【動画あり】もっと深く知りたい方必見!衛生委員会等のオンライン開催について詳しく説明します

衛生委員会等のオンライン開催についての通達が示されました

2020年8月27日に「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について(令和2年8月27日基発0827第1号)」でオンラインでの衛生委員会の開催についての条件などが定められました。
ざっくりとした内容は、10月1日に公開した以下の記事で解説していますので、ご覧ください。

今回はこちらをより詳しく、しっかりと解説していきたいと思います。

基本的な考え方

まず、厚生労働省労働基準局からは下記のとおり示されており、リモートワークの導入など働き方が変わったとしても、オンラインで実施することを引き続き義務として再確認しています。

安全委員会等は、事業者が講ずべき安全衛生対策の推進について、事業者に対して意見を述べさせるために設置・運営されるものであり、労使が協力し合い、事業場における安全衛生に係る事項について、十分に調査審議を尽くすことが必要不可欠である。
~中略~
情報通信機器を用いた開催においても、事業場における安全衛生に係る問題の十分な調査審議が確保されるよう、事業者は、記の2に留意の上、事業場の実情に応じた適切な方法により、安全委員会等の設置・運営を行う必要がある。

引用元:厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について」

「リモートワークになったから実施義務が緩和される」ということはなく、働き方や働く場所が変わったとしても、事業主の義務として実施は必須であることが公的に確認されています。

オンライン開催の留意事項

厚生労働省労働基準局はオンラインでの開催にあたり留意すべき事項として以下の項目を挙げています。

1.オンライン開催に用いる機器

機器や通信環境について具体的な指定はありませんが、条件が示されています。

・ 委員が容易に利用できる
・ 映像・音声などが常時安定していて委員同士の意見交換などが円滑に可能
・ 個人情報の情報漏えいや不正アクセスの防止措置

以上3点です。

基本的には、端末の指定などはありません。
昨今は無料で利用することができるアプリなども豊富で、機能も充実してきていますが、セキュリティ面への配慮は必須です。

また、通信網の整備などは合わせて求められており、在宅勤務時に問題となる従業員宅の通信環境の整備など、場合によっては個人の問題と切り捨てていては要件を満たすことができないかもしれません。

これまで通勤手当として支給していた原資を在宅勤務手当として充てるなど、さまざまな対応を取る企業もあるようですが、通信環境のせいで義務が果たせないということがないように、リモートワークを導入される企業は、この機会に制度や規定の見直しを検討してみるのもいいかもしれません。

2.運営要件

・オンラインミーティング形式に限らず、音声通信やチャットによる実施の場合も、円滑なコミュニケーション、資料閲覧や共有が可能で、必要な調査審議が円滑に実施できればOK
・リアルタイム開催ではなくメール等を活用した開催も条件によりOK
<条件>
①資料共有から委員各自が意見を検討する十分な期間が確保されている
②意見や質問を委員間で速やかに共有できて、調査審議にかかわる議論の経緯を合わせて確認できる
③意見表明などがない委員に対して、状況確認や意思確認など勧奨すること
④提出された意見などの調整・連絡をする担当者をあらかじめ決める

衛生委員会などの実際の運営に関しては、オンラインミーティング形式に限定せず、さまざまな事情も勘案して電話やチャット、条件によってはメールなどで参加者が同時参加しないような形式でも認めるものになっています。

ただ、示された条件を満たすためには、例えばクラウドデータベースで共有編集可能なファイル上でやり取りを行うなど、ある程度システマティックに実施しなければ担当者の負担がかなり重くなってしまいそうです。
検討される場合には、実運用ができず形骸化してしまうことのないように、現実的な業務量なども十分に勘案して、実情に合わせて実現可能な方法にする必要があると思います。

3.議事録

オンラインでの開催の場合、議事録はどうなるのでしょうか?
今回の通達では、合わせて議事録の取り扱いについても言及しています。

・ オンライン開催の衛生委員会などでも議事録の保存は義務
・ 議事録のデータ化とデータ保存は条件を満たせばOK

<条件>
①労働基準監督官の臨検時など、閲覧が求められた時に閲覧が可能
②同様に、提出が求められた時に印刷など出力が可能
③故意または過失による消去、書き換えなどができない措置を取り、作成・保存時のタイムスタンプがある
④保存義務期間の間確実に保存できる(バックアップなど)

平成17年に厚生労働省から示された「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」に沿った要件さえ満たせば問題ありませんので、セキュリティやバックアップだけしっかりしていれば特段問題はないと思われます。

衛生委員会議事録の他にも、雇用や解雇に関する書類やタイムカードなど労務管理に関する書類など、労働関係重要書類は全て対象書類です。
法改正により法定保存期間が今後5年に延長されることにもなりますので、この機会にペーパーレス化を検討されている企業ではぜひ参考になさってください。

労働関係重要書類の保存期間延長については、動画で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

コロナ禍こそ衛生委員会の活用を

今回の通達でもハッキリ明言されたように、就業環境が変化しても衛生委員会などの実施は義務として事業主に課されます。
以前から衛生委員会が形骸化してしまっていた企業や、状況が変わって何を議論すればいいのかわからないという企業では、むしろ新型コロナウィルスによって状況が急激に変化した今こそ衛生委員会などを有効に活用すべきでしょう。

あきらかに企業を取り巻く世の中の状況も従業員の就業環境も変化しています。
「これまで通り」で問題が発生しないことはまずないでしょう。
現在のような大きな変化が起きた時にこそ、労使による協力が必要であり、そのための協議が不可欠です。
そのための組織である衛生委員会を活用しないなんてもったいない!

どちらにしても義務として実施しなければならない取り組みなら、とことん活用して大きな変化や危機を乗り切ることのできるように労使が協力していきましょう。

<参考>
・ 厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について」
・ 厚生労働省「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」

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唐澤 崇株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

前職では、長時間労働があたりまえの業種で働いていました。
好きな仕事であれば特に苦にも感じず働いていましたが、子どもが産まれてプライベートな時間とのバランス考え転職。
現在は、縁もあり産業医の先生方はもとより、法学者や社会保険労務士の方々ともお付き合いをさせていただくようになりました。
法律の面からも働く方々はもちろん、企業自体が安全で健全な繁栄を続けていけるよう、サポートしていきたいと考えています。
【保有資格】メンタルヘルス法務主任者/産業保健法務主任者/ハラスメントマネージャー/ハラスメントカウンセラー/健康経営アドバイザー/ソムリエ
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