「がん対策推進企業」の試み ~2人に1人が「がん」になる時代~

想像以上に身近な病「がん」

「知り合いががんで亡くなったという経験をされたことがある方」と聞けば、おそらく大多数の方が手を上げるのではないかと思われるほど、がんは現代日本において無視することのできない病気です。

厚生労働省の発表によれば、2017年にがんで死亡した人は男女合わせて373,334人にのぼります。
さらに、同年の人口動態統計によれば、日本人の死亡原因の第1位は悪性新生物(がん)で、死亡した人全体の27.9%。
これは、老衰で亡くなった人の3倍以上の数字となります。

さらに、がんの死亡率は男性は50代後半から、女性は60代前半から急激に増え始め、高齢になるほど高くなります。
特に60歳以降の男性は女性にくらべて、2倍近く死亡率があがります。

現在の超高齢化社会に合わせて、がんと共に生きる人は多くなると思われます。
また、同僚ががんになるというケースもより増えていくでしょう。
企業で長く働く以上、がんという病について、企業もしっかりと目を向けなくてはならない時代になったのです。

がん対策推進企業を厚生労働省が表彰

厚生労働省は企業におけるがん検診受診率向上を銘打ち、さまざまな活動や情報配信を行っているほか、年に1度、4~5企業をがん対策推進企業として表彰しています。
2019年の表彰では、最優秀賞である厚生労働大臣賞に株式会社ヤフーが選ばれました。
株式会社ヤフーでは若い世代に、がんを自分に関係する事柄として捉えさせる活動を推進しており、社員にがんに関する知識を学ばせることを目的としたe-ラーニングを毎年実施している点が大きく評価されました。
さらに、定期検診内にがん検診の項目を組み込み、勤務時間内に受診できるよう体制を整えているなど、手厚つくサポートをしていることがうかがえます。

過去のがん対策推進企業の対策とは

過去に厚生労働大臣賞を受賞した企業の取り組みは以下のようなものでした。

厚生労働大臣賞(2018年) : 伊藤忠商事株式会社
・一定年齢以上の社員の人間ドック受診を無償化
・国立がん研究センターと連携し、健診や精密検査をスムーズ化
・がん治療と仕事の両立のため、人事担当や産業医を中心に両立支援チームを作成し、状況に応じて個別に対応できるよう支援プランを策定

厚生労働大臣賞(2017年) : 株式会社大和証券グループ本社
・がん検診受診率向上のため、上司が直接受診勧奨をし、要精密検査者に対しても、会社が積極的に把握
・過去がんに罹患した社員が200人以上就業中
・独自の有給休暇や給与補填にあたる支給金制度
・がん研修のeラーニングを導入。受講者にポイントを付与し、給与に反映

厚生労働大臣賞(2015年) : 株式会社ワコールホールディングス
・大腸がんを年回の健康診断に受診項目として組み込む
・乳がん・子宮頸がんは健診バスをよび就業時間内に受診できる環境を作成
・ピンクリボン運動に力を入れており、チャリティなど広く活動している

がん対策推進企業へ向けての第一歩

同レベルのサポートを導入するのはなかなか難しい……という企業が多いだろうと思います。
まずは、そこまでコストをかけなくてもできるがん支援をご紹介させていただきます。

① 積極的な産業医の活用

もし産業医を選任されているのであれば、産業医に社員向けのセミナーを実施してもらったり、がんなどの不安がある人向けの健康相談の面談を社内に広く周知するところから始めてみましょう。

② 社内でのがんについての研修を実施

まずは若いうちから、がんという病気についての知識を身に着けてもらうことが大切です。
がんを他人事にせず、自分もかかる可能性がある病気として認識させるために、社内掲示板などで資料を配布したりするのも良いでしょう。
様々なサイトで簡単に社内研修に使えるような資料を手に入れることもできます。

・ 【ドクタートラスト】知っておきたい「大腸がん・胃がん」
・ 【国立がん研究センター】知っておきたいがんの基礎知識
・ 【がんと療養】もしもがんといわれたら

③ 有給制度の導入

人間ドックの費用を負担することは難しいという場合であれば、せめて健診を受けるための特別休暇を付与してみるのはいかがでしょうか。
がんは早期発見が鉄則です。
有給を取ってまで受診したくない、という人の心理を少しでも変えるためにも、検査のための特別休暇はの導入は有効です。
会社として、がん検診を推奨しているという強い姿勢が社員に浸透することは、ひいては社員のエンゲージメント向上にもつながっていくことと思います。

あなたの会社できること、ありましたか?
まずは社員が「がんは他人事ではない」と知ることから始める必要があります。

<参考>
・ 国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」

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大沼 泉株式会社ドクタートラスト ストレスチェック研究所

投稿者プロフィール

結婚・出産・育児といったライフイベントを乗り越えながら女性がいきいきと働くには、どんな職場環境が望ましいのか。ブラック企業から転職し、産休育休を経た経験をもとに、産業カウンセラー、そして働くママ社員の立場からさまざまな情報をお伝えしてまいります。
【保有資格】産業カウンセラー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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