新型コロナウイルスに備えろ!産業保健師が教える企業としてすべき対策

日本国内でも感染者が増えつつある新型コロナウイルス。
ご自身で予防に取り組まれている方も多いと思いますが、企業としては、感染予防を従業員任せにしていて問題ないのでしょうか?
いいえ、企業としても従業員の感染予防に取り組む必要があります。
なぜならすでに国内でも感染経路を特定することのできない「市中感染」が発生している疑いがあり、個人の対策のみでは限界を迎えている段階にあるからです。
実際に2月21日付で厚生労働省から経済団体に対し、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために「労働者が発熱などの風邪の症状が見られる際に、休みやすい環境の整備」「労働者が安心して休むことができるよう収入に配慮した病気休暇制度の整備」「感染リスクを減らす観点からテレワークや時差通勤の積極的な活用の促進」などの取組みへの協力要請がおこなわれました。
その後、2月25日付で政府から公表された「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」においても「企業に対して発熱等の風邪症状が見られる職員等への休暇取得の勧奨、テレワークや時差出勤の推進等を強力に呼びかける」と発表していることからも、企業に求められている責任は重大なものと考えられます。
このような状況下で企業としての対策が行き届いておらず、従業員が通勤時や業務時に感染してしまったら……。
社内外で感染を拡大させてしまったら……。
あり得ない話ではありません。
今回は企業としてできる新型コロナウイルス対策をお伝えします。

企業としてできること① 従業員に予防を徹底させる

どんな感染症対策をするか、従業員個人の裁量に任せていてはいけません。
従業員によっては感染症対策に無頓着で、何もしない方もいるからです。
企業として感染症予防のためのルールを作り、全従業員に周知し、徹底してもらうよう呼びかけたうえで、ルールを守ることのできる環境や制度を整える必要があります。
またルールを守ってもらうためにも、従業員に感染症対策に関する正しい知識を身に付けてもらうよう教育する必要があります。

≪教育したほうがよいこと≫
① 新型コロナウイルスに関する新しく正しい情報・情報の集め方(厚生労働省が示している最新の情報・感染経路・症状など)
② 正しい手洗いと手指消毒のタイミング・方法
③ 正しいうがいのタイミング・方法
④ 正しいマスクの着脱法
⑤ 免疫力を上げるための生活習慣(十分な栄養・睡眠)
⑥ ウイルスを繁殖させない環境(湿度を保つ・換気をする)
⑦ 感染の疑いがあるときの対応方法・受診方法
参考資料:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」

以下の記事の社内共有や、この内容をもとにした教育もおすすめです。

・ コロナウイルス基本情報

・ 正しい手洗い・うがい

・ 正しいマスクの着用法

≪ルール化したほうがよいこと≫
① 出勤時・外出からの帰社時・トイレ後などは室内へ入る前に必ず正しい手洗いとうがいを済ませる(汚染されている可能性のある手で社内のドアや物品にむやみに触れない)
② 新型コロナウイルスが疑われる症状があるときには出社を控え、必ず会社に申し出る(風邪の症状、37.5度以上の発熱、強いだるさ、息苦しさ)
③ 感染者と濃厚接触した場合はその旨を必ず会社に申し出る
※濃厚接触とは:感染予防策をせず手で触れること、または対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)での接触
④ 通勤時や外出時、社内において、可能な限りマスクを着用する(咳やくしゃみなどの症状がある人は必ず着用する)
⑤ 1日に1度は自分のキーボードなどデスク周辺をアルコール消毒する
⑥ 不要不急の人混みへの外出や、人が多く集まる集会、イベントへの参加を控える
⑦ 密室で大勢が集まる会議は可能な限り控え、テレビ電話などを活用する

≪環境づくり・制度づくり≫
① ハンドソープ・手指消毒剤の設置(汚染予防のためノータッチ式のタイプがおすすめ)
② 使い捨てペーパータオルの設置
③ マスクやアルコール除菌液等の配布(特に満員電車での通勤や外勤のある従業員)
④ 手洗い方法を記載したポスターをトイレ等に掲示する
⑤ オフィスの扉に入室前の手洗いを促す注意喚起ポスターを貼る
⑥ 共用の物品をできるだけ減らす(多くの人が触れるものを作らない)
⑦ 大勢の人が通る扉を開放しておく(ドアノブに触れずに通れるようにする)
⑧ 常に閉めなければいけない扉のドアノブや数の少ない物品などどうしても大勢が触れざるを得ないものはこまめにアルコール消毒する
⑨ 睡眠時間確保のための残業制限・勤務時間短縮
⑩ 感染疑い者・感染者発生時の対応フローを作成しておく(感染拡大防止のために何をするか等)
⑪ 症状がある際に休みやすい環境の整備(あらかじめお互いに仕事の共有・引継ぎをしておくなど)
⑫ 収入面において安心して休める病気休暇制度の整備
参考資料:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」

