働く人の自殺が増加~令和3年版自殺対策白書にみる新型コロナウィルスの影響~

働く人の自殺が増加~令和3年版自殺対策白書にみる新型コロナウィルスの影響~

厚生労働省は、2021年11月2日に「令和2年度 我が国における自殺の概況及び自殺対策の実施状況」(令和3年版自殺対策白書)を公表しました。
自殺対策白書とは、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、2006年に施行された自殺対策基本法に基づき、毎年、自殺や自殺対策の現状について、国会に提出する報告書です。
今回は、公表された白書から、現在の日本の自殺者の現状と自殺を防ぐ取り組みをわかりやすく解説します。

勤め人、学生の自殺が増加した2020年

日本の年間自殺者数は、統計を取り始めた1978年以降、2003年の3万4,427人をピークに、その後3万2千~3万3千人の間を推移、2010年以降は10年連続で減少傾向となっていましたが、コロナ禍の2020年は前年にくらべ915人の増加となりました。
年代別に自殺者数を見ると、60歳以上が最も多く、全体的に自殺者数が減少傾向にあるのに対し、近年では20代未満の自殺者が上昇傾向にあることが注目されています。
また、職業別に自殺者を見ると、2020年は前年と比較して、「被雇用者・務め人」、「学生・生徒等」、「無職者」の自殺者が増加しました。
やはり新型コロナウィルスにより、職を失ったり、収入が減ったり、新しい仕事を見つけることが困難になったこと、家族や友人とのコミュニケーションの機会が減り、孤独を感じる機会が増えたことや、悩みを気軽に相談できる機会が減ったことが、一要因であると考えられます。

自殺を防ぐ国の施策

こうした自殺者の現状をふまえ、2020年度には新たな取り組みとして、下記の2つが取り組まれました。

➀ 自殺リスクの高い自殺念慮者や自殺未遂者を対象に精神科医療機関や消防等関係機関と連携した包括的な支援を実施するためのモデル事業
➁ SNS相談事業の拡充、相談体制の強化への支援を行うとともに、新型コロナウィルス感染症の影響による自殺対防止対策の強化

2021年度にはSNS相談体制の強化のため、相談者からの相談内容に応じた具体的かつ継続的な支援体制を構築する取り組みが行われています。

SNS相談の現状と企業ができる取り組み

国は、SNSを日常的なコミュニケーション手段として使用している若年層に向けた相談窓口体制として、2018年3月に自殺防止を目的とした、SNSを活用した相談事業を行う民間団体への支援を開始しました。
新型コロナウィルス感染拡大下の2020年には、支援を行った4団体にて、延べ63,028の相談がよせられ、LINEを用いた相談窓口では、友達登録数が241,790人に上りました。
年代別でSNS相談窓口の利用者の内訳をみると、19歳以下と、20代の合計が全体の約75%を占め、若年層が比較的利用しやすい窓口として機能していることがうかがえます。
一方で、男女別に相談者の内訳をみると、男女比が約1:9となっており、電話等の相談を合わせてみても、女性のほうが相談窓口を活用する割合が高い傾向にあり、自殺志望者率が女性の約2倍である男性の相談支援の促進が、今後の自殺対策において課題となっています。
当白書に合わせて、厚生労働省は、相談窓口、ゲートキーパー、自殺対策の取り組みをまとめたサイト「まもろうよ こころ」を公開しています。
当サイトでは、上述のSNS相談窓口の5団体のLINEアカウントや、悩みや年代によって選べる電話相談窓内サービス(7団体)が紹介されています。
その他にも、悩みを抱えた当事者だけでなく、その周囲の人の相談を受け付ける支援サイトや、悩みを相談するまでの経緯や解決までの様子を描いた絵本やマンガが公表されています。
新型コロナウィルスの感染が縮小や拡大を繰り返す中、今後もある程度周囲とのディスタンスを保った生活が求められますが、友達・家族・同僚・上司などに相談がしづらいときには、上記のような顔も名前のまったく知らない相談員への相談がかえって人の心を軽くするのかもしれません。
企業としても、自社の従業員がコロナウィルスの影響によるメンタル不調や、自殺を防ぐために、各種対応が可能です。
具体的には、在宅勤務により孤独を感じやすくなった従業員への定期的なミーティングや雑談ベースの面談を実施したり、栄養バランスの乱れや巣ごもり生活による運動不足からメンタル不調になるケースもあるため、日々の食事に気をつけたり、運動習慣をつけるための周知啓発活動やイベントを開催したりすることなどがあげられます。
新型コロナウィルスによる従業員のメンタル不調や自殺を防ぐには、企業の規模やリソースに合わせた取り組みを行うことが、ウィズコロナの時代には不可欠といえるでしょう。

<参考>
厚生労働省「令和2年度 我が国における自殺の概況及び自殺対策の実施状況」

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斎藤 樹株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

大学時代は、心理学を勉強し心の病になってしまった人が、もう一度社会にでるための支援などを学んできました。病気を未然に防ぎ、元気に働ける人を増やすお手伝いができればと考えています。一人でも多くの人が健康に働けることにつながる情報を発信できるよう頑張ります。
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