時間的プレッシャーに打ち勝つための方法

締め切りに間に合わせるため、睡眠時間を返上して深夜残業した。
気持ちに余裕がない状態で、何とか締め切りに間に合わせた。
頑張るも間に合わず納期を延ばしてもらった……。
こうした時間に追い込まれるプレッシャーは、働く人なら誰しも経験したことがあるものです。

しかし、期限のない仕事は、時間的プレッシャーがないこともあって後回しにしがちになりませんか。
私は昨年、国家資格取得に向けて、学生時代以来真剣に試験勉強をしました。
勉強を始める際は余裕をもって半年間の計画を立てたのですが、それはものの見事に崩れてしまいました。
無事合格したものの、振り返ると直前の1か月間は、仕事でも家庭でも勉強計画が間に合わなかったことによる追い込まれ感から、ピリピリ、イライラする嫌な時間を過ごしていました。
このようなパターンは仕事やプライベートにおいてもたまに発生することがあり、改めて自分は計画の立て方がうまくないのかもしれない……と反省する出来事でした。

きちんと計画して取り組んでいたはずなのに……一体、なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
今日は仕事をするうえで、時間的プレッシャーとうまく付き合う方法についてお話します。

計画錯誤が起きる

顧客や他部署から無理矢理短い納期を設定させられた場合は別として、普通の状況において人は何かに取り掛かる際、完成できる時間を実際よりも短く見積もる傾向があります。
これは科学的エビデンスの裏づけがあり、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーマンらはこのような時間の見積もりの誤りを「Planning Fallacy(計画錯誤)」と命名しました。
実際にこのような作業時間の予測の正確さについて調べた実験があります。
心理学者のロジャー・ビューラーらは、大学生らに卒業論文を書き上げるのに要する日数(現実、最短、最長)を予測してもらいました。
その後、実際に完成させるのにかかった日数と、予測した日数とを比較したのです。
大学生らが見積もった現実的な日数は33.9日ということでした。
しかし、蓋を開けてみると実際は予想の倍近い55.5日を要したのです。
より詳しく結果を見ると、最短で予測した日数で完成させた学生は1割しかおらず、最長で予測した日数でさえ書き上げられた学生は、実際半分もいなかったのでした。

なぜ計画錯誤に陥ってしまうの?

なぜ人はこのような「計画錯誤」という傾向に陥るのでしょうか。
実はその背景に「楽観主義バイアス」という認知の偏見が潜んでいるのです。
人は往々にして物事や出来事に対して「自分は成功できる」「自分には不幸は降りかからない」と楽観的に捉えてしまう特徴があります。
明日、自分の住む地域に大地震が来るのではないかと不安になり、何も手に着かない状態では毎日の生活に支障をきたしてしまいます。
どこかで「自分は大丈夫」という「楽観主義バイアス」があるからこそ、過度な不安に駆られず日常生活を営めるメリットもあります。
しかし、楽観主義バイアスが強すぎると、いざ被災したときにパニックになったり、防災の備えが不十分な結果になりかねません。

このように「自分は納期までに絶対に間に合わせられる」と現実より楽観視し、甘く見積もってしまう傾向が人にはあるということを念頭に置きつつ、仕事上での時間的プレッシャーをコントロールするには、どうしたら良いのでしょう?

早め早めの着手がカギ!

時間的プレッシャーをコントロールする一番の方法は、過去に自分がどれくらい時間が掛かったかをもとに、少し余裕をもって取り組むことです。
また、苦手で難しい仕事や、初めて取り組む案件に関しては、自分がこれくらい掛かるなと思うよりも、特に余裕をもって期間を見積もること。
なるべく早めに着手したほうが良いといえます。

当たり前のことのようですが、なかなかできない人は多いのではないかと想像します。
人はそういう認知バイアスや特徴を持っており、自分も然りだなぁと意識するだけで、時間的・精神的に余裕を持って確実に仕事を済ませ、周囲からの信頼も得られるのはないでしょうか。

皆さんもビジネスパーソンとして、このことを念頭に仕事に着手してみてください。

<参考文献>
「Exploring the “Planning Fallacy”: Why People Underestimate Their Task Completion Times」(Roger Buehler, Dale Griffin, and Michael Ross)

 

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