「健診」と「検診」は何が違う?追加してでも受けたいがん検診はコレ

「健診」と「検診」は何が違う?追加してでも受けたいがん検診はコレ

新年度がスタートして1ヶ月、新しい部署、職場、人間関係など、自分を取り巻く環境が大きく変わった時期ですね。
また年度頭に定期健康診断を実施している企業にお勤めの方は、会社負担額や受診可能ながん検診の内容を眺めつつ、「今年のオプション検査は何を受けようかな?」と考え出す時期でもあるでしょう。
今回は、長年にわたり日本人の死因1位である、「悪性新生物(がん)」を予防するがん検診について、特に定期健康診断の「オプション」の観点から詳しく説明します。

「けんしん」について~「健診」と「検診」の違い~

企業に勤めていると、健診を受けるように案内が届きます。
皆さんが毎年受けている健診(定期健康診断)は、「企業は従業員に健診を受けさせる」、「従業員は健診を受ける」ことが法律で義務づけられています。

<企業の義務>
事業者(企業)は、従業員に対し医師による定期健康診断を受けさせなければならない(労働安全衛生法第66条)
<従業員の義務>
従業員は、定期健康診断を受ける義務があり、健康診断受診を拒むことはできない(労働安全衛生法第66条第5項)

また、定期健康診断での受診項目は以下のとおりです。

【定期健康診断の受診項目】
1 既往歴および業務歴の調査
2 自覚症状および他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
4 胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量および赤血球数)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
11 心電図検査
出所:労働安全衛生規則第44条をもとに筆者作成

毎年なんとなく受けている方もいるかもしれませんが、法律に則って実施されているため、健診の受診は必須です。
なかには、上記のスタンダードな健診に「がん検診」などのさまざまなオプション検査をつけて受ける方もいらっしゃいます。
また、福利厚生の一環として、オプション検査の自己負担額ゼロ・軽減などにより、がん検診を受けやすくする取り組みを行っている企業もあります。

ところで、先ほどから何度も登場している「けんしん」ですが、「健診」と「検診」の2種類があり、読み方は一緒でも意味はまったく異なります。

「健診」:一次予防

「健診」は「健康診断」の略であり、現在のからだの状態が健康かどうか、病気の危険因子が潜んでいないかどうかを確認するために実施されます。
結果をもとに、生活習慣を見直すことが目的の「けんしん」です。
病気にならないように気を付けるための「一次予防」に位置付けられています。

「検診」:二次予防

「検診」は、がん検診(胃、大腸、肺、子宮、乳など)や、歯科検診など、特定の病気を検査することを目的とした場合に使用されます。
早期発見・早期治療を促して病気が重症化しないようにするための「二次予防」に位置付けられています。

「病気」のほとんどは、初期に自覚症状が出てくることが少ないといわれており、気づいた頃には、取り返しがつかないほど悪化している、なんてこともあります。
そのため、客観的に知ることのできる「けんしん」は、どちらも健康維持に非常に大きな役割を持っています。

がん検診の選び方(年齢別・症状別)

福利厚生や加入している健保、自身の予算などで受診する・できる項目も変わるため、「じゃあどんながん検診を受ければ良いの?」と気になる方もいらっしゃるでしょう。
厚生労働省が出している指針をもとに紹介します。
ぜひ次回健診のオプションの参考にしてみてください。

【男性版】年代別がん検診おすすめオプション

年代20代30代40代50代60代以降受診間隔
胃がん(レントゲン、より精密な検査:カメラ)1年に1回
肺がん(胸部レントゲン)1年に1回
大腸がん(便検査、より精密な検査:カメラ)1年に1回

【女性版】年代別がん検診おすすめオプション

年代20代30代40代50代60代以降受診間隔
子宮頸がん(子宮細胞診)2年に1回
乳がん(マンモグラフィ、触診、エコー)2年に1回
胃がん(レントゲン、より精密な検査:カメラ)1年に1回
肺がん(胸部レントゲン)1年に1回
大腸がん(便検査、より精密な検査:カメラ)1年に1回

出所:厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(令和3年10月1日一部改正)」をもとに筆者作成

がんが発症しやすい年齢は表での記載どおり、40歳を境とするものが多いですが、それより若くても発症する可能性はあります。
また、◎がないので受けてはいけないというわけではありません。
自身の状況(家族歴や症状など)に応じて検討してください。
がん検診も健診と同様に、受けっぱなしにならないようにしましょう。
再検査、要精密検査などの判定がある場合は、該当する診療科を受診し、確定診断を受けるまでが一連のセットです。
異常なし・所見なしの方は、受診間隔を参考にして、来年度以降も受診し、経過をみていくことをおすすめします。

がん検診を受けて自分の健康を守りましょう

欧米ではがんによる死亡は横ばいまたは減少傾向にありますが、日本は増加傾向が続いています。
その原因のひとつとされているのが、「がん検診受診率」です。
たとえば、乳がん・子宮頸がん検診のアメリカの受診率は70~80%といわれているのに対し、日本では30~40%にとどまっています。
がん死亡率1位の肺がんの検診受診率も男性で50%、女性では40%ほどとなっています。(厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」より)
さらに、2020年2月頃より流行し始めた新型コロナウイルスの影響により、がん検診の受診率が低下しています。
2021年は回復傾向にありますが、流行前ほどは戻っていないため、新型コロナウイルスの影響が続いている状況です。

がんは早期発見・早期治療が非常に有効な病気のひとつです。
からだや時間、費用などの負担の軽減をはかるために、定期的に検診を受けることが重要となります。
また、自身の生活習慣もがん発症の要因になることもあります。
「健診」と「検診」は自分のからだの「成績表」と捉えて、生活習慣を振り返る機会にして、受けっぱなしにならないようにしましょう。
最後に、長年染みついている生活習慣で見直すところを見つけたり気づいたりするのはなかなか難しいものです。
より良い生活習慣にするために、保健師との面談や特定保健指導なども活用しましょう。
相談をもとに一緒に考えてくれる良い機会になるはずです。

<参考・引用>

・ 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(令和3年10月1日一部改正)」
・ 公益財団法人日本対がん協会「2021年のがん検診受診者数 新型コロナ流行前より10.3%下回る 前年比23.5%増で回復傾向も受診控えなど影響 日本対がん協会支部調査」

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保健師 大島かよ

投稿者プロフィール

病棟・クリニックでの患者さんとの関わりの中で、「もっと早く治療開始できていれば」、「病気になる前に何かできないか?」と考えるように。その思いから次第に予防に興味を持ち、「働く世代」に対するアプローチがしたい!と、産業保健の世界へ飛び込みました。
現在産業保健師として数社訪問、健保で特定保健指導を担うフリーランスの保健師です。
自分の経験なども盛り込みながら、産業保健に関連する情報を発信していきます。
【取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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