大量出血することも!約5人に1人がもつ大腸憩室をご存知ですか?

「大腸憩室」をご存知ですか?
通常大腸は筒状になった臓器ですが、大腸の壁の一部がポケットのように内側から外側に飛び出した状態を「大腸憩室」といいます。
内視鏡で大腸を内側から観察すると、5mmから1cm程度のくぼみのようなものがポコポコできていることがわかります。
このポコポコとくぼんだ部分を「憩室」と呼んでいて、大腸にできたものを「大腸憩室」というのです。
大腸憩室症は特に欧米人に多くみられ、アメリカ人の大腸憩室保有率はなんと60%以上。
もともと日本人には少ないとされてきましたが、食生活の変化や高齢化に伴い近年増加傾向となっています。
一般的には年齢と共に増加し、今では日本人でも約20%が大腸憩室を保有しているとされています。

便秘は大敵

どうして大腸憩室ができてしまうのでしょうか?
大腸憩室には「便秘」と「加齢」の2つが大きく関係しています。
便秘になると腸にガスが溜まるため、腸管内の圧力が通常よりも高くなります。
便秘が長く続いたり繰り返していると、圧の逃げ場がなくなり、腸の壁の中でも弱い部分がポコっと外側に飛び出してしまいます。
風船に空気を入れると膨らむように、腸の壁が部分的に膨らんで外側に飛び出すイメージです。
また、年齢と共に腸の粘膜が弱くなったり便秘になることが多いため、より憩室ができやすくなっていきます。

症状がないのに大量出血することも

大腸憩室の厄介な点は、基本的に普段の生活の中では症状がないのに、突然倒れるほどの出血をする可能性があることです。
大腸憩室が引き起こすものは2つあります。

1.大腸憩室炎

これは憩室部分が炎症を起こした状態です。
憩室部分はくぼんでいるため便などが溜まりやすく、そこで細菌が繁殖すると炎症を起こします
。腹痛・発熱・吐き気などの症状が出て、虫垂炎に似ています。
安静や抗生物質の投与で軽快する場合が多いですが、一度治っても再発する可能性があるため、なかなか予防が難しいのが現状です。

2.憩室出血

憩室部分は通常の粘膜よりも薄くなっています。
そのため、硬い便が擦れたり炎症が起きることによって、粘膜が傷つき粘膜下の血管にも傷がつくと出血を起こします。
治療は内視鏡で出血している部分に医療用クリップを付けて止血することが第一に行われます。
しかし、はっきりと場所の特定ができない場合や出血量が非常に多い場合は、血管造影をして出血している場所に行く血管を塞栓して止血する処置をすることもあります。
いずれにしても、憩室出血は時として命を脅かすほどの出血になることもあるため注意が必要なのです。

憩室ができにくい体質に

大腸憩室は、決して珍しいものではなく年齢が上昇するにつれて非常にありふれたものになり、数個程度から中には数十個ある方もいます。
日本人は大腸の中でも右側にできることが多いというのも特徴です。
憩室があるだけでは基本的に症状がないため、大腸内視鏡をした際にたまたま見つかることがほとんどです。

・ 食物繊維を多くとり、バランスの良い食事をする
・ 便通のコントロール(便秘、下痢のコントロール)

憩室ができにくい体質にするためには、この2点がとても大切です。
生活習慣の中で憩室ができるのを予防するとともに、内視鏡を受ける際はぜひ「憩室はありましたか?」と一言医師に聞いてみてくださいね。

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田中 祥子株式会社ドクタートラスト 産業保健部 保健師

投稿者プロフィール

企業の健康管理室で働いていた経験をさまざまなかたちで皆さまにお届けします。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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