そのコミュニケーション、ねじれていませんか?~コミュニケーションを診断してみよう~

決定的な言葉を投げかけられたわけでもないのに後味が悪い、気分が悪い、そんなことってないでしょうか?
この後味の悪さは、そもそもの信頼関係不足や情報不足など、いろんな原因が考えられますね。
原因がさまざまであるがゆえに「コミュニケーション改善」といっても具体的な解決案が出しづらく、悩みは尽きません。
いずれにせよ、うまくいかないときは、そのコミュニケーションの振り返りを行うことが有効です。
今回は「コミュニケーション」の振り返りに役立つ「やり取り分析」をわかりやすく解説します。

コミュニケーションの出発地点「自我状態」を知る

やりとり分析は、自分がどのようなコミュニケーションをしているかを知るのに効果的な分析方法の一つです。
「何かを発する(刺激)、それに相手が応える(反応)」ががやりとりの基本単位で、精神科医エリック・バーン考案「3つの自我状態」のいずれかからやり取りの言葉は発せられるとされています。

<3つの自我状態>
P:「親」の自我状態(Parent)
A:「成人」の自我状態(Adult)
C :「子ども」の自我状態(Child)

まずはそれぞれの自我状態を見ていきます。

P「親の自我状態」【秩序・規律/保護的】

育ててくれた人の影響(本当の親とは限りません)を受けて取り入れた考え方や行動で、厳格・規律の批判的・決めつけ的な面と、愛情・思いやりの保護的、養育的な面があります。

A「大人の自我状態」【冷静・合理的】

事実や知識・経験から物事を判断する成人としての状態、冷静さ。
現実をありのままに見つめ、物事や問題に対し適切に対処しようします。

C「子どもの自我状態」【自由・従順・本能的】

子どもの時の感情的体験が再現される状態。
喜怒哀楽を素直に表現したり、自己中心的に反抗したり、依存したりする状態です。

3つの自我状態のどれが良くて、どれが悪いというものではありません。
問題となるのは、他者から発せられる自我状態との関係性です。
「親(P)」「大人(A)」「子供(C)」の3種類のうち、常にどの自我状態かが定まっているわけではなく、相手や瞬間・場面によって、出てくる自我状態が違ってきます。

コミュニケーションパターンは3つ

そして、コミュニケーションパターンを「3つの自我状態」に基づいて考えると、コミュニケーションを少しだけ捉えやすくなります。
以下では、「並行的やりとり」「交差的やりとり」「裏面的やりとり」の3つを解説します。

①平行的やりとり

やりとりを矢印(⇒)で表したときに、矢印が平行になるコミュニケーションです。
このパターンのやり取りは、スムーズで健全なコミュニケーションと感じやすいです。

「A⇔A」のパターン
上司「今月の進捗報告をお願いします」
部下「今月の進捗は、○%です」

 

「PC⇔CP」のパターン
上司「こんなに遅刻が多いようでは、ダメじゃないか」
部下「すみません、つい電車で寝過ごしてしまって……」

②交差的やりとり

やりとりを矢印(⇒)で表したときに、矢印が交差する(=平行にならない)コミュニケーションです。
何かかみ合わない感じや不快さが伴ったりと、コミュニケーションは中断されます。

「CP⇔AA」のパターン
社員①「○○が無理難題ばっかり言ってくるんですよ!」
社員②「それにはそれなりの理由があるんじゃないですか」

 

「PC⇔PC」のパターン
社員①「あなたが間違えたから残業しないといけなくなっちゃったじゃない!」
社員②「君だっていつもミスばっかりしているじゃないか」

「PP⇔PC」のパターン
社員①「あの人はまったく仕事ができないな」
社員②「そんな言い方はよくないよ。彼は彼のがんばりがあるんだよ」

③裏面的やりとり

発せられるメッセージの裏に、心理的メッセージ(本音)が隠されているやりとりです。
察することに心理的負担がかかったり、限界があったり、後になって本音が表面化して問題になったりすることが多いでしょう。

「表向きはA⇔A(裏ではPC⇔CA)」のパターン
上司「〇〇さんは今月もすごくがんばっていますね(あなたももう少しがんばりなさいよ)」
部下「そうですね、すごいですよね(どうせ俺には無理ですよ)」

自我状態自体には、どれが良くて、どれが悪いということはなく、やり取りのパターンによって「後味の悪いコミュニケーション」と認識されるのです。
つまり、心地よい・スムーズな会話というのは、自我状態と場面・相手とのマッチ度合いともいえるでしょう。

やりとりの視覚化により自分を知ることができる

ここで大切なのは、常に相手に合わせて「平行的やりとり」を心掛けなければいけないということではありません。
自分がどのような状態にあるか(あったか)、そして相手がどういう自我状態にあるか(あったか)を客観的に振り返り、視覚化することで、何か得体の知れないモヤモヤした気持ちが整理できます。
それにより、今後のその人とのよりよい関係性構築に役立てることが大切です。
状況を正しく知ることで、次のやり取りを選び取っていくことができるのです。
まずは自分自身の「やってしまいがち」なパターンを知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

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山口紗英株式会社ドクタートラスト 精神保健福祉士

投稿者プロフィール

メンタルクリニックでのカウンセリング従事の後、「働く人」を理解すべく一般企業にて勤務。その後ドクタートラストに入社。
自然成長は望めない時代だからこそ、「個」と「組織」の両面に、健康という手段をもってアプローチすること大切だと思っています。知識ではなく、明日から職場で使える「スキル」を発信し、働くことが楽しいと思える社会の構築を各現場から作っていけたらと思います。
【保有資格】精神保健福祉、産業カウンセラー、第二種衛生管理者、健康経営アドバイザー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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