本当にあった労災事例…… 全国安全週間にむけて労災事例をご紹介!

労働災害対策を進める際には、過去の労災事例を参考にするのが有効です。
労災のリスクはさまざまな場所に存在します。
すでに起こってしまった労災の原因を追究することで、労災の起こりやすい場所を特定し、対策をとる手助けになるでしょう。

今回は、いくつかの労災事例から、企業がおこなうべき労働災害対策について詳しく解説していきます。

作業時や通勤中に起こった労災の事例

工場や建設現場などは労災の起こりやすい場所です。
厚生労働省が発表した2021年の労働災害発生状況によると、製造業と建設業、運送業での労災件数は全体の約4割を超えています。
重機などを扱う事業場も多く、重大な労災に発展するケースも少なくありません。

また、事業場を問わず通勤中は労災が起こりやすい場面なので、注意が必要です。
実際に起こったいくつかの労災事例を見ていきましょう。

【薄鉄板のコイル巻きを中腰で抱えた際に背中から腰部を痛めた】

労働者が作業場で機材の整理をしているときに起こった労災です。
工場で使用する薄鉄板のコイル(30㎏)を持ち上げるときに、背中から腰にかけて激しい痛みが走り、病院を受診した結果、腰椎椎間板ヘルニアと診断されました。

<原因>
・ 腰に負担のかかる姿勢で重いものを持ち上げてしまった
・ 1人で持ってしまった
・ 器具を使用しなかった

<対策>
現在、労働者の高齢化が進んでおり、こういった労災は非常に増えています。
重いものを持ち運ぶときは、急激な身体の移動をなくして、慎重な取り扱いを意識しましょう。
できるだけ1人で運ばず、複数人で運ぶことが理想です。
とはいっても人員が満足にいる事業場ばかりではありません。
その際は、台車やリフトを使用するように徹底しましょう。
人によって持てる重量も変わってくるので、年齢や性別により事前に運べる重量の制限を設けておくのも有効な手段です。

【ペットボトルに小分けしたシンナーの誤飲による中毒】

臨時の清掃業務に従事することになった労働者が、作業の効率化を図るために、ペットボトルにシンナーを入れて持ち歩き、清掃作業をおこなっていました。
労働者は作業終了後にシンナー入りのペットボトルを持ち出し、自分のロッカーへ保管。その後、しばらく出勤することはなく、5日後に出勤し業務をおこないました。
休憩時間にロッカーへ戻ると、労働者はロッカー内にあったシンナー入りのペットボトルを水と誤認して、飲んでしまいました。
結果、吐き気を催すなどの中毒症状がでて、復帰までに4日を要しました。

<原因>
・ シンナーを小分けにして持ち出してしまった
・ 作業手順が明確になっていなかった
・ 教育が徹底されていなかった

<対策>
最も大きな問題は有害物に関する教育が徹底されていなかったことです。
今回は少量だったので4日の休職で済みました。
しかし、もっと量が多かった場合や更に危険な薬剤だった場合、命にかかわる可能性があります。
たとえ臨時の作業だとしても、有害物を使用する際にはマニュアルを作成し、教育を徹底しましょう。

【不正に通勤手当を受給していた労働者が自転車通勤中に転倒した】

電車通勤での定期代を不正受給していた労働者が、自転車通勤している最中に転倒してしまったケースです。
その日は雨でしたが、労働者は傘をさし、片手で自転車を運転して事業場へ。
出勤時間が迫っていたこともあり、労働者は急いでいました。
片手での不安定な状態での運転に加えて、かなりスピードを出していたこともあり、濡れた地面でタイヤが滑り転倒。
大腿部骨折という大けがを負いました。
出勤時間を過ぎても出社してこない労働者を心配した管理監督者が労働者へ連絡。
事故が明るみになり、電車通勤の定期代を申請していたにもかかわらず、自転車で通勤していた事実が露見しました。
労災は認められたのですが、不正受給により謹慎処分となりました。

<原因>
・ 事業場へ届け出を出さずに自転車通勤していた
・ 急いで通勤していた
・ 道路交通法を守っていなかった

<対策>
通勤時の労災を防止するには、企業に申請した通勤方法を守ることが重要です。
労災の申請をするためには「合理的な経路及び方法」での通勤が条件になるため、企業は普段の通勤方法や経路を把握しておく必要があるためです。
加えて、時間に余裕をもち、交通規則に則って通勤することも大切です。
焦りや危険な運転は事故を招きます。
このケースでは労災が認定されましたが、道路交通法を守っていない状態で起きた事故は、労災認定されない場合もあります。
通勤する際は、できるだけ時間に余裕をもち、道路交通法を順守しましょう。

企業に届け出ていない通勤方法でも、通勤経路が「合理的である」と認められれば労災として認定されます。
今回は、自宅から事業場までの最短距離を走っていたので労災が認定されました。
不正受給に関しては、不正受給した通勤手当は返還。
最悪の場合、懲戒解雇もありえます。

オフィス内で起こった労災の事例

労災は工場などのイメージが強いですが、オフィス内でも労災は起こります。
なかには非常に重大な労災に発展するケースもあるため、労働環境には配慮が必要です。
では、どんな労働災害がオフィス内で起こるのでしょうか。

