「難儀」な部下への対応 ~悩み多き上司に~

相談窓口で寄せられている相談内容に、上司部下の関係はとても多いのですが、意外に多いのは「上司が部下とのかかわりに悩んでいる」ケースです。

上司が悩んでいる場合によくあるのは
・ 部下の性格や人格に難があり、コントロールができない
・ 何回も業務内容を教えているのに習熟しない
というものです。

今日はそんな悩みを抱える上司の方々に、産業保健の専門家としてお話をしていきたいと思います。

上司である自分も人間であることを自覚する

皆さんが抱える上司像はどのようなものでしょうか。
温かみのある包容力のある上司、沈着冷静で聡明な上司、エネルギッシュで部下を先導していく上司、いろいろな上司像があると思います。
共通して言えるのは、どのような上司像でもきちんとした道徳を備えていて、有能であるのではないでしょうか。

私はラインケアセミナーを行うにあたって「上司も人間である」と必ずお話をするようにしています。
この「上司も人間である」ことをお話する意味は、「自分ができることには限界がある」ことを自覚してもらうためです。

人間は問題に直面している際に、自分の隠されていた負の部分や「なんて嫌なやつだ、非常識なやつだ、人間自体がいけ好かない、相手は自分のことを嫌いに違いない」といった陰性感情が現れます。
人間はある結果を希望して行動を行います。
一生懸命に働きかけたことが実らなければ、心は安定しません。
陰性感情は、心を安定させるために自然的に発生するのですが、かえってその感情が自分が道徳者ではない無能な人間であると認識させてしまうのです。
これは、自分でなんとかしようと頑張る真面目な性格の上司であればあるほど、発生しやすくなります。

必要なのはまず、「自分には手に余る存在があり、できることには限界がある」ことを自覚することです。
ここで重要なのは、これができないから無能なのではなく、これまでに他にできてきたことがたくさんあって、これを次に活かせると意識することです。

物理的な距離を置くことは対人関係でトラブルを抱えたときに必要なことの1つですが、心理的な距離を置くことを忘れてはいけません。
部下と関わっていない時間やお休みの日に、部下のことが頭に浮かんでくることはありませんか?
対峙していないときに、思い悩むのはカロリーの無駄ですし、ストレスが増えるだけですのでやめましょう。
上司自身がストレスでつぶれてしまうのは避けたいですね。
ストレスが発散でき、気分転換になる自分のためのことをやるようにしましょう。

また、これ以上無理と感じたら上司自身も産業医や相談窓口に頼るようにしてください。

状況の整理と対応

難渋する例の典型は、自らがその状況に入りこんでしまうため、取るべき選択肢が分からなくなることです。
以下の順番で対応は進めていけば良いでしょう。
カウンセリングでも同じようにアドバイスをすることが多いです。

① 事実を客観視し、協力者を得る

自分と他者の関係と問題を紙に書き出してみてください。
上司である自分と、問題のある部下、それを取り巻く同僚や協力を要請できそうな他の部署や上司、相談窓口などの社会資源を視覚的に見ることが必要です。
どこに問題があるのか、どういった理由でそれが起きているのかを事例を含めて書き出してみましょう。
社会資源の中で、協力を得やすい人がいれば協力を打診するようにしてください。

② 部下に求めている事項を書き出す

次に、部下に求めている事項について、書き出してみてください。
最低限度でやってほしいこと、できなければならないこと、徐々にできてほしいことを書き出しましょう。
考えるポイントは、他者から聞いてその指示が理不尽に思えないこと、妥当な指示であることです。
配慮をしていることが、部下にとってハラスメントと捉えられては元も子もありません。
協力者がいればその人に見てもらうのもいいかもしれませんね。

③ 求めている事項について順番をつけ部下へ説明

②で書き出した事項に、最低限取得してほしいスキルから順番をつけていきます。
それを部下に対して面談を行って説明することが必要です。
面談にはできれば2者で入らず、会話のボルテージを抑止してくれる立場の人に入ってもらいましょう。
今ある事実を確認しながら、淡々と求めていることについて説明し理解を求めます。
上司からの言いっぱなしになるのではなく、部下からの意見も受容的に聞くことが改善の近道です。

④ 経過の観察

経過を追って、問題が沈静化するかどうかを観察します。
求めている事項が順守できなければ、指導を行い行動の改善を期待します。
都度ある事例に関しては記録していくようにしましょう。

⑤ 評価

一定の期間が経ったら評価を行い、それを部下にフィードバックして、達成できたことできなかったことを確認します。
淡々と冷静に、事実に基づく評価と、未来に希望することを説明することが必要です。
これも会話のボルテージを抑止してくれる立場の人に入ってもらうことが必要でしょう。

①~⑤で一貫して言えることは、1人で全部対応しようとせず、誰かに協力してもらいながら部下への対応を行うことです。
一人だと抱えられない問題でも、協力者がいるだけで、不安感が軽減します。
重要なポイントですので覚えておきましょう。

部下に配慮すべき事項がある場合

以前受けた相談では「部下はどうやら発達障害があるようで、業務に非常にミスが多く他者ともトラブルを起こしている、指導していいかどうかわからない」といったものがありました。

結論から言うと、どんな障害があろうと持病があろうと、対象者が適切に対処しようとしていなければ、指導をしてしかるべきです。
ミスをしてもOK、指導してはならない、というのは逆に差別していることになります。
ただ、頭ごなしにミスをしたときと同じ方法での指導を繰り返すのは妥当ではありません。
ある程度教える方法を変えたり、習熟度を本人に確認するなどの行為が必要になってきます。

このような指導をすると、配慮に欠けているのではないか、触らぬ神にたたりなしで事なかれにしておく方が良いのではないかと考えるのも、立場を考えると理解できます。
その際は、ぜひ産業保健の専門家にご相談ください。
その方の特性を踏まえた上で、どのようにアドバイスをすれば効果的なのか、何について触れて指導をするのかを助言することが可能です。
上司は教えることも業務の内ですので、繰り返し妥当で適切な指導を行うことが必要なのです。

さいごに

人は双子で生まれても、全く同じ人物になりはしません。
すべての人は違う肉体や精神、社会や価値観を持っているので、いろいろな人と仕事をするときには、少なからず摩擦や軋轢が必ず生じます。
問題は自分を磨いて成長させてくれる研磨剤だと思えれば、少しストレスも軽くなるかもしれませんね。

我々産業保健のプロは、研磨剤で相談者がすり減りすぎないようにすることが命題です。
自分がすり減ってきている感じがしたら、ぜひドクタートラストへご相談ください。

【外部相談窓口アンリの詳細・お問合せはこちら】

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産業保健新聞編集部株式会社ドクタートラスト

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