合の推移(下記参照)をみると、平成25年からは大きな変化はみられず、近年では全体の約6割の事業所がメンタルヘルス対策を実施していることがわかります。

●メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合の推移(事業所計=100%)

では、事業所が行うメンタルヘルス対策は、一体どのような事が行われているのでしょうか。
取り組み内容を見てみると、最も多いのが「ストレスチェックの実施」で65.2%〈令和2年調査62.7%〉、続いて「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を含む)」が54.7%〈同55.5%〉となっています。
こちらも前々回の平成30年調査のデータをみても「ストレスチェックの実施」は62.9%と過去3年ほど大きな変化はみられませんでした。

また、実際メンタルヘルス不調により休業、または退職した労働者がいた事業所はどのくらいかについても確認しておきましょう。

過去1年間(令和2年11月1日から令和3年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所の割合は、10.1%〈令和2年調査9.2%〉となっています。
このうち、休業した労働者がいた事業所の割合が8.8%〈同7.8%〉、退職した労働者がいた事業所の割合が4.1%〈同3.7%〉となっていました。

以上の結果を簡潔にまとめますと、約6割の事業所がメンタルヘルス対策としてストレスチェック等さまざまな対策を行っていますが、メンタル不調で休業・退職した労働者は約1割いるということになります。
企業におけるメンタル不調者を減らすためには、対策を行う事業所を増やすことや対策内容について見直す必要があるのではないでしょうか。

仕事や職業生活における不安やストレスに関する事項

次に、仕事や職業生活に関する強いストレスについて個人調査の結果をみていきたいと思います。

現在の仕事や職業生活に関することで強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は53.3%〈令和2年調査54.4%〉となっており、約5割の人が強いストレスを感じていることがわかりました。
また、ストレスを感じる内容について多い順にみると、以下となっています。

1.「仕事の量」43.2%〈同42.5%〉
2.「仕事の失敗、責任の発生等」33.7%〈同35.0%〉
3.「仕事の質」33.6%〈同30.9%〉

前回の令和2年調査と比べると「仕事の質」にストレスを感じる労働者が2.7%増加していることがわかります。
これはコロナ渦による労働環境の変化が影響していると推測されます。

さらに、前々回の調査結果とも比較してみます。
下記グラフをご覧ください。

●強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者割合の推移(労働者計=100%)

平成28~30年までは58.0%~59.5%と約6割の人が強いストレスを感じていたことがわかります。
また、令和3年の結果と比べると、過去3年で4.7%減少していることになります。
コロナ渦の影響で働き方に変化があったことが影響されていると想定されます。

また、ストレスを感じる内容については、以下のとおりです。

1.「仕事の質・量」59.4%
2.「仕事の失敗、責任の発生等」34.0%
3.「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」31.3%

「仕事の質と量」が同じ括りになっているだけで、内容について大きな変化はないようです。

なお、就業形態別にみたストレスの内容別労働者割合は以下の図の通りです。

正社員のストレス要因は「仕事量」の割合が多いのに対し、契約社員は「責任の発生や仕事の失敗」、パートで働く人は仕事量とほぼ同じ割合で「対人関係」、派遣は「雇用の安定性」に不安を感じ、強いストレスになっているようです。
就業形態によってストレスを感じる内容の割合はさまざまであり、企業側は雇用形態別にメンタル対策の対応をしていく必要がありそうです。

今回の調査結果から見える課題

令和3年のメンタルヘルス対策等の調査では、令和2年の調査と比較すると大きな変化は見られませんでした。
しかし、3年前と比べ強いストレスを感じる労働者が減ってきているという結果にコロナ渦による働き方の変化が影響しているのであれば、今後新型コロナウイルスの感染者数が落ち着き、テレワークや採用活動の見直しをすすめる等、働き方に変化があると、それによりストレスを感じる人も増加しそうです。

時代や環境に合わせて迅速な対応を行うことが、企業におけるメンタル不調者を減少させるために重要な課題だと言えるのではないでしょうか。

<参考>
・ 厚生労働省 平成30年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
・ 厚生労働省 令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

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小林 ちさき株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

前職は不動産業界に勤務しておりました。同僚や先輩、友達で心の病など体調不良になる人を多く見てきました。また自身がコロナの後遺症で苦しい思いをした経験もあり、健康や労働環境の改善に興味を持ちました。職場で健康に働けるよう、また健康面で不安に思う方のために少しでも力になれたらと思います。

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