カスハラから従業員を守るために~知っておきたいカスハラの実態と対策~

「カスハラ」を耳にすることが増えました。
「カスハラ」とは「カスタマーハラスメント」の略称で、カスタマー(顧客)の立場を利用したハラスメント行為のことを指します。
顧客によるハラスメント行為が原因で精神疾患を患う従業員が増加しており、問題は深刻化しています。
2018年までの10年間でカスハラによる労災認定された人は78名に上り、うち24名が自殺しています。
このような問題に対し、厚生労働省では2020年春を目途にカスタマーハラスメントに対する企業が取るべき対策を指針で明示する予定です。

カスハラの実例

では実際にはどのような実例があるのでしょうか。
日本最大の産業別労働組合UAゼンセンの「悪質クレームの定義と その対応に関するガイドライン」に記載されている実例を一部引用します。

ア)担当者の態度が悪い。クビにしろと要求

鮮魚売り場で「焼き魚用があるか」との問いに、担当者が「鍋用の魚でも焼き魚用になります」 と答えたが、その接客態度が横柄ととられて苦情となった。
売場責任者がお詫びし「担当者を再教育します」と説明したが、従業員の解雇を要求してきた。

イ)新聞に謝罪の社告を出せ

食品を購入したお客様からの指摘で、価格が誤って表示されていることがわかった。
お客様にはお詫びをして差額を返金したが、「悪徳商法をしているのか。私以外にも高く買わされた人が沢山いるはずだし、世間にもきちんと謝罪をするべきだ。新聞に社告を出せ」と要求してきた。

ウ)商品にカビ、従業員を長時間拘束

商品にカビが生えているとのお申し出に、従業員がお詫びしご返金を申し出るも、納得せずに5時間にわたり従業員を立ちっぱなしにさせ、拘束状態が続いた。

こうした暴言や無理な要求以外にも、暴力やセクハラなどの実例も多くあり、従業員のメンタル面に大きな影響を与えます。
UAゼンセンの調べによると、顧客からの迷惑行為を経験した9割がストレスを感じたと回答しており、その中で半数の人が「強いストレス」を感じたという。
また、最近ではSNSを使用したハラスメント行為もあり、ネット上に顔や名前を晒され、解雇を余儀なくされたという例もあるようです。

カスハラの予防は難しい

従業員を守るためにできる、事前の対策はなにかないのでしょうか。
結論から言うと、カスハラの対策はとても難しいとされています。
理由は大きくわけて2つあります。
1つ目はクレームの定義が存在しないため、適格な対応ができないということです。
クレームに対する法令が少ないこともそうですが、会社内で明確なクレームのガイドラインを設定していない企業が多く、その時に対応した従業員に判断を任せるケースが多いようです。
2つ目は、カスハラは事前に予測するのが難しいため、具体的な対策を講じるのが難しいとされています。
「パワハラ」や「セクハラ」は社内の特定の人物が行うことが多いですが、カスハラの場合はいつどこで起こるか予測がつかないため、企業側で動くのがなかなか難しい問題とされています。

企業で行える対策は?

では企業が従業員を守るにはどうしたら良いのでしょうか?
カスハラの予防は難しいですが、対応した従業員の判断に任せるのはとても危険です。
ことが大きくなるのを防ぐためにも、明確なガイドラインを社内で設けることが大切です。
ガイドラインを作成するうえで、重要なポイントを3つご紹介いたします。

・ 従業員1人に背負わせない

クレーム対応の場合はお客さんと1対1で対応することが多いかと思います。
しかし、お客さんの様子が普通のクレームとは違うと感じた場合はすぐに上司を呼ぶか本社に連絡をするなどの職場の環境づくりを徹底しましょう。

・ 毅然とした態度で対応する

カスハラが横行しているタクシー業界では、運転手の判断により客を車から降ろすことを約款に明記している会社もあるようです。
個人の判断ではなかなか、お客様を前に毅然とした対応をするのは難しいかもしれませんが、こうした組織による規約を作ることによって、従業員の判断を正当化できることが重要になります。

・ 悪質なケースは録音や通報などの対応をする

暴言がひどい場合や、「殴るぞ」など恐喝してきた場合は、すぐに録音をして警察に通報しましょう。
当事者間の録音の場合は違法にはならず、むしろ警察に報告する際や、のちに「言った・言わない」などのトラブルを避けるためにも必要となります。

サービス業において、「お客さまに喜んでいただくこと」は何よりも大切ですが、それも従業員ありきのサービスだということを忘れないようにしましょう。
より良いサービスの提供のためにも、従業員の安全・働きやすさを大切にしている企業は増えてきているようです。
これを機に一度、社内で「カスハラ対策」についてご検討されてみてはいかがでしょうか。

<参考>
UAゼンセン流通部門「悪質クレームの定義と その対応に関するガイドライン」
UAゼンセン流通部門「悪質クレーム対策(迷惑行為) アンケート調査分析結果 ~サービスする側、受ける側が共に尊重される社会をめざして~」

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信定祐希

信定祐希株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

大学卒業後、飲食業界に入社し、従業員満足度と顧客満足度のつながりが強さを実感してきました。お客さまを幸せにするためには、従業員自身の幸福度が高くないと実現ができません。しかしそれはどの業種においても言えることだと思っています。
ワークライフバランスを整え、活き活きとやりがいのある仕事ができる社会を目指して発信していきたいと思います。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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