男性の育休取得が本当に進んでいるか調べてみました!

企業の求人ページなどを見ていると「男性も育休が取得できます!」あるいは「男性社員の育休日記」などを目にする機会が増えてきましたね。
実際、2019年春には、メガバンクの雄である三菱UFJ銀行が男性行員への育休取得を義務化したことが大々的に報道され、社会的な機運としても「男性の育休取得」は後押しされている印象を受けます。

とはいえ、そういった雰囲気が必ずしも実態と符合が一致しているとは限りません。
今回は、改めて男性育休の現状を数値で見ていきます。

取得率はここ20年で50倍に!

育児休暇の取得率を見るうえで有効なのは、厚生労働省が毎年発行している「雇用均等基本調査」です。
この調査は、男女の雇用均等問題に関係する雇用管理の実態を把握すること、雇用均等に向けた施策の成果測定、方向性の検討のために行われています。
本稿執筆時点(2019年8月)において公開されている最新の結果は「平成30年度雇用均等基本調査」になります。

調査によると2018年度の男性の育休取得率は6.16%。
同年度の女性の取得率が82.2%であるのにくらべると、非常に少ない印象を受けますが、男性という条件下で年度を追ってみると以下のように、上昇基調にあることがわかります。

【男性の育児休暇取得率】
1996年度:0.12%
1999年度:0.42%
2004年度:0.33%
2005年度:0.50%
2007年度:1.56%
2008年度:1.23%
2009年度:1.72%
2010年度:1.38%
2011年度:2.63%
2012年度:1.89%
2013年度:2.03%
2014年度:2.30%
2015年度:2.65%
2016年度:3.16%
2017年度:5.14%
2018年度:6.16%
<出所>厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」

1990年代後半が1%未満の取得率であったことと比較すると、取得率は50倍以上にまで増加しています。

取得期間はよくても2週間

前述のとおり、絶対的には低いものの、相対的には男性の育休取得率が改善されているように見えます。
しかし、この育児休暇、取得率だけで判断するのはいささか尚早です。
というのも「取得率」とは別のベクトル「取得期間」があるからです。

そもそも育児休暇は、期間の指定はありません。
つまり、ほんの数日でも取得すれば、それは前述の「取得率」にカウントされます。

ここでは取得期間という観点から、2018年度の状況を比較してみます。

【男女別育児休暇取得期間】
5日未満:男性36.6%、女性0.5%
5日~2週間未満:男性35.1%、女性0.3%
2週間~1ヶ月未満:男性9.6%、女性0.1%
1ヶ月~3ヶ月未満:男性11.9%、女性2.8%
3ヶ月~6ヶ月未満:男性3.0%、女性7.0%
6ヶ月~8ヶ月未満:男性0.9%、女性8.8%
8ヶ月~10ヶ月未満:男性0.4%、女性10.9%
10ヶ月~12ヶ月未満:男性0.9%、女性31.3%
12ヶ月~18ヶ月未満:男性1.7%、女性29.8%
18ヶ月~24ヶ月未満:男性―、女性4.8%
24ヶ月~36ヶ月未満:男性0.1%、女性3.3%
36ヶ月~:男性―、女性0.5%
<出所>厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」

女性については10ヶ月~18ヶ月の取得が全体の約7割を占めています。
一方で、男性については、2週間未満の取得が7割を超えているのです。
つまり育児休暇取得期間という実態で見ると、男女で大きく差があり、同じように「育児休暇を取得した」といっても、その内実はまるで異なってくるのです。

育休取得を阻害するもの

国の施策としても「男性の育休取得」が後押しされているなかにあって、取得が進んでいると言い切れない現状があるのはなぜでしょうか。
サイコム・ブレインズ株式会社が2019年7月に公開した「男性の育児休業に関する意識調査」によれば、大きな要因として「職場の取りにくい雰囲気」があるとしています。

【男性の育児休業が普及しない理由(複数回答)】
男性が育児休業を取りにくい雰囲気がある:71%
育児休業は母親が取るものと認識されている:49%
人手不足で仕事から長期離脱することが難しい:48%
育児休業を取る男性は仕事やキャリアに対する意識が低いとみられる:47%
経済的理由:38%
その他:16%
<出所>サイコム・ブレインズ株式会社「男性の育児休業に関する意識調査」

このように「雰囲気」が筆頭に来てしまうなかで、現状を改善していくうえでは、社を挙げて積極的に取得を推進する以外に、直属の上司から部下へ取得の提案をすることが有効であると考えられます。
また、どうしても「誰もやったことない」ことに最初に飛び込むことは難しいものです。
その点では、そういった上司からの提案などを後押しにして「育休取得者」の蓄積を重ねていき、社内の風土として「育休は取得するもの」と根付かせていくことが重要です。

まずは、取得を推奨すること、そして可能ならば女性同様の期間での取得が望ましいと思います。

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
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