企業規模や地域での違いは?「令和2年賃金構造基本統計調査」にみる賃金動向

コロナ禍で会社の業績が落ち込み、賃金が下がった、ボーナスがなってしまったなどの話をよく耳にします。
みなさんは賃金の動向はいかほどでしょうか。
厚生労働省公表「令和2年賃金構造基本統計調査」の都道府県別集計によると、100~999人規模で働く「一般労働者・男性」の賃金は、東京で40.4万円、大阪で35.7万円、愛知で32.7万円となりました。

<賃金構造基本統計調査とは>
主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数及び経験年数別に明らかにすることを目的として、毎年6月(一部は前年1年間)の状況を調査している調査です。
調査対象の事業所は、全国の「常用労働者5~9人の民営事業所のうち、企業の国内常用雇用者が5~9人である民営事業所」、「常用労働者10人以上の民営事業所」、「常用労働者10人以上の公営事業所」のいずれかに該当する事業所から毎年無作為に選んでいます。
選定作業は、総務省が整備している「事業所母集団データベース」上の該当事業所を、コンピューターにより都道府県・産業の種類・事業所規模ごとに区分したうえで並べ替え、必要な調査対象数が自動的に選ばれます。

前年比では、愛知が3.0%伸びるなど大都市圏では改善傾向を示しています。
東京と大阪の差は4.8万円(11.8%)となりました。大企業は減少傾向にあり、東京は2.6%減、大阪は5.6%減でした。
職種別の水準では「ソフトウエア作成者・男性」は東京34.2万円に対して、愛知が32.4万円、大阪が31.9万円です。

一般労働者・男性

「一般労働者・男性」の企業規模別の所定内給与額をみていくと、東京は1,000人以上の大企業が43.2万円(前年比2.6%減)、100~999人の中企業が40.4万円(1.2%増)、10~99人の小企業が37.1万円(2.4%減)でした。
大企業の水準を100とした指数では、中企業94、小企業86となっています。
大阪は大企業が5.6%減(38.1万円)と落ち込みが目立ちました。
中企業(35.7万円)と小企業(31.8万円)は微増し、それぞれ0.9%、0.5%伸び、規模間格差は、中企業94、小企業84でした。
愛知や神奈川、福岡においても、大企業が前年比マイナス、中企業と小企業がプラスとなる傾向を示しました。大企業では愛知から順に1.3%減の37.6万円、3.1%減の38.2万円、3.3%減の35.1万円でした。

産業別・職種別

製造業の所定内給与額は、東京41.5万円、神奈川37.3万円、愛知34.9万円、大阪33.3万円の順に高いです。
東京を100とした指数では神奈川90、愛知84、大阪80となり、主要地域でも10~20%の差が付きました。
ソフトウエア作成者・男性は、神奈川が34.9万円で最も高く、東京34.2万円、愛知32.4万円、大阪31.9万円などとなりました。
「その他の営業職業従事者・男性」についてみると、東京が38.6万円、大阪が36.6万円、愛知が34.3万円でした。
東京との地域間格差は95、89です。
「女性・介護職員」では、神奈川(26.3万円)と愛知(26.2万円)が東京(25.7万円)を上回りました。

大企業と中小企業の差

東京と大阪の大企業は、対前年比でそれぞれ2.6%、5.6%ダウンしました。
単純に5年前の平成27年との比較を試算しても、順に7.0%、1.2%落ち込んでいます。
新型コロナウイルスの影響だけではなく、長期的な低下傾向が窺えた。グローバル化に対応するなかで、水準を下げているのは意外な結果といえます。

対照的に100~999人の中企業は奮闘しています。
前年比では東京が1.2%増、大阪が0.9%増、5年前との比較では順に3.4%増、3.1%増となっており、大企業との差が縮小しています。
リーマン・ショック時は、先行して大企業の賃金が下がり、遅れて中小企業にダメージが波及しました。
今後、新型コロナウイルスの影響がどのように現れるのか、来年の結果を注視したいです。

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中澤美歩株式会社ドクタートラスト

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