不安の正体を知る

日本で働く52%の人が、何らかの不安や悩み・ストレスを抱えていると言われる現代社会。
そんな状況を受けて企業に義務化された「ストレスチェック」に、「不安ですか」という質問が盛り込まれています。
この質問に一瞬手をとめ、自身に語りかける人は多いでしょう。
自分は今不安なのかな…?
そもそも不安ってなんだろう?

説明しようとすると意外と言葉に詰まってしまう「不安」について、今回は取り上げてみたいと思います。

不安とは?

不安とは「漠然とした恐れの感情」です。
嬉しいや悲しい、怖いなど、人には様々な感情がありますが、どの感情にも具体的な対象があります。
しかし唯一、不安だけははっきりとした対象がない感情です。
それゆえに、解消することが難しいのです。
考えれば考えるほどその感情が増大し、その感情に支配されていく。
不安とは、なんともやっかいな感情なのです。

不安はほとんどの場合、過去の経験やトラウマが関係していると言われます。
「もしまた同じことが起こったら…」と不安に駆られることは誰しもがありますよね。
ここで大切なのは、不安とはまだ起こっていないことに対しての感情ということです。
つまりは不安は「恐怖の未来形」なのです。
不安に実態はありません。
その時点ではまだ起こっていないことに対して自分が生み出した感情なのです。

現代は不安に襲われやすい

不安はもともと人間が持っている感情です。
現代人がその不安な感情をかつてなかったほどに抱え込むようになったのは、なぜなのでしょう。
現代が昔にくらべて不安が増大しているのは、個人的な過去の経験の問題ではなく「情報化」という社会によるところも大きいでしょう。
現代は、TVやネット、SNS等で、自分が経験していなくても様々なケースをリアルタイムに見聞きし、まるで自分が経験したかのような状態に陥ります。
そんな莫大な情報を取捨選択する力と客観的に捉える力が、情報化のスピードに追いついていない状態で、本来コントロールすべき情報に振り回されがちなのです。
自己体験からだけではなく、価値観や方向性を見失いやすい情報があふれる現代が、未来に対して不安を抱きやすいのは当然のことと言えるでしょう。

不安の必要性

そんなやっかいな感情の不安ですが、人間の感情として備わっている以上、やはり生きるために必要なものなのです。
人は不安を抱くことで、注意したり、リスク回避のため準備をしたりします。
つまり不安とは、未来に対しての本能的な防衛であり必要な感情なのです。
不安は誰しもが抱えているものであり、あって当たり前のものということです。

今を見失わないようにしよう

不安は誰しもが抱える感情だといっても、過度な不安となると話は別です。
不安が必要以上に増大してしまう前に、ふっと湧いてきた不安にうまく対処することが大切です。

不安の解消として、現状把握(紙に書いてみる、人に聞いてもらう)することは、効果的です。
客観的に感情に向き合い、不安という感情を無駄に増大させてしまってはいないかを考えることで、負のスパイラルに陥るブレーキとすることができます。
「今」という時間をまずは生きるため、何かに没頭するのも不安解消には有効です。
不安という感情は、過去や未来に心が向いている状態です。
生きるため、より良い未来にするために必要な感情なのですが、それに囚われて今を楽しく過ごせないのであれば問題です。

不安やストレスをなくそうとするのではなく、不安という感情の正体を理解し、自分の感情にうまく対処していくようにしましょう。

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山口紗英株式会社ドクタートラスト 精神保健福祉士

投稿者プロフィール

メンタルクリニックでのカウンセリング従事の後、「働く人」を理解すべく一般企業にて勤務。その後ドクタートラストに入社。
自然成長は望めない時代だからこそ、「個」と「組織」の両面に、健康という手段をもってアプローチすること大切だと思っています。知識ではなく、明日から職場で使える「スキル」を発信し、働くことが楽しいと思える社会の構築を各現場から作っていけたらと思います。
【保有資格】精神保健福祉、産業カウンセラー、第二種衛生管理者、健康経営アドバイザー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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