【2020年8月28日から】「定期健康診断結果報告書」や「ストレスチェック報告書」への産業医の押印が不要になります

2020年7月31日、厚生労働省より、労働安全衛生規則やじん肺法施行規則などの一部改正が公表されました。
改正内容は以下のとおりです。

・ 「健康診断個人票」などについて、「医師・歯科医師の押印、電子署名」を不要とする
・ 「定期健康診断結果報告書」「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」などについて「産業医の押印、電子署名」を不要とする

改正にかかる省令などの公布は2020年8月中旬の見込みで、公布と同時に施行されます。
また、施行に際しては所要の経過措置が設けられることとなります。
以下では、省令改正の具体的内容やその背景などについてわかりやすく解説します。

産業医の各種報告書への押印が不要に

改正に伴い、労働基準監督署に提出する「健康診断個人票」「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(ストレスチェック報告書)」「定期健康診断結果報告書」などの様式から産業医などの押印欄が削除されます。
現行の様式で押印欄とともに設けられている産業医などの氏名記入欄は新しい様式にも引き続き盛り込まれますが、厚生労働省によれば改正後、産業医などの氏名記入欄は企業担当者側で記載して構わないとのことです。
また、医師から健康診断個人票に関して意見やアドバイスをオンラインで確認し、担当者による代筆も可能とのことでした。

改正以前に実施した定期健康診断なども対象となる可能性あり

本改正は「報告書の提出」にかかるものです。
そのため、改正以前に健康診断などを実施し、改正以降に報告書などを提出する場合にも改正内容が適用され、産業医などの押印は不要となります。

改正の背景

健康診断などの結果については労働安全衛生規則などで定められた様式で、健康診断個人票などを作成、保存が義務づけられています。
これら様式には、医師などによって健康診断が実施されたこと、その結果に基づき産業医などからの意見聴取を実施したことがわかるよう、産業医などの押印が求められてきました。
また、電磁的記録により保存する場合は、押印に代わり電子署名を行うこととされていました。
一方で、生涯にわたる健康診断にかかる情報等の活用を促進するために電子化推進が求められています。
しかし医師等による電子署名の取得が企業負担であるがために電子化が進まないという実情がありました。
同様に健康診断などの実施後は、労働安全衛生規則に定められた様式で健康診断結果報告書を労働基準監督署長へ提出することとされており、事業者が産業医に健康診断にこれらの情報を提供したとわかるよう、様式には産業医が押印、または電子署名が求められてきました。
しかし、定期健康診断結果報告書等についてもやはり、電子署名の取得が企業負担となって電子申請が進まないという意見が聞かれていました。
そのため、企業側での保存様式や、事業者による産業医に対する健康診断に関する情報などの提供状況については監督指導により確認することとし、産業医による押印、電子署名を不要としたのです。

改正にかかる注意点

ここで1点、注意してもらいたいことがあります。
それは、本改正による変更点はあくまで「産業医などの押印が不要になっただけ」であり、企業側の安全配慮義務などはまったく揺らいでいません。
企業の負う責務が軽減されたわけではありませんので、その点ご留意ください。

※2020年9月追記
本改正は、2020年8月28日付で公布、施行されました。
詳細は、参考中の官報および基発を確認ください。

<参考>
厚生労働省「「じん肺法施行規則等の一部を改正する省令案要綱」の諮問と答申」
「官報」2020年8月28日付
厚生労働省基発0828第1号「じん肺法施行規則等の一部を改正する省令の施行について」

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大月誠司株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

サービス業や人材紹介業を経てさまざまな業種、役職の人とお会いしてきました。
ストレスの形も業種や役職によって一つひとつ多様化してきていると感じております。
働く人の心と身体を健康にするお手伝いを、ドクタートラストで実現していきたいと思います。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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