会社にメンタル不調の申告をしなかった労働者が不調になった場合、会社の責任は?

2015年12月にストレスチェック制度が義務化され、3年が経とうとしています。
企業からは高ストレス者に産業医面談を勧めてもなかなか申し出をしてくれないという話をよく聞きます。
もし高ストレス者が自分の体調のことを会社に申告せず、結果としてメンタル不調になってしまった場合、会社の責任は問われるのでしょうか?

本人からメンタル不調の申告がなくても会社の責任が問われるケース

今回のテーマを考える際に参考になる最高裁判所の判例があります(※)。
この判例では「たとえ本人からメンタル不調の申告がなくても、会社(上司や同僚)が察知し得る段階であれば会社はそれに応じて業務軽減等必要な対応を図るべき」という司法の見解が示されています。
つまり高ストレス者からの面談申出がなくても、欠勤や遅刻が増えるなど客観的に見て体調悪化が予見されるケースでは会社の責任が問われることがあるということになります。

受診を進めたい労働者がいた時にどう話すべき?

自身への評価が下がる、周囲の目が気になるなどさまざまな理由から労働者が自身のメンタル不調に関する情報を会社に申告することは非常に難しいです。
会社としてラインケアの観点から受診を進めたい場合には、どのようにすればいいのでしょうか?
気をつけるべき点は病気かもしれない可能性と、仕事上で問題になっていることは切り離して考えるということです。
病人扱いしたり病気であることを前提に話したりすると労働者は態度を硬化させてしまいます。
一方で遅刻、早退、欠勤が多いなど職場で実際に問題になっていることを人事や上司として心配している気持ちを伝える姿勢で話すことが大切になってきます。

一緒に働く人の常態を知ることから始めよう

またストレスを抱える労働者に上司や同僚が早く気づいてあげることも重要な視点です。
メンタル不調を発症した人は急にそのような状態になってしまうのではなく、普段と同じように仕事をしているように見えて不調のサインを出していることが少なくありません。
いつもは身だしなみが整っている人の服装が乱れている、普段は会話に入ってくる人なのに最近は元気がないなどです。
このようなサインは専門職であっても、その人の常態(平常の状態)を知らなくては判断がつきません。
普段から一緒に働いている上司や同僚だからこそ気づける点があります。
お互いの不調のサインに早く気づき助け合える職場の方が働きがいもありますよね。
まずは一緒に働いている人たちのちょっとした変化に気がつけるように、同僚の普段の状態に気を配るような心がけから始めてみるのもよいのではないでしょうか。

※ 公益社団法人 全国労働基準関係団体連合会「東芝事件」

 

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