女性は助けられにくい!? ~女性へのAED使用の抵抗感~

皆さんはAEDを使ったことがありますか?
運転免許を取得するときの講習やメディアを通して、AEDという名前や使い方についてもご存じの方が多いと思いますが、現場で使用したことがあるという方は少ないかと思います。
実際に、2017年に心肺機能が停止した方への応急手当の実施率は56.6%のところ、AEDを使用しなければならなかったケースは4.9%と少なくなるそうです。
AEDを使わない応急処置で命が助かることは幸いなことですが、同時に私達の中でも実際に使った経験がある人が少ないということがわかります。

では予期せぬ事故が目の前で起き、AEDが必要になったとき、どんなことに我々は戸惑うでしょうか。
普通は、突然の出来事に、心肺蘇生の手順やAEDの使用方法を思い出さなくてはいけない、と思って手をこまねいてしまいますね。

京都大学などの研究グループが、「女性はAEDを使用されにくい」ということを明らかにしたそうです。
京都大学の研究では、数年間、全国の大学の構内でAEDが使用されたかどうかを調べたそうです。
その結果、中学生までは特に男女差はなかったが、高校生では女性生徒への使用率が30%も低下することがわかりました。
それではこのような男女差はどうして生まれるのでしょうか。

セクハラで訴えられてしまう?

SNS上で、「男性が女性にAEDを使うとセクハラで訴えられる」といった内容のものが拡散され話題になりましたが、実は投稿した本人が流したデマだった、という話は耳に新しいかと思います。

しかし、実際に使うという状態を考えてみると、AEDを公共の場で使うときに、女性の素肌を晒してしまうことに抵抗を感じる人は少なくないように思います。
また、「直にからだに触れること」が、「セクハラ」になってしまうのではないかという不安の声もあります。
さまざまなセクハラが蔓延する昨今、トラブルはできるだけ避けたいと考えるのが普通です。

実は、救命救急処置で、AEDを使用することや衣類を切る場合などは、緊急避難行為にあたります。
その場合、強制わいせつ罪や民事責任は成立しません。
配慮は重要なことではありますが、AEDの目的は「救命」です。
AEDの使用手順や心肺蘇生の流れが、逸脱したものではなくAEDから流れるアナウンスに従ったものであれば、それが性的行為としては認定されないので安心してください。

ネックレスや下着は外さなくてはいけない?

救急処置の講習では、男性の模型に電気パッドを貼付して研修します。
なので、私たちは男性への使用は、頭に浮かびやすいかと思います。
また、AEDは「金属類は外さなければならない」を教わったことがあると思います。
では、女性に使う場合をイメージしてみると、「ブラジャーを外すべきか」「金属は外さなければならないなら、アクセサリーも外したほうが良いのか」など不明点がたくさんあるでしょう。

以前はネックレス等のアクセサリーと同様、ブラジャーは金属を含むので取り外すと言われていましたが、実際は電極パッドが触れない状態で、素肌に直接貼ることがさえできれば、アクセサリーやブラジャーは外さずそのままで良いんです。

しかし、下着などの布の上からパッドを貼ってしまうと、電気ショックの効果が伝わらなかったり、最悪の場合スパークによって着火する可能性があります。
落ち着いて素肌に貼付して、しっかりと電気ショックを行える状態を作りましょう。

もう怖くない!女性の助けられる命も救おう

心臓が止まってしまうとおよそ15秒で意識がなくなり、時間が経てば経つほど、助かる可能性が下がるため、一刻も早く心肺蘇生をする必要があります。
AEDを使用するときは、可能な範囲で周りの環境や、異性への配慮は必要ですが、配慮をしすぎて、必要な処置ができなくなったり救命が遅れてしまうことは本末転倒です。

私が皆さんにお伝えしたいこと。それは…
・AEDは使う時に衣類を脱がす必要はありません。
・露出への配慮として、上から洋服や布等をかけても影響はありません。
また、女性に対してに限らず、屋外で不特定多数の人がいる時は、周囲の人に声をかけて、協力を仰いで人垣を作るなどして、プライバシーに配慮してあげることは大切です。

救急救助の状況は、突然起きます。
普通は、驚いたり何をしていいかわからず戸惑うことが多くあると思います。
トレーニングを受けたことがある人でも、躊躇してしまうことがあります。
そういう時に、見て見ぬすることなく、今回の記事を通して、「こういうやり方があったな」「助けようかな」と思う人が少しでも増えていただけたらとても嬉しく思います。

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原田 佑紀子株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学病院やクリニックで看護師として、さまざまな疾患をもつ働き盛りの年代の患者様を間近で看護させていただくなかで、からだとこころは密接に関係している、と強く実感しました。
「病気」に目を向けるだけではなく、病気になることで揺れ動くこころや生活を支え、健康に働くことをサポートする役割になりたいという思いから、産業保健師として活動しています。皆さんの「知りたい」最新の産業保健の情報を伝えられたらと思います!
【保有資格】看護師、保健師、人間ドック健診情報管理指導士、睡眠健康指導士上級
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