企業としてできること② 従業員をウイルスに曝さない

従業員がどんなに手洗いやうがい、マスク、消毒などの対策を徹底していても、大勢の人が集まる場や満員電車など、ウイルスに曝されやすい環境にいると感染のリスクは高まります。
「人の数はウイルスの数」という認識で、従業員をウイルスに曝さないような取組みを行いましょう。

措置① 時差出勤(2月21日付で厚生労働省が協力要請)

通勤時に満員電車を避けることで感染リスクを低減します。
また勤務時間を短縮した場合には従業員に睡眠時間を確保させることも可能です。
全員の時差通勤をみとめることが難しい場合はハイリスク者(高齢者・糖尿病・心不全・呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)の基礎疾患がある方・透析を受けている方・免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方・妊婦)だけでも認めることがおすすめです。

措置② 在宅勤務・テレワーク(2月21日付で厚生労働省が協力要請)

外に出ないことが手洗いやうがいなどを上回る最大の感染予防法です。
従業員の業務内容を徹底的に見直し、本当に在宅ではできない業務なのかを検討し、在宅でできることは在宅でできるようになるべく早く準備を進めることがおすすめです。
準備の方法がわからない方は厚生労働省の「テレワーク総合ポータルサイト」をご覧いただくこともおすすめです。

措置③ 不要不急の業務上での外出・出張・集会を避けさせる

営業など外回りの仕事は移動距離が長く、人と会う機会も多い分、感染リスクは高まります。
また「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」において「閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがある」と発表されており、いつどこで感染するか、ますますわからない状況となりました。
最近ではスムーズにテレビ電話ができるシステムも数多く存在しており、営業や面接、会議などに活用している企業も増えてきています。
そういったシステムを活用し、不要不急の外出は全社的に取りやめること、また従業員個人ではなく企業として顧客などに対しても、理解と協力を呼びかけることが必要です。

措置④ マスク着用のままでの接客等をみとめる

接客業など人と近い距離で接する機会の多い仕事も感染のリスクが高いです。
すでに大手テーマパークや百貨店などがスタッフにマスク着用を認めており、マスクを着用して接客することは一般的になってきました。
マスク着用で不快感を覚える顧客よりも、安心感を持つ顧客の方が多いのではないでしょうか。
③と同様に企業として従業員のマスク着用に理解と協力を求めるとよいでしょう。

ここまでの対策はハードルが高いと感じた企業様へ

ご紹介したとおり、企業が講じるべき対策は決して少なくはありません。
また時差出勤や在宅勤務などの制度をこれまで導入したことのない企業にとっては、ハードルが高いと感じることも無理はありません。
しかし万が一社内で感染者が発生したときのことを考えてみると、感染拡大による多くの従業員の休業や、重症化した従業員の命の危機、職場の閉鎖、インターネット上に企業名が流出してしまう、顧客が離れるなど、大きな損害が想定されます。
その大きな損害と比較すると、一見ハードルが高いと感じる措置も、導入のメリットのほうが大きいと感じていただけるのではないでしょうか。
また、いち早く従業員全員の在宅勤務への切り替えを実施した企業が世間から賞賛されるなど、いかに早く対策に取り組んだかによって逆に企業イメージがアップし、顧客へ安心感を与えることにもつながります。
従業員と顧客の双方を守り、企業のリスクを低減し、また国内での感染拡大を防ぐためにも、できることから取り組んでいただくことを、産業保健師として強くおすすめいたします。

<参考>
厚生労働省「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた取り組みについて~経済団体に対して要請を行います~」
新型コロナウイルス感染症対策本部「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」

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北原梨英

北原梨英株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学を卒業後、保健師として活動するほか、健康経営エキスパートアドバイザーとしてさまざまな企業様の健康経営を支援してきました。現在はセミナーのご依頼が最も多く、得意とする女性の健康増進と活躍推進をはじめ、多くのテーマでお話をしております。「従業員に長く健康に働き続けてほしい」「健康経営に取り組みたい」「健康経営優良法人の認定を目指したい」などお悩みがございましたら、まずはお気軽にご相談ください。どのようなご状況の企業様にも親身に寄り添って、今すぐできることからご提案し、一緒に取り組んでいくことをお約束いたします。
【保有資格】保健師、健康経営エキスパートアドバイザー、看護師、第一種衛生管理者、人間ドック健診情報管理指導士
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