がんについて考えよう ~がんの5年生存率最新データからみる~

みなさんは、「自分ががんになる」ことを考えたことがありますか?
日本人の2人に1人はがんになると言われています。
また、がんに再発の可能性はつきものです。
手術や治療をしたとしても、検査ではみつけられないくらい小さながんが残っている可能性があるからです。
絶対再発しません、とは言い切れないのです。

がんの5年生存率、10年生存率って知っていますか?

じゃあ、どういう状態になれば、「がんが治った」と言えるのでしょう?
これは難しく、「がんが治ったと言い切れることはない」という答えが、1番正解に近いかもしれません。
もしかすると、今も取り残されたがんが体の中で少しずつ増えているかもしれないですし、検査で見つけられない大きさであれば、誰もわからないのが現状です。

そこで、指標となるのが、がんの生存率です。
がんと診断された人が5年後、10年後にどのくらい生存しているかが分かる指標です。

最新のがん生存率を見てみよう!

国立がん研究センターの研究班、全国がんセンター協議会では、2020年3月17日にがんの5年生存率、10年生存率を公開しました。(※1)

部位別の生存率

今回公表されたデータの5年生存率を見ると、生存率が高いがんの上位は下記のようになっています。

・ 前立腺がん:100%
・ 乳がん:93.7%(女)、90.6%(男)
・ 甲状腺がん:92.4%
・ 子宮体がん:86.4%
・ 大腸がん:76.8%

逆に、生存率の低いがんは、低い順に以下のとおりです。

・膵がん:9.9%
・胆のう/胆道がん:28.6%
・肝がん:37.0%
・肺がん:45.2%
・食道がん:46.0%

これらの生存率が低いがんは、治療で命を救うことが難しいがんと言えます。

ステージ別生存率

がんには、見つかった時点でどのくらいがんが進行しているか?を表す「ステージ」というものがあります。
ステージは、Ⅰ~Ⅳで表され、Ⅰは初期のがんであり、進行するにつれて数字が大きくなっていきます。(詳しくは、粘膜内にとどまっている0期もありますが、ここでは除きます)

今回公表された生存率は、ステージ別の生存率も示されています。
これらから、がんの特徴をみていきましょう。

前立腺がん
ステージすべて
相対生存率(%)10010010065.9100

上記は、前立腺がんのステージ別生存率ですが、ステージがⅡ、Ⅲと進んでも高い生存率を示しています。
治療によって命を救いやすいことが分かります。

前立腺がんほどではないですが、大腸がん、喉頭がん、乳がん、甲状腺がんなども、生存率が高い傾向にあります。(詳しくは※1)

膵がん
ステージすべて
相対生存率(%)40.117.25.81.59.2

上記は、膵がんのステージ別生存率です。
ステージⅠの段階でも、生存率が40%と、他のがんにくらて低いことがわかります。
このことから、治療が難しいがんであることがわかります。
今回公表されたデータでは、ステージⅠでの生存率が50%未満のがんは、膵がんのみとなっています。

胃がん
ステージすべて
相対生存率(%)97.463.948.36.974.9

上記は、胃がんのステージ別生存率です。
特徴としては、ステージⅠでの生存率は90%を超えていて高いのに対し、ステージⅣでは6.9%と1桁になっています。

これは、がんが早い段階で見つかれば治療が効果を得やすいが、進行したがんでは命を救うのが難しい傾向にあるということです。

肺がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんなども同じような傾向にあります。
このようながんは、がんを早く見つけることができるかどうかが分かれ道となっています。

なによりも、早期発見・早期治療

同じがんという病気でも、部位によってその後の結果が大きく異なることが理解できたかと思いますが、そもそも現代の医療では、残念ながらがんを完全に予防することは難しいです。
規則正しく、健康的な生活を送っていたとしても、膵がんになることを100%避けることはできません。

しかし、早く見つかれば治療の効果が出やすいがんを、早く見つけることができるのです。
日本では、以下のがん検診は、科学的に死亡率を減らせるものとして、国で推奨されています。

・ 胃がん
・ 肺がん
・ 大腸がん
・ 子宮頸がん
・ 乳がん

東京大学医学部付属病院の中川恵一医師も、産業保健フォーラムでの講演の中で、がんを早期発見することの重要さについて話されています。

完全な予防はできなくても、「がんを早く見つける」ためのがん検診について、今一度皆さんも考えてみてはいかがでしょうか。

※1
全国がんセンター協議会 全がん協加盟施設の生存率協同調査

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