窓を開けて走る列車~変わる私たちの通勤~

「在宅勤務に切り替わって、ほとんど会社に行ってないよ」
「定期券代が支給されなくなった代わりに、在宅勤務への補助が出るようになった」

筆者のまわりを見ると、コロナ禍の影響を受けて出勤勤務から在宅勤務に変わった人は少なくありません。
これまでは「在宅勤務」は先進的な取り組みとみられていたところ、働き方がダイナミックに転換していることを感じます。
「在宅勤務!すごいね」から「まだ在宅勤務してないの?」へと風向きが変わった印象を受けている人もいるでしょう。

一方、理由や事情は人によって異なるものの、従前と変わらず出勤勤務を続けている人たちがいます。
そしてそういった人たちの主たる通勤手段は、都市部であれば「鉄道」。
国土交通省では、新型コロナウイルスの感染リスク低減のため、利用者に向けて「3つのお願い」を呼び掛けています。

・ マスクを着用し、会話は控えめに
・ 車内換気への理解、協力
・ 混雑を避けた時間帯、車両の利用

以下では、鉄道を利用して出勤している人が気になるであろう、列車の乗車率はどれくらい変わったのか、車内換気によるリスク低減、そして混雑を避ける方法などをわかりやすく解説します。

通勤ラッシュは具体的にどれくらい変わった?

国土交通省公表「駅の利用状況(首都圏・関西圏:速報値)」は、首都圏と関西の主なターミナル駅における平日ピーク時間帯の利用客数を調べたものです。
本記事投稿時点では、8月いっぱいまでの状況が公表されていました。

図
出所:国土交通省「鉄道:鉄道利用者の皆様へ(新型コロナウイルス感染症対策の利用者向け情報)」

上図は2020年2月17日の週の特定日を100とした推移です。
「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」決定とともに、徐々に利用者が減少し、緊急事態宣言発出期間には首都圏、関西ともに、利用客が半分未満になっていたことがわかります。
現在は利用客が回復しているものの、首都圏は7割強をピークに、関西では9割弱をピークに、低い数値で推移しています。

なぜ列車の窓はあいている?効果は?

前述のとおり、通勤ラッシュが緩和されたのは数値のうえでも明らかなことです。
通勤時間帯の列車がそもそもどれくらい混雑していたか、忘れつつある方もいらっしゃると思います。
さて、この列車、これまでとの違いは「混雑率」だけではありません。
いつからか通勤列車の窓が「少し開いている」状態になっていることに気づきませんか?
もともと列車の車内は、駅ごとにドアが開くことで換気されていますが、車内の空調装置で外気を取り入れるとともに、天候を考慮しつつ車内の窓を開けることで、3密のうち「密閉」の回避を促しています。
公益財団法人鉄道総合技術研究所が「窓開け」による効果を試算したところ、標準的な通勤車両で、左右3か所、合計6か所の窓を10センチ程度開けて時速およそ70キロで走行した場合、車内の空気が5~6分に1回入れ替わることがわかりました。
また、この時期気になるのは「窓を開けると、冷房の意味がなくなるのでは?」ということですが、JR東日本によれば、冷房効果はほとんど変わらないようです。
通勤用の車両は多くの場合、利用者が自分で窓の開閉を行うことができます。
大雨などの日は別として、積極的に窓開けを行っていきたいですね。

すいている列車を調べる方法

冒頭でご紹介した国土交通省「3つのお願い」の一つには、「混雑を避けた時間帯、車両の利用」があります。
時間帯については、多くの人が通勤する時間帯を避けるなど、策が講じやすいものの、「混雑していない車両」は、「やってきた列車を見ないとわかない」と思っている人も多いでしょう。
実は、鉄道会社によっては、「車両ごとの混雑状況」を表示する機能の盛り込まれた公式アプリをリリースしているところや、一定期間の状況に基づいて、ウェブサイトで情報を公開しているところがあります。
皆さんが普段利用されている鉄道会社について「会社名 車両ごとの混雑」で検索をしてみてください。
また、鉄道会社各社は、鉄道連絡会「鉄軌道事業における新型コロナウイルス感染症対策に関するガイドライン」にもとづいてさまざまな取り組みを行っています。
安心して通勤する上でも本ガイドラインを利用者の皆さんも一読しておきましょう。

<参考>
・ 国土交通省「鉄道:鉄道利用者の皆様へ(新型コロナウイルス感染症対策の利用者向け情報)」
・ 公益財団法人鉄道総合技術研究所「窓開け等による車内換気効果に関する数値シミュレーション(試算)」
・ 東日本旅客鉄道株式会社2020年7月17日付プレスリリース「新型コロナウイルス感染拡大防止に関する取り組みについて」
・ 鉄道連絡会「鉄軌道事業における新型コロナウイルス感染症対策に関するガイドライン第2版」

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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