LGBTQの従業員がコロナに感染しているとわかった時、会社が取るべき対応とは?

現在も世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るっており、その影響は深刻です。
そんな中、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、コロナ禍でLGBTQがこれまでも受けてきた差別・攻撃・暴力の危険性がいっそう高まっていると警鐘を鳴らしています。
今回は、LGBTQの従業員がコロナに感染した場合、会社としてどう対応していけばいいのかをお話します。

コロナ禍でのLGBTQへのバッシング

5月にソウルのクラブなどで集団感染が広がったことが明らかとなり、その中にゲイクラブも含まれていたことから、一部のメディアやSNSなどでゲイバッシングの動きが強まりました。
このようなバッシングにより、性的指向が公になることで自身に危害が及ぶことを恐れる方たちが、検査を受けられずにいるといいます。
まさに悪循環ですよね。
しかし、考えてみてください。
対岸の火事ではありません。
日本でも、まだセクシュアルマイノリティーへの偏見は根強くあります。
「株式会社LGBT総合研究所(博報堂DYグループ)」が2019年4月から5月に行った調査によると、全国20歳から69歳の個人42万8,036名、有効回答者が34万7,816名のうち、約10%がセクシュアルマイノリティーであったという結果が示されています。
つまり、皆さんの会社にも、セクシュアルマイノリティーの方がいる可能性があるのです。
では、その方たちがコロナに感染した、もしくは感染した疑いがあるとわかった時、会社としてどのような対応を取るべきでしょうか?

会社として知っておくこと、取るべき対応

アウティングとならないよう配慮すること

従業員本人や従業員のパートナーが新型コロナウイルスに感染、もしくは濃厚接触者となるなど、感染が疑われる状況となった場合、その旨が会社へ伝わることになると思います。
場合によっては、会社として社内での感染者、濃厚接触者発生の事実を他従業員へ周知することもあるかと思います。
その際、当事者に大きな精神的ショックを与えるアウティング(本人の了解を得ずに、公にしていない性的指向等の秘密を暴露する行動のこと)とならないよう、周知内容について当事者に事前に確認を行うなど、十分配慮する必要があります。

福利厚生制度を異性婚カップルと同様に使えるようにすること

LGBTQ当事者たちへ、新型コロナウイルス拡大により抱える不安や困難について聞いたアンケート調査では、「収入減少・補償・看護休暇に対する不安」が挙がっています。
コロナ禍の中、学校の休校や時短による仕事と子育ての両立は、働く親にとって大きな課題となっています。
そして、ここで知っておいてほしいのは、LGBTQの中にも異性婚カップルと同じように子どもを育てながら働く人たちがいるということです。
そのことを理解した上で、福利厚生制度を異性婚カップルと同様に使えるようにしておくことは、とても重要です。

日頃からLGBTフレンドリーであることを示しておくこと

何事も日頃からコツコツと、が大切です。
会社の姿勢として、セクシュアルマイノリティーへの理解と支援を行っていますよと示し、積極的に取り組みを行っていることが、当事者の安心感へと繋がります。
その安心感が、現在のような非常時において円滑な対応、コミュニケーションが取れるなど、良い効果をもたらします。

国から受けられる助成金もあります!

連日ニュースでもコロナ関係の国からの補償について、報道がされていますよね。
数ある補償の中でも働く親はもちろん、企業側も非常に気になるのではないかと思うのが、「小学校休業等対応助成金(事業者向け)」です。
この助成金は、臨時休業した小学校などに通う子どもや、新型コロナウイルスに感染した、もしくは感染したおそれのある子どもの世話を行うために休業せざるを得なくなっている労働者に対して、労働基準法上の年次有給休暇とは別に、有給休暇を与えた事業主に国から支給される助成金です。
ここで企業側に知ってほしいのは、この助成金は同性パートナーであっても、「子どもを現に監護している者」であれば、その対象となり、助成を受けることができるということです。
つまり、同性パートナーだからと言って、子どもの世話を行うために休業せざるを得なくなっているLGBTQの人たちへ有給を付与することに二の足を踏む必要はないのです。
現在のように大変な時期だからこそ、会社としてできるサポートを行うことが従業員の安心感にもつながります。
ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

<参考>
・ 一般社団法人Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に「『同性婚の実現・婚姻平等法の法制化』を望む声が最多数に。コロナ禍にLGBTQが抱える困難についての緊急オンライン調査・最終結果を発表。」
・ 一般社団法人Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に「LGBTQ当事者からコロナ禍で『病院で家族として扱われるのか』『強制的なカミングアウトにつながる』等、不安や危機感の声が集まる。同性婚法制化を目指す団体が、緊急オンライン・アンケートの速報を発表。」

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倉科彩香株式会社ドクタートラスト 健康経営エキスパートアドバイザー

投稿者プロフィール

大学の獣医学部で動物看護師の資格を取得。その後新卒で入社した動物病院を取引先に持つ会社ではやりがいはあったもののその分残業も多く、自身のこれから先の働き方、ライフワークバランスに対して考えるきっかけとなる。その中でドクタートラストを知り、産業保健について興味を持ち、転職。
法令順守のみならず、その先の健康経営の体制作りのサポートができるよう、日々勉強しております。
【保有資格】健康経営エキスパートアドバイザー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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