「私だけは大丈夫!」の思い込み~ポジティブ・イリュージョンにとらわれていませんか~

「私だけは大丈夫!」の思い込み~ポジティブ・イリュージョンにとらわれていませんか~

皆さん、こんにちは。
産業医カウンセラーの冨田です。
緊急事態宣言下で、不自由さを感じる日々が続いていますね。
先の見えない状況に気持ちも落ち込んでしまいますが、こういう時こそ今起きていることをどう捉えるかが重要になってきます。
最悪の日々にするのか、最高の日々にするのかは自分次第。
今日は日々の生活に役立つ「ポジティブ・イリュージョン」を解説します。

幻想に囚われている?ポジティブ・イリュージョンとは

イリュージョンという言葉を聞いたことがありますか?
幻影や幻想、錯覚といった意味があります。
自分自身が幻想にとらわれていると考えたことはありませんか?

「本当のわたしはもっと評価されるべき人間だ」
「周囲はわたしを正しく評価していない」
「わたしは人ができないことも難なくできる」
「わたしは間違っていない」

現実の出来事と、自分のとらえ方が違った時、人はしばしば気付かないうちにイリュージョンに飲み込まれてしまいます。
心理学にはポジティブ・イリュージョンという言葉があります。
ポジティブ・イリュージョンとは、自己高揚的動機に基づくさまざまな認知バイアスのことをいいます。
具体的には「実際の出来事を自分の都合の良いようにとらえてしまう」もので、3つの領域があります。

① 自己を過大評価し、肯定的に知覚している
② 自己のコントロール能力を過大に評価し、知覚している
③ 将来を非現実なまでに楽観視している

ポジティブとネガティブ

「ポジティブ・イリュージョンは自己肯定感がとても高い人なの?」と思うかもしれませんが、自己肯定感とは「自らのあり方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情」を指します。
そのためポジティブ・イリュージョンと自己肯定感は似て非なるものです。
現実を歪めてしまうのはよくありませんが、ネガティブ・イリュージョン(ポジティブイリュージョンの逆)に陥るとメンタルヘルス不調を招くともされています。
たとえば今の世に当てはめるなら「私は新型コロナウイルスには絶対に感染しないだろう」「万が一かかってもすぐに回復する人間だ」と思ってしまっているのはポジティブ・イリュージョンですね。
逆に「自分は絶対に新型コロナウイルスにかかってしまう」「かかれば死ぬだろう」と怯えて何も手につかない状態はネガティブ・イリュージョンにとらわれているといえるでしょう。
自己卑下的に自信を過小評価していると精神的な健康が脅かさせるおそれもあります。

イリュージョンから脱するためのメタ認知

ポジティブ・イリュージョンは、ストレスに対処するための「ストレスコーピング」として機能しますが、前述したように現実世界を上回って肯定的になる場面が出てしまいます。
客観性が欠けた状態に陥りやすくなり、コミュニケーションエラーや現実とのギャップに苦しむこともあります。
そんな時にはぜひ「メタ認知」という能力を使ってみてください。
メタとは「高次の」という意味を持ち、「自分をもう一人の自分として、一段高いところから眺める」イメージです。
主観で物事を考える自分を、なぜそう思うのか、そうしたのか、外側から客観的に観察します。
「あ、楽観的になりすぎてるな」「今、ポジティブ・イリュージョンが作用してるな」と考えられれば、過度なポジティブ・イリュージョンにとらわれることもないでしょう。
1日1回自分を振り返る時間を作る、あるいは日記をつけるのもいいかもしれません。
なぜ自分は物事をそう捉えたのか考える時間を設けてみてください。
自己肯定感を高めようという言葉もよく聞かれており、みなさんにとって徐々に身近なものになってきていると言えます。
ポジティブ・イリュージョンも言葉だけでいえば、何だか良いもののように見えてしまいますが、誤った認知バイアスが働いている状態ですので気を付けていきましょう。

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冨田さゆり株式会社ドクタートラスト 産業カウンセラー

投稿者プロフィール

ドクタートラストに入社して6年目、多くの民間企業・官公庁の健康管理に関わってきました。産業カウンセラーの資格を取得し、専門知識を深める日々です。対企業、対従業員、健康に働くためのアプローチは多種多様。各々の特性に合わせたアドバイスを心掛けています!
【保有資格】産業カウンセラー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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