ハラスメント対策、半数近くが「講じられてない」
- 2021/9/14
- ハラスメント

2020年6月1に通称「パワハラ防止法」(改正労働施策総合推進法)が施行され、大企業では同日よりパワハラ防止のための措置が義務づけられました。
また、中小企業においても2022年6月より義務化が適用されます。
こうした背景を踏まえ、日本労働組合総連合会は、「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」を2021年6月に実施し、20~59歳の男女1,000名の回答を得ています。
今回は、「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」の結果をわかりやすく解説していきます。
ハラスメント対策の各措置について半数近くが「講じられていない」と回答
「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」の設問は大きく以下の2つにわかれます。
① ハラスメント対策措置が講じられているか
② 職場におけるハラスメントの実態
このうちまずは「① ハラスメント対策措置が講じられているか」の結果を見ていきます。
ハラスメント防止については、すでにマタハラ、セクハラ防止のための措置が義務付けられており、先般新たにパワハラ防止策も加わったわけですが、各ハラスメント防止のために講じなくてはならない具体的な措置は以下の通り定められています。
<事業主が雇用管理上、講ずべき措置>
(1)企業の方針の明確化と周知・啓発
(2)相談や苦情に応じ、適切に対処する体制整備
(3)職場におけるパワハラへの迅速かつ適切な対応
(4)(1)~(3)の措置と合わせて講ずべき措置
このうち「(1)企業の方針の明確化と周知・啓発」とは、ハラスメントの内容の明確化、防止方針の策定、行為者への対処方針などが含まれますが、これら周知・啓発がなされているかという問いに対する回答は、すべてのハラスメントにおいて4割強に上りました。
【自身の職場で、“ハラスメントの内容・方針の明確化、周知・啓発”に関して行われていること】
回答「とくになし」
・ パワハラ:40.0%
・ セクハラ:41.4%
・ マタハラ:44.6%
・ ケアハラ:45.1%
(連合調べ)
※ケアハラ:ケアハラスメントの略で、働きながら介護を行う人が、社内の介護制度を利用するときに受けるハラスメント
次に「(2)相談や苦情に応じ、適切に対処する体制整備」とは、談窓口の設置、窓口の周知、相談窓口体制の整備などが含まれますが、窓口に関して行われていることも「とくになし」の回答が、いずれも4割強に上りました。
【自身の職場で、“ハラスメントの相談窓口”に関して行われていること】
回答「とくになし」
・ パワハラ:42.5%
・ セクハラ:42.5%
・ マタハラ:45.8%
・ ケアハラ:45.6%
(連合調べ)
これら回答結果に対して「いやいや、うちはちゃんとしてるよ!」と思われる人事労務担当者も少なくないでしょう。
1点注意が必要なのは、本調査の回答対象は企業のハラスメント担当者ではなく、一般の従業員である点です。
そのため、この結果でわかるのは「実際の体制整備の有無」というよりも、「体制整備がなされていると社内で知れ渡っているか」と考えられます。
冒頭でもご紹介したとおり、ハラスメント防止対策の措置は、企業に義務づけられており、実際にはより多くの企業が体制を整備されていると推察します。
本調査から見えてくるのは「ハラスメント防止対策浸透率の低さ」と言えるでしょう。
ハラスメントを受けたことのある人が32.4%
続いて、「②職場におけるハラスメントの実態」を見ていきます。
「ハラスメントを受けたことがあるか」の問いに対する男女別各年代の回答結果は以下の通りで、全体では32.4%が「受けたことがある」と回答しています。
【職場でハラスメントを受けたことがあるか】
回答「受けたことがある」
20代男性:27.2%
30代男性:28.0%
40代男性:42.4%
50代男性:28.0%
20代女性:28.8%
30代女性:35.2%
40代女性:34.4%
50代女性:35.2%
(連合調べ)
さらに受けたハラスメントの内訳をみると、1位はパワハラで27.6%、2位はセクハラで「8.5%」、3位はジェンダーハラスメントで4.2%でした。
また、「新型コロナウイルス感染症に関するハラスメント」への回答が3.1%である点は特徴的です。
※ジェンダーハラスメント:「女性はこうあるべき」「男性はこうあるべき」といった性的役割分担意識にもとづく言動など
こうした結果を見ているとわかるのは、「ハラスメントに遭った」という気持ち抱えながら仕事をしている人の多さです。
最後に
今回は、「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」の結果をわかりやすく見ていきました。
本調査からわかるのは、働く人たちにとっては会社側のハラスメント防止対策はまだまだ不十分に感じられているということです。
「体制と実態の乖離」とも換言できるでしょう。
ハラスメントを原因としての求職や退職は、被害者本人だけでなく会社にとっても大きな損失につながります。
企業においては体制整備を行うのはもちろんですが、合わせて「ハラスメント防止対策に取り組んでいる旨」をぜひ、しつこいくらい積極的に社内周知しましょう。