日商、東商の調査からみる企業の人手不足の現状~コロナ禍の変化と新卒採用の状況~

日商、東商の調査からみる企業の人手不足の現状~コロナ禍の変化と新卒採用の状況~

最近ニュースを見ていると、飲食店の人手不足が取り上げられています。
建設業などでは、前から人手不足が問題になっていますが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響か、さまざまな業種で人手不足に陥っているようです。
今回は、2022年9月28日に日本・東京商工会議所から公表された「人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況に関する調査」の調査結果をもとに、人手不足の現状やその対策について解説します。

人手不足の現状

まずは、人手不足の現状についてです。
今回調査で「人出不足だ」と回答した企業の割合は64.9%で、前回調査より4.2%増加しています。
前年の同時期とくらべても15%増です。
さらに業種別でみると、特に「建設業」「運輸業」において人手不足がみられます。
この2業種は、たびたび拘束時間の長さや長時間労働の実態が取り上げられており、その問題をなんとか改善しようと、さまざまな施策をしていますが、人手不足感の緩和はまだまだのようです……。

ちなみに、ちょうど2年前である2020年7月~8月の調査結果では36.4%まで下がっていました。
これは常に人手不足上位の業種であり、今回調査でも上位にいる「運輸業」、「宿泊・飲食業」、「製造業」で大幅に人手不足感が緩和されていたためです。
2020年4月7日~5月25日で第1回緊急事態宣言が発令されており、旅行などの移動が制限されたことなどが原因と考えられ、ここにも新型コロナウイルスの影響が見てとれます。
しかし、世間が徐々にコロナ禍前の状況に戻りつつあるのと並行して、人手不足感も再び高まってしまっているのです。

 

人手不足を解消するための対策・取り組み

上記のとおり、約65%の企業が人手不足を感じているわけですが、調査結果を見てみると、企業が大きく2つに分けた対策・取り組みを行っています。
1つめは、以下のような直接的な対策、取り組みです。

・ 人が足りないから(正社員、周期雇用社員を含め)雇用する
・ 社員の能力開発をして生産性を上げる
・ 労働時間、残業時間をやむなく増やす

特に、今回の調査ではすでに在籍している社員の業務効率化や生産性を向上させる取り組みを行う企業が約60%とかなり増えています。(図3参照)
というのも、人が足りないから新しく雇用するのがごく自然な流れではあるですが、労働人口がどんどん減っている日本では、追加で雇用するというのが昔ほど簡単ではなくなってきています。
そのため、今在籍している社員でどうにか業務をこなしていきたいという思いが表れているのではないかと考えます。

だからといって、どんなに効率的に業務をこなしても人手が足りない!という場合は新規雇用しかありません。
そこで2つめとして、以下のような優秀な人材を獲得するため、魅力的な企業・職場にする対策・取り組みがあります。

・ 賃上げの実施、募集賃金の引き上げ
・ 福利厚生の充実
・ 柔軟な働き方の推進

今回調査で増えたのは「多様で柔軟な働き方」に取り組む企業で、その割合は26.1%、およそ4分の1の企業が取り組んでいることになります。(図4参照)
コロナ禍でテレワークなどが普及し、労働者の選択肢が広がったこともありますので、この点の対策に取り組むのは人手不足の企業としてとても重要でしょう。

 

 

人手不足解消のカギ、新卒採用の状況は?

さて、前述したとおり、「人が足りないから新しく雇用する」というのは自然な流れだと思うのですが、特に新卒採用は毎年1回シーズンが到来する人材確保の大チャンスです。
人材不足がこれだけ問題になっているのだから、「企業は新卒採用に熱心!」と思いきや、調査結果を見るとそうでもなく、そもそも新卒採用で募集した企業は約半数に過ぎません。(図5)
加えて、募集した企業で予定人数が採用できたのはさらに半数で、募集しなかった企業を含め4分の3の企業は必要な人材を確保できなかったことになります。
ここにも労働人口減少の問題、売り市場な状況が表れていると言えます。

そして昨今、新卒採用においてインターンシップも重要といわれています。
前述のとおり、売り手市場である今、「いかに学生(求職者)に知ってもらうか」がカギだからです。
しかし、調査結果によるとインターンシップを実施した企業も新卒採用実施企業と同様に約半数です。(図6)

実施できない理由、実施するうえで課題となる点としては以下が挙げられ、結局のところ人材不足でマンパワーが足りないからインターンも難しい、という悪循環になっているように感じます。

・ 実施に係る社内人員の確保
・ 実施に係る社内スケジュール、時間の確保

今回の調査結果で、日本企業は本当に人材不足に悩まされていると再確認しました。
人材を採用できれば1番だとは思いますが、それが難しい現状ではいかに魅力的な企業にするかがポイントのように思います。

無駄な業務、効率化できる業務はないでしょうか?
社員が働きやすい環境になっているでしょうか?

採用活動しているのにどうにもうまくいかない企業は、まず社内に目を向けてみるのもひとつの手かもしれませんね。

<参考>
・ 日本商工会議所「『人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況』の集計結果について~『人手が不足している』と回答した企業は64.9%と、過去最高水準に迫る~」
・ 日本・東京商工会議所「人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況に関する調査」調査結果
・ 日本・東京商工会議所「人手不足の状況、アフター・コロナを見据えて推進すべき働き方に関する調査」結果概要

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中川果穂株式会社ドクタートラスト 広報

投稿者プロフィール

幸福度や労働生産性が高いと評される北欧(ノルウェー)へ留学した際、仕事に対する日本と北欧の良いところ悪いところをひしひしと感じてきました。この良いところをお伝えすべく、北欧の労働環境などに関しての情報はもちろん、身近な話題や疑問を分かりやすくお仕えできるよう日々勉強中です!
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