直前のダイエット厳禁? 病院看護師出身の産業保健師が直伝「定期健康診断を無駄にしないポイント」

みなさん、今年度の定期健康診断はもう受けましたか?
企業等に勤める方の定期健康診断は国によって事業者に義務付けられており、労働安全衛生規則44条にも明記されています。

(定期健康診断)
第44条 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
出所:労働安全衛生規則

健康診断を受ける方の中には「受けなきゃいけないから仕方なく受ける」という方もいるのではないでしょうか。
しかし、せっかく時間を作って受けた健康診断ですので、できれば活用しませんか?
この記事では健康診断を活用するポイントをお伝えします。

健康診断でチェックできる項目

一般的な定期健康診断では、医師の診察を含めて次の11項目を調べます。

<定期健康診断の項目>
① 既往歴および業務歴の調査
② 自覚症状および他覚症状の有無の検査
③ 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
④ 胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査
⑤ 血圧の測定
⑥ 貧血検査(血色素量、赤血球数)
⑦ 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
⑧ 血中脂質検査(LDL・HDLコレステロール、TG)
⑨ 血糖検査
⑩ 尿検査(尿中の糖および蛋白(たんぱく)の有無の検査)
⑪ 心電図検査

年齢や妊娠の有無などの一定条件を満たし、医師が必要でないと認めた場合には省略できる項目もありますが、基本的には検査します。

効果的な健康診断の受け方

病院に行く機会のない方にとっては、1年に1回の定期健康診断が唯一、自分の健康状態を知る機会かもしれません。
その機会を無駄にしないために以下の3つに注意していきましょう。

① 飲食に関する制限は、しっかり守る

検査のなかには、飲食により結果に影響が出るものがあり、特に血中脂質や血糖は影響を受けやすいです。
お腹が空くからといって、水やお茶(無糖)以外のものを飲んだり、飴やガムを食べたりすることでも影響が出ることがあるので、事前に医療機関から示された制限は守るようにしましょう。

② 医師の診察では、伝えることを考えておく

健康診断では、医師から診察を受けます。
しかし、たとえ普段から気になる症状があったとしても、咄嗟にそれを伝えることは難しいのではないでしょうか。
通常の病院外来などでは、何か症状がある前提で「どんな症状があるか」を問うのに対して、健康診断は何も問題がないこと前提で「症状があるかどうか」を問うと考えると、健康診断時に症状を伝えるハードルは少し高いですね。
そのため、診察前には「いつから」「どんな時」「どんな症状」があるのかを自分の中で整理し、できればメモしていくのが良いでしょう。

③ 直前に過度なダイエットをしない

健康診断前に、急いで体重を減らそうとした経験はありませんか?
健康診断では、体重も記録されるため、少しでも体重を軽くしようと食事を極端に制限したり、激しい運動をしたりする方がいるかもしれません。
しかし、それでは普段の健康状態が正しく確認できず、検査項目によっては逆に悪化するものもあります。
普段の健康状態を評価するためには、直前に極端なダイエットをするのではなく、普段から少しずつ健康的な習慣を心がけましょう。

目的は “受けること”、“受けさせること” じゃない

はじめに書いたように、定期健康診断は国により実施が義務づけられています。
企業等の衛生担当の方は、ちゃんと対象者全員が健康診断を受けさせたか、結果はそろったか、というところにゴールを設定していませんか?
また受診した本人も、受けることをゴールにしていませんか?
健康診断の目的は、健康状態を知ること、異常を早期発見すること、そして病気を予防することです。
企業としては、健診事後の措置として、保健指導・受診勧奨や、産業医への意見聴取のうえ就業上の措置を行う必要があります。
しかし、それだけでなく健康診断結果は、従業員の健康状態から職場環境や作業内容などを改善する必要性を確認し、体調不良による退職者や休業者を出さない対策を講じる一助になります。
また、健康増進のために、何にアプローチするべきかを考えることもできます。
健康診断を受けた本人としては、自分の検査結果と生活習慣を合わせて経年的に確認し、見直すべき生活習慣を考えやすくなります。
さらに、検査結果には基準値がありますが、すべての人が基準値に沿うわけではありません。
毎年の検査結果を確認することは、「自分にとっての普通」を知ることになり、同時に「自分にとっての異常」を知ることにもつながります。

このように、健康診断は単に決まりだから仕方なく受ける厄介なものではなく、有効な活用のできるツールです。
自分の健康、従業員の健康づくりにぜひ活用していきましょう。

<参考>
厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断(PDF)」

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佐藤 せな株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

看護師として病院で救急看護や慢性期看護などを広く経験するなかで、思わぬ病気により、過去の生活を後悔する患者さんを数多く目にすることで、病気の予防に強く関心を抱く。
ドクタートラストに参画後は、働く人の病気の予防に貢献するため、健康診断後の保健指導などを実施。また、実際の病気のありようや経過、患者さんの気持ちの変化など、看護の現場にいたからこその知見を活かした健康セミナーなども行っている。
【保有資格】看護師、保健師
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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