9月1日は防災の日~災害時の企業対応を考える~

本日9月1日は防災の日です。
また、防災の日を含む1週間は「防災週間」と定められており、2019年は8月30日(金)から9月5日(木)がそれに該当します。
この時期に合わせて毎年の避難訓練を行う企業も多いのではないでしょうか。
ところで皆さん、なぜ9月1日が防災の日であるか、その理由を考えたことはありますか。
実は9月1日は1923年に関東大震災が発生した日です。
その後、1959年の伊勢湾台風によって、大きな被害が出たことを受けて、防災の日は設定されました。

自然災害に対して、人間側からタイミングは選べません。
通勤中、勤務中に起きることもあるかもしれません。
交通網がマヒして、家に帰れなくなるかもしれません。
そうなった時、企業としてどんな防災対策をしておかなければならないか、今一度考えてみましょう。

防災対策してますか?

2018年6月に内閣府が公表した「平成29年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によれば、大企業の6割強、中堅企業の3割強がBCP(事業継続計画)を策定しています。
BCPとは、自然災害や大震災、地震や風水害等の自然災害あるいはテロや火災、事故等の人為的災害といった、従業員や中核事業等に対して重大な被害や影響を及ぼす可能性のある事態に遭遇した際に、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことを指します。

※BCPの詳細は以下の記事をご参照ください。


BCPの記載内容は企業によってさまざまですが、記載項目として最も多いのは「従業員の安全確保」で、企業規模による差はほぼありません。
また、実態調査結果によれば、BCPに記載しておいて実際に役立ったものとしては、「従業員の安全確保」「水、食料等の備蓄」が上位に挙げられています。

災害発生時の従業員の安全確保

では、実際に災害が発生した際、従業員の安全確保のため、企業はどのように対応をすればよいのでしょうか。
以下では、災害に備えてあらかじめ確立しておくべき体制をご紹介します。
皆さんの企業で体制が確立されているか、チェックしてみましょう。

① 救出・救護

・ 必要な資格を取っておく(応急手当普及員など)
・ リーダーを決めておく
・ 定期的に訓練を行っておく
※ 災害発生直後に最優先されるのが人命救助・救援。二次災害の防止も含めて、迅速な対応が必要です

② 避難誘導

・ 部署ごとにリーダーを決めておく
・ 非常口、避難通路を確認する
・ 避難場所の事前設定する
・ 年に数回避難訓練を実施しておく

③ 安否確認

・ 緊急連絡網を作成しておく
・ 部署ごとに取りまとめ担当を決めておく
・ 防災担当・事業主までの報告のフローを明確にしておく
・ 連絡がつかない場合の災害伝言ダイヤルを決めておく

④ 情報収集・提供

・ 人的被害
・ 経営資源の被害
・ インフラ等公共機関

帰宅困難時の水、食料等の備蓄

災害時は、多くの人が一斉に帰宅しようとします。
そのため、公共機関では長時間の待機状態が想定され、またパニックなどから集団転倒に巻き込まれる、建物からの落下物等により死傷するなど、二次災害を招く可能性が非常に高くなります。
こういった一斉帰宅の混雑は、最優先されるべき救助・救命活動や消火活動、救援物資輸送などの応急対策活動の妨げにもなります。
そのため、むやみに移動を開始しないことが重要です。

東京都では、一斉帰宅を抑制する条例も制定

一斉帰宅というと2011年の東日本大震災発生時の状況が記憶にある方も多いと思います。
首都圏では、公共交通機関の停止、道路渋滞により、自宅への帰還が困難になった人がおよそ515万人いたとされています。
「帰宅困難者」や「帰宅難民」といった言葉も聞かれるようになりましたね。
今後、首都直下地震が発生した場合、さらに大きな混乱が予測されることから、東京都では2013年に「東京都帰宅困難者対策条例」を定めています。
条例では企業に、従業員の一斉帰宅の抑制や、3日分の水や食料などの備蓄、安否確認と情報提供のための体制整備を求めています。
また、2018年には「東京都一斉帰宅抑制推進企業認定制度」を創設し、従業員の一斉帰宅抑制に積極的に取り組む企業を「推進企業」として認定、特に優れた取組や波及効果の大きい取組をしている企業を「モデル企業」として選定しています。

備蓄品は最低3日分

災害発生時、人命救助のリミットは72時間(3日)とされています。
そのため、東京都の条例でも防災備蓄は社員数×3日分が最低限のラインとされています。
最近では、5年という長期保存可能な食品も発売されており、バラエティーも豊かになってきました。
水や薬、救急セット、紙類、簡易トイレ、懐中電灯や毛布など必要とされる備蓄は種類が多いです。
企業としての具体的な対策は内閣府首都直下地震帰宅困難者等対策協議会「事業所における帰宅困難者対策ガイドライン」が参考になります。

防災対策は費用もかかりますが、実際の災害を想定して、準備をしていくことが重要です。
防災計画の策定や、見直しなども含めて、これを機会に意識を改めてみてください。

<参考>
・ 内閣府「平成29年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査(PDF)」
・ 東京都「東京都帰宅困難者対策条例」
・ 東京都「東京都一斉帰宅抑制推進企業認定制度」
・ 内閣府首都直下地震帰宅困難者等対策協議会「事業所における帰宅困難者対策ガイドライン(PDF)」

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冨田さゆり株式会社ドクタートラスト 産業カウンセラー

投稿者プロフィール

ドクタートラストに入社して6年目、多くの民間企業・官公庁の健康管理に関わってきました。産業カウンセラーの資格を取得し、専門知識を深める日々です。対企業、対従業員、健康に働くためのアプローチは多種多様。各々の特性に合わせたアドバイスを心掛けています!
【保有資格】産業カウンセラー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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