労働時間は改善傾向に~厚労省「過労死等防止対策白書」公表~

2019年10月1日、厚生労働省は「令和元年版過労死等防止対策白書」を公表しました。
「過労死等防止対策白書」は過労死等防止対策推進法に基づき、過労死の状況や防止のために講じた施策の状況を国会に毎年報告を行う年次報告書で、令和元年版で4回目となります。
以下では、2018年度の過労死への対策状況などをみていきます。

 労働時間、メンタルヘルス対策の状況は改善傾向

労働時間の状況

労働者一人あたりの労働時間は6年連続で減少傾向にあり、週労働時間60時間以上の割合は全体の6.9%にまで減りました(2017年度比0.8%減少、約35万人減少)。
また、年次有給休暇の取得率は2017年度比1.7%上昇し、51.1%にまで伸びています。
有給休暇の取得率が50%を超えたのは18年ぶりのことです。
さらに、就業から始業までの間に一定時間以上の休息時間を設ける勤務間インターバル制度についての状況も改善しており、導入企業の割合は2017年度比0.4%増加の1.8%でした。
実際に導入している企業の割合はまだわずかなものの、「勤務間インターバル制度を知らない」と回答する企業は、2017年度比11.1%減少の26.6%であり、今後も導入企業の増加が見込まれます。

メンタルヘルス対策の取り組み

仕事上のストレスなどについて職場に相談先がある労働者の割合は、2017年度比1.3%増加の72.5%と、企業としてのメンタルヘルス対策が着実に進みつつあることがわかります。
また、2015年度12月から始まったストレスチェック制度の集団分析結果についても、2017年度にはおよそ半数強の51.7%の事業場で職場環境改善などに活用されています。
集団分析結果の活用の2018年度から14.6%上昇しています。
制度が始まった当初は、受検者率の向上が課題でしたが、現在では、その「活用」に力を入れている事業場が多いことが見受けられます。
以上のように、労働時間、メンタルヘルス対策の状況は改善傾向にあるということがわかりました。

過労死などの現状は近年横ばい状況

脳・心疾患に関する労災請求

具体的には、過労による脳・心疾患に関する労災請求件数はここ10年の間、700件台後半から、800件の間で推移しています。
一方、労災支給決定(認定)件数は、2002年度に300件を超えて以降増加基調にありましたが、2009年度以降は200件台から300件台の間で推移しています。
2018年度は、脳・心臓疾患の労災請求件数は2017年度比37件増加の877件ですが、労災支給決定(認定)件数は15件減少の238件(うち死亡82件)でした。

精神障害に関する労災請求

脳・心臓疾患に関する労災請求件数は一定の横ばいにある反面、増加傾向にあるのが、精神障害に関する労災請求件数です。
2018年度は2017年度比88件増加の1820件となっています。
また、2018年度の労災支給決定(認定)件数は465件(うち未遂を含む自殺76件)で、2017年度にくらべて41件減少しているものの、2012年度以降、400件台で推移しています。

過労死など防止のための対策の実施状況

現在、厚生労働省では、過労死防止を目的に以下のような対策を行っています。

1. 長間労働の削減に向けた取り組みの徹底
・ 長時間労働が行われている事業場に対する監督指導(月80時間の時間外労働が行われている事業場が対象)
・ 36協定に関する法令の周知指導など
・ 過重労働による健康障害の防止対策(産業医の面接指導など)
・ メンタルヘルス対策
・ ハラスメント防止対策

2. 調査研究など
・ 過労死など事案の分析、調査研究の実施、その結果の発信(「過労死等防止対策白書」などで発信)

3. 周知、啓発
・ ポスターやパンフレットの媒体を活用した周知、啓発
・ 大学、高等学校の学生への労働関係法令に関する周知、啓発
・ 勤務間インターバル制度の推進
・ 働き方の見直しに向けた企業への働きかけの実施など

4. 相談体制の整備
・ 「労働条件相談ほっとライン」
・ 違法な時間外労働などの相談に応じる電話相談窓口(平日夜間、土日に無料の電話相談を実施)
・ 「こころの耳」
・ メンタルヘルス不調、過重労働による健康障害などに関するメール、電話相談を実施
・ 2018年度はSNSによる相談を試行的に実施

5. 民間団体の活動に対する支援
過労死防止対策推進のシンポジウムの開催

徐々に働き方改革が進んできているものの、過労死の現状が横ばい傾向にあるという現実があります。
元気に働く人がより増えるよう、厚生労働省の相談窓口の活用や法律の周知、さらには企業内での体制整備などを進めていくことが大切になります。

<参考>
厚生労働省「令和元年版過労死等防止対策白書」https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/19/index.html

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