ハラスメントのリテラシーを高めよう!パワハラ相談件数が増加した背景には何がある?

2021年12月14日、一般社団法人日本経済団体連合会は「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」 をとりまとめ、公表しました。
この調査は、職場のハラスメント防止に関する法律の施行から1年が経過したことを踏まえ、企業における課題や取組みについて調査し、今後の政策を検討する参考とするとともに、効果的な取組等を広く展開するためとして行われ、400社から回答が得られ、主として以下のことが発表されました。

① パワハラに関する相談が増加傾向
② ハラスメントに関する最近の相談動向・形態
③ ハラスメントの理解促進のための取組み

以下では、上記3つを詳しく解説します。

パワハラに関する相談が増加傾向

パワハラに関する相談件数は、「増えた」が44.0%と最も多い結果となりました。
セクハラに関する相談件数は、「増えた」が11.5%に留まりました。そして「減った」が28.8%ありました。

この差は、パワハラとセクハラの防止に関する法律ができたタイミングによる差だと考えられます。

セクハラは1999年4月に男女雇用均等法にて「女性労働者に対するセクシュアルハラスメント(セクハラ)防止のための配慮義務」が定められ、都合30年以上経過しています。
対してパワハラは、今まで定義をするのが難しく法律に明文化されていませんでした。
ようやく2020年6月に改正労働施策総合推進法が施行された、まだ「若い法律」です。
そのため、法律が施行される前にくらべて相談がたくさん出てきた、ということが今回の調査の結果から如実に見て取ることができます。

出所:一般社団法人日本経済団体連合会「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」

ハラスメントに関する最近の相談動向・形態

パワハラの相談の起因となるものとして、「コミュニケーション不足」が挙げられています。
具体的には以下があり、リモートワークによる問題点がそのままパワハラ問題に進展するというケースがありました。

・ リモートワークにより、コミュニケーションが希薄化するために起こるすれ違い
・ リモートワークによるコミュニケーション不足を訴える社員の増加

また、「パワハラの理解不足による相談」も挙げられています。

・ ハラスメントというより、従業員間の諍いごとといった内容の相談・訴え
・ 指導・指摘、あるいは上司や周囲の言動で、本人の意に沿わないという点のみで、ハラスメントを主張してくるケース
・ パワーハラスメントとまではいかない相談や上司のコミュニケーションスタイルが部下と合わずに相談に至るケース
・ 上司が適切な指導に対して、萎縮する懸念。何かあると部下から「ハラスメントだ」と言われることを恐れるあまり、仕事を抱えてしまう、適切な部下指導が出来ない管理職がいるという声

出所:一般社団法人日本経済団体連合会「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」

ハラスメントの理解促進のための取組み

また、コミュニケーション不足解消のために、1on1ミーティングを実施したり、感情コントロールのためのアンガーマネージメント研修を開催したり、SNSでいう「いいね」を送れるようなツールを導入して褒め合う文化の醸成に力を入れたりしている企業がありました。
パワハラの理解不足のためには、経営トップからの定期的なメッセージ発信やハラスメントに関するeラーニング実施や勉強会がありました。
セクハラは法的に昔から概念があり、セクハラの行為者も被害者側にも浸透していますが、しかなしながらパワハラは最近定義が定まったばかりのため、十分に理解を浸透させる必要がありそうです。
先に改正労働施策総合推進法は2020年6月に施行と述べましたが、ここで義務化されたのは大企業であり、中小企業は2022年4月からスタートとなります。
パワハラの相談の多さはさらに増えることが予測されます。
パワハラの理解が進むと一定の所で落ち着くと思われ、現在はその過渡期でしょう。
そこで一つポイントとなると考えられる点が、ハラスメントに対する意識啓発や社員研修は努力義務という点です。
ここは敢えてこの努力義務の部分も並行して行ったほうがより深く浸透し、管理職・非管理職ともにハラスメントに対するリテラシーが高まります。
「パワハラの理解不足による相談」が発生すると労使ともに時間を浪費することになるため、労力は少しかかるかもしれませんが、リテラシーを高めながら法的な義務に即していった方が後々のトラブルを低減することが期待できそうです。

<参考>
一般社団法人日本経済団体連合会「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」

 

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杉井 将紘株式会社ドクタートラスト 常務取締役

投稿者プロフィール

IT企業に長年従事。その際の労働環境が整備されておらず、訴えても変わらない状況から健康管理会社のドクタートラストへ転職を決意。
畑違いの業界に戸惑いつつも、ITの力を駆使して産業保健業界に一石を投じるべく日々奮闘。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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