企業での歯科健診も義務化される?政府が「国民皆歯科健診」を検討!

政府が2022年6月に決定する指針「骨太の方針」で、「国民皆歯科健診」の導入が検討されています。
現在、「歯科健診」は1歳半と3歳、学校に通う子どもが受診義務の対象ですが、年齢を問わず1年に1回の歯科健診の受診を義務づけることで歯の健康を守っていくのが目的です。
2021年に示された「骨太の方針」には「生涯にわたって歯科健診を強化すべき」とあり、歯科健診の受診は推奨されていたものの、今までは個人の自由に任されていました。
しかし、2人に1人が1年以内に歯科健診を受けていない現状などを踏まえ、今回の方針に「国民皆歯科健診」という表現を盛り込むことが検討されているのです。
今回は、歯科健診の義務化の背景、企業における歯科健診の状況をわかりやすく解説します。

歯科健診義務化の背景

歯科健診義務化の背景には医療費の削減という目的があります。
厚生労働省によると2020年度の医療費は42.2兆円と、前年比で若干減少しているものの、近年は過去最高額を更新し続けており、少子高齢化がこれからも進んでいくことを考えると、医療費の削減は必ず達成しなければならない問題です。
また、2021年にサンスターグループによって、歯の本数やかみ合わせによって医療費が大きく変わってくるという研究結果が示されました。
本研究によると、歯の本数が少なく噛み合わせが悪いと全身の医療費が上昇、すなわち歯の健康維持が、結果的に医療費の削減につながるとわかったのです。
現在は、過去1年に歯科健診を受けた者の割合が52.9%にとどまっており、40歳以上を対象とした歯周疾患検診の受診率は5%とかなり低い水準で推移している状況です。
政府は定期的な歯科健診を義務化することで、歯周病の早期発見をうながし、医療費の上昇に歯止めをかけたい考えがあります。

企業の歯科健診は義務なのか

事業者には安全配慮義務があり、労働者に健康診断を受けさせなくてはいけません。
しかし、企業における歯科健診は義務ではなく任意であり、実施している企業はほとんどありません。

歯科健診が必要な業種

ただし、労働安全衛生規則48条にあるように、歯科健診が義務づけられている業種もあります。

(歯科医師による健康診断)
第48条 事業者は、令第22条第3項の業務に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際、当該業務への配置替えの際及び当該業務についた後6月以内ごとに1回、定期に、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。
出所:労働安全衛生規則

歯科健診を受けなければいけないのは、労働安全衛生法施行令22条3項に定められた業務をおこなっている者です。

(健康診断を行うべき有害な業務)
第22条
3 法第66条第3項の政令で定める有害な業務は、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗ふつ化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務とする。
出所:労働安全衛生法施行令

つまり、歯に有害な業務に従事している労働者は半年ごとに歯科医による健康診断受診が義務づけられているのです。
また、現行では50名以上の事業場では実施結果の所轄労働基準監督署への報告が義務づけられていますが、この点についても議論が進み、事業場の人数にかかわらず報告の義務化が検討されています。

「歯科健診義務化」の今後の見通し

本稿執筆時点で、政府はプロジェクトチームを立ち上げ、具体的な国民皆歯科健診の検討を進めており、2025年の導入を目指しています。
まだ、全体像は不透明ですが、歯科健診の義務化は十分現実的だといえるでしょう。
前述のとおり、事業場の人数にかかわらず歯科健診報告を義務化する動きもあり、社会全体として歯の健康に対する意識が向上してきたように感じます。
今は、一部の職業を除き任意となっている歯科健診ですが、今後は業種を問わず歯科健診が義務づけけられる可能性も考えられます。

いつもの健康診断とともに歯科健診を実施することで、長期的な健康リスクの回避が期待できます。
社会全体として口腔保健への意識が高まっている今、企業内で歯科健診の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

<参考>
・ 厚生労働省「労働安全衛生法に基づく歯科医師による健康診断を実施しましょう」
・ 厚生労働省「自治体における歯周病対策等について」
・ 厚生労働省「口腔保健と全身的な健康状態の関係について」
・ 厚生労働省「歯の健康」
・ 厚生労働省「医療費の動向 令和2年度の状況」
・ サンスターグループ「歯の本数が多く、かみ合わせが良いほど医療費が低い」

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秋本雄基俳優兼ライター

投稿者プロフィール

俳優として舞台やCMなどに出演する傍ら、ライターとしても活動中。
持ち前の情報収集能力で、産業保健について猛勉強中です。
ちょっと難しい産業保健のお話をわかりやすく、おもしろくお届けできるように頑張ります。
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