安価で簡単!痛くない!最もおすすめしたいがん検診は?

安価で簡単!痛くない!最もおすすめしたいがん検診は?

コロナ禍において、「不要不急の受診を控えたい」という気持ちが健診やがん検診の受診率低下につながりました。
健診は決して不要不急のものではありませんが、痛い、辛いなどの症状があって受診するのとは違い、「今じゃなくても大丈夫」という気持ちから先延ばしになった方もいらっしゃると思います。

現在はまた少しずつ健診・がん検診の受診率が回復している印象ですが、日本対がん協会の調査では2020年にがんと診断された数は2019年から約9%減少したと発表されています。
がんになる人が突然1割近く減ったりはしないので、やはりがん検診や受診から足が遠のいたというのが実態でしょう。

そこで今回は、「まだがん検診を受けたことがない」という人にもおすすめのがん検診をご紹介します。

死亡数の多いがんは……?

いわゆる「がん検診」として自治体や医療機関で広く実施されているものには、「乳がん」「子宮頸がん」「前立腺がん」「肺がん」「大腸がん」「胃がん」などがあります。
一般的に実施されている方法は以下の通りです。

乳がん検診 → マンモグラフィー
子宮頸がん → 細胞診検査(内診で医師が細胞を採取する)
前立腺がん → PSA検査(血液検査)
肺がん → 胸部レントゲン撮影
大腸がん → 便潜血検査
胃がん → 胃X線検査(バリウム)、胃内視鏡検査

一方で、がんになる患者数を部位別に見ると、以下の通りです。

【1位】大腸 【2位】胃 【3位】肺
(全国がん登録罹患データ2018)

また、がんによる死亡数を部位別に見ると、以下の通りです。

【1位】肺 【2位】大腸 【3位】胃
(人口動態統計がん死亡データ2019)

それぞれ順位の入れ替わりはあるものの、大腸がん・胃がん・肺がんの3つは罹患数も死亡数も多いことがわかります。

各種がん検診を、きちんと推奨される間隔で定期的に受けるに越したことはありませんが、あえてデメリットなども考えた上で何か1つおすすめするとしたら、保健師である私は「大腸がん検診」を選びます。

大腸がん検診は総合的にみて優れた検診

大腸がん検診では、便に目に見えない血が混じっていないかを調べます。
やり方は専用の容器を用いて便を2日分採取して提出するだけです。(便潜血検査)
採取すると言ってもほんのわずかの量で良く、棒状になったものの先端に便が少量付着すれば大丈夫です。

おすすめできる理由として、まず費用が安いことが挙げられます。
大腸がん検診は多くの自治体で30歳以上、40歳以上など年齢の制限はあるものの、無料〜500円程度で受けることができます。
企業健診でも、コースに含まれていることが多い検査です。

さらに、痛みや体への影響がない(非侵襲的と言います)こともおすすめできる理由の1つです。
例えばPSAをはじめとする腫瘍マーカーは血液検査なので、少なからず痛みを伴います。
マンモグラフィーや婦人科の内診も慣れないと辛さを感じる方もいます。
胃の内視鏡検査・バリウム検査も、どちらかというと辛さを伴う検査です。
レントゲンやCT検査などは放射線の被曝があります。(人体に影響のない範囲ですが)
一言で言えば大腸がん検診は副作用がない検査ということです。

また、場所を問わないのも大きなポイントです。
がん検診は、なるべく多くの人に受けてもらうことが大切ですが、便潜血検査の場合、専用の容器と潜血反応を見る試験紙さえあれば、特別な検査機器や大掛かりな装置、場所などが全く必要ないので、総合的にみてもコストのかからない検査です。
日本だけでなく、医療や衛生水準が低い地域でも取り組みやすいということで、検便による大腸がん検診は世界的にも推奨されています。

このようなメリットから「がん検診ガイドライン」でも大腸がん検診の便潜血検査は、死亡率現象を示す十分な根拠があることから「推奨グレードA」とされています。
死亡率減少効果が、実施した場合の不利益を大きく上回るということです。

陽性になったときは?

大腸にがんや大きめのポリープがあった場合はそこから出血していることが多く、それが便に混じって出てくるため、便を調べることでがんの可能性を知ることができます。
2日採取した中で1日でも「陽性(=血液が混じっている可能性がある)」となった場合は要精密検査となり、詳しく調べるために大腸の内視鏡検査が推奨されます。

がん検診と呼ばれるものはさまざまですが、中には少し過剰と思えるものや費用対効果が小さいものもあります。

今回はあえて1つに絞ったので、大腸がん検診の解説をしましたが、肺がん・胃がん・子宮がん・乳がん、この辺りの検診はどれもおすすめできるものです。
簡単に言うと自治体でも実施している検診というのは、「限られた中でも住民にぜひ受けてほしい検査」ということなので、十分なエビデンスと実績のある検査なのです。

コロナ禍以降、感染状況とともに健診・がん検診の受診数が変動しており、今は今年度前半に受診を見合わせていた方々でやや混み合っている印象があります。
企業によっては受診対象期間を延長しているところもありますし、自治体の検診は対象年齢になっていれば安価で受けることができます。
過剰に心配したり、あれもこれもとたくさん受ける必要はありませんが、まだ受けていない方、一度も受けていない方はぜひ参考にして受けてみて欲しいと思います。

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田中 祥子株式会社ドクタートラスト 産業保健部 保健師

投稿者プロフィール

企業の健康管理室で働いていた経験をさまざまなかたちで皆さまにお届けします。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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