放っておくと危険!「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果からみる企業リスク

長時間労働や賃金不払残業の解消に向けた取り組みを行う「過重労働解消キャンペーン」の一環として、厚労省では「過重労働解消相談ダイヤル」で無料相談を受け付けています。
今回は、その「過重労働解消相談ダイヤル」に寄せられた相談の内訳や具体的な内容について解説したいと思います。

なお、昨年度の結果はこちらの記事をご覧ください。

相談内容の内訳は?

過重労働解消ダイヤルでは、合計で162件の相談が寄せられました。
相談内容の内訳は以下の通りです(1件の相談に対して複数の相談内容が含まれることもあります)。

■ 主な相談内容
長時間労働・過重労働 30件(18.5%)
賃金不払残業 26件(16.0%)
その他の賃金不払 18件(11.1%)
その他の労働条件 18件(11.1%)

■ 相談者の属性
労働者 106件(65.4%)
労働者の家族 21件(12.9%)
その他 18件(11.1%)

■ 主な事業場の業種
製造業 21件(12.9%)
その他の事業 19件(11.7%)
商業 16件(9.8%)

昨年度と比べると相談件数は269件から162件に減少していますが、主な相談内容の順位は最多が「長時間労働・過重労働」、次に「賃金不払残業」というのは変わっていません。
2番目以降の順位は、昨年度が「休日・休暇」が11.5%、「パワーハラスメント」(10.7%)だったのに対し、今年度は「その他の賃金不払」11.1%、その他の労働条件 18 件(11.1%)となっています。

相談者の属性と主な事業場の種類については、昨年度と同じ結果となりました。

実際の相談内容は?

次に、具体的な相談内容をご紹介します。

長時間労働・過重労働、賃金不払残業

◎ 営業担当社員(保健衛生業)【40代、労働者】
会社から取引先への移動を含めて月80時間ほど残業をしているが、会社から取引先への移動時間は私用扱いとなり、賃金が支払われない。
また、勤怠管理システムにも不具合があり、残業時間を入力することができないため、毎日定時に業務終了と記録されている。

◎ 長距離ドライバー(運輸交通業)【40代、労働者】
トラックで関東、関西、東北と様々な地域に配送しているため、拘束時間が15時間を超える日が多々ある。
時間外労働も月150時間程度行っており、長時間労働が常態化しているが会社は改善しようとしていない。
各種手当てはあるが、残業代は適正に払われていない。

ハラスメント

◎ 製造業の作業員(製造業)【40代、労働者】
上司が関係部署に対し、ミスをした職員について見せしめのようにメールを一斉送信している。
メールには職員の名前やミスの内容等が記載されており、職員はやめてもらいたいと思っているものの、誰も逆らえず精神的に参っている。

昨年度より時間外労働の上限規制が適応され、以前より残業時間への意識は高まっていますが、相談内容のように勤怠管理システムに反映されない(していない)など、表向きの数値だけで取り繕う企業はまだまだ多いのではないでしょうか。

さらに、ハラスメントに関しても今年よりパワハラ防止法が改正され、相談窓口を設置したり、改めてハラスメントの研修を行ったという企業も多いかと思いますが、なかなかすぐには解消されない問題でしょう。

放置すると危険な企業側のリスク

こうした過重労働や残業の賃金不払い、ハラスメントなどの問題は、従業員から訴訟問題になることも少なくはありません。

独立行政法人労働政策研究・研修機構で公表されたデータによると、給料の不払など事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルである労働関係民事通常訴訟事件と労働審判事件(新受件数 地方裁判所)の件数は年々増加しており、2019年は労働関係民事通常訴訟事件、労働審判事件のどちらも、3,500件を上回っています。

こうした労働裁判による損害賠償は、判例によって大きく異なりますが、過重労働やハラスメントを原因とした精神疾患や自殺と判定された場合は、損害賠償は数千万円の規模になることもあります。

さらに、事業場が支払う金額は損害賠償金だけではありません。
例えば未払い賃金の場合は、「付加金」(悪質な使用者に対して判定によって課されるペナルティ)や、不払いの時から生じる遅延損害金(年利6%・労働者が退職以降は14.6%)が加算され、実際の未払い賃金の2倍、3倍もの金額に膨れ上がるケースもあります。

付加金についてはこちらの動画で詳しく説明しています。

このように、労働裁判に伴う損害は、資金繰りに窮するだけではなく、ブランドイメージの低下、人材の損失・流失などさまざまな企業リスクにもつながります。

このリスクを少しでも回避するためにも、働き方の見直しをしていくことが今後より強く求められていくでしょう。
すぐには解決できない問題も多いとは思いますが、まずはストレスチェックの実施や相談窓口を通して従業員の声を拾い上げていくことから始めてみてはいかがでしょうか。

なお、労働条件や賃金に関するお悩みをお持ちの方は、今回ご紹介した「過重労働解消ダイヤル」をはじめ、その他の行政機関でも相談の受付を行っております。
勤めている会社に相談窓口が設置されていない、相談できる人がいない場合は、こうした行政機関に相談をしてみてください。

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◆最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署(開庁時間 平日8:30~17:15)

労働条件相談ほっとライン【委託事業】
0120-811-610(フリーダイヤル はい!労働)
(相談受付時間:月~金17:00~22:00、土日・祝日9:00~21:00)

労働基準関係情報メール窓口
労働基準法等の問題がある事業場に関する情報をメールで受け付けています。
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<参考>
・ 厚生労働省「『過重労働解消相談ダイヤル』の相談結果を公表します」
・ 独立行政法人労働政策研究・研修機構「労働関係民事通常訴訟事件と労働審判事件(新受件数 地方裁判所)」

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信定祐希株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

大学卒業後、飲食業界に入社し、従業員満足度と顧客満足度のつながりが強さを実感してきました。お客さまを幸せにするためには、従業員自身の幸福度が高くないと実現ができません。しかしそれはどの業種においても言えることだと思っています。
ワークライフバランスを整え、活き活きとやりがいのある仕事ができる社会を目指して発信していきたいと思います。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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