【ながらスマホによる不注意で階段から転落しそうになった】

このケースは労災に認定はされていないものの、労災につながるヒヤリハット事例です。
労働者が出勤し、地下1階の更衣室に向かう際にスマートフォンを操作していたところ、階段を踏み外し、転落しそうになりました。

<原因>
・ ながらスマホをしていた
・ 社内での注意喚起がなかった

<対策>
駅や街中と同じように、社内でのながらスマホも非常に危険です。
中央学院大学の齋藤大輔教授の研究によると、歩きスマホをしている人の視界は、通常の人の視界と比べて、平均40%低下しているそうです。
視線の方向によっては80%低下するという研究結果も出ています。

オフィス内でも人とぶつかったり、階段を踏み外したりして、大きな事故につながることが十分に考えられます。
事業場内でながらスマホに対する注意喚起をおこない、労働者同士でながらスマホを抑制していくなどの対策が重要です。

【長時間労働の結果、うつ病にかかり自殺した】

新人社員として入社した労働者が、長時間労働によりうつ病にかかり自殺してしまったケースです。
6月に新たな部署に配属された労働者ですが、新たな部署は仕事量が多く、長時間労働の連続で、深夜の帰宅が続いていました。
翌年の1月以降、更に仕事量が増え、帰宅もままならない状況になり、同年の7月には明らかな体調不良の様子が見られるようになっていました。
8月には、上司に「自信がない、眠れない」と相談しましたが、上司は特に負担を軽減させるような措置はとらずに放置し、その結果、8月の末日に自殺に至りました。
労働者の両親は会社を相手取り、裁判を起こし、最終的に会社側が約1億6,800万円を支払うことで和解が成立しました。

<原因>
・ 劣悪な労働環境を放置した
・ 企業が持つ安全配慮義務を果たさなかった
・ 労働者の申し出に対して必要な措置をとらなかった

<対策>
警察庁が発表した「令和3年中における自殺の状況」によると、近年自殺者数は減少を続けていますが、新型コロナウイルスの流行もあり、増加に転じる兆しがあります。
社会全体の問題として、これ以上労働者の中から自殺者がでることは絶対に避けなくてはいけません。
特に過重労働は労働者のメンタルヘルス不調に直結するため、企業は労働者の労働環境を把握し、改善をしていく必要があるでしょう。

また、事業者には安全配慮義務があります。
労働者に対して、産業医による面談を含めた、生命や身体の安全を確保して働くための配慮をしなくてはいけません。
今回のケースでは、労働者から不調の申し出があったにもかかわらず、企業は必要な措置をとりませんでした。
おそらく不調を申し出たときにはうつ病を罹患していたと考えられ、企業がそれを見過ごした責任は非常に重いです。
企業全体として、うつ病の未然予防を徹底し、うつ病になってしまった労働者には丁寧なケアをおこなうことが重要です。

全国安全週間には労災防止の取り組みを

厚生労働省が労災防止活動の推進のために実施しているのが全国安全週間です。今年は2022年7月1日(金)から7日(木)の期間に実施され、6月いっぱいが準備期間として設定されています。
全国安全週間実施の目的は、令和4年度全国安全週間実施要綱のなかで以下のように説明されています。

産業界での自主的な労働災害防止活動を推進し、広く一般の安全意識の高揚と安 全活動の定着を図ること
出所:令和4年度全国安全週間実施要綱

労働災害はささいな注意不足で起きます。
事業者と労働者の双方が労災防止の基本的なルールを再確認することで、労災のリスクを抑えます。
また、事業者側が労働環境を見直すきっかけとしても全国安全週間は有効です。
全国安全週間実施要項の中で、安全週間及び準備期間中に実施する事項について以下のように説明しています。

(1)安全広報資料等を作成し、配布する。
(2)様々な広報媒体を通じて広報する。
(3)安全パトロール等を実施する。
(4)安全講習会や、事業者間で意見交換し、好事例を情報交換するワークショップ等を開催する。
(5)安全衛生に係る表彰を行う。
(6)「国民安全の日」(7月1日)の行事に協力する。
(7)事業場の実施事項について指導援助する。
(8)その他「全国安全週間」にふさわしい行事等を行う。
出所:令和4年度全国安全週間実施要綱

どれだけ労災対策を徹底しても、時間とともに労災への意識は薄れていきます。
これは仕方のないことです。

しかし、そういう時に重大な労働災害が起きてしまうのも事実。
全国安全週間をひとつのきっかけとして、企業の産業保健体制の見直しをおこなうことをおすすめします。

<参考>
・ 厚生労働省「令和4年度全国安全週間実施要綱」
・ 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
・ 厚生労働省「令和3年における労働災害発生状況について」
・ 中央学院大学現代教養学部 齋藤大輔「歩きスマホによる有効視野の変化」
・ 警察庁「令和3年中における自殺の状況」

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秋本雄基俳優兼ライター

投稿者プロフィール

俳優として舞台やCMなどに出演する傍ら、ライターとしても活動中。
持ち前の情報収集能力で、産業保健について猛勉強中です。
ちょっと難しい産業保健のお話をわかりやすく、おもしろくお届けできるように頑張ります。
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