LGBTへの取り組みが、優秀な人材確保に資する時代です

LGBTという言葉も今やすっかり世間に浸透していますね。
最初に大きな注目を集めたのは、2015年11月に東京都渋谷区、および世田谷区で「同性パートナーシップ」を導入した頃でしょうか。

LGBTとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつです。

株式会社電通が2018年以実施した「LGBT調査2018」によれば、LGBTに該当する人は約8.9%、また「LGBT」という言葉そのものの浸透率は68.5%という結果が出ています。
2015年に行われた同調査での浸透率が37.6%だったことを考えると、大幅な上昇といえるでしょう。

冒頭に記した「同性パートナーシップ」制度とは、自治体がレズビアンやゲイなどの同性カップルを証明する制度で、導入済み、あるいは導入を検討している自治体は増加傾向にあります。
自治体主導によるLGBTへの積極的な取り組みは、このように私生活の面から始まりましたが、最近は、企業活動にまで広がりつつあります。

LGBTに関する積極的取り組みを行う企業を後押し ~札幌市~

LGBTに関して積極的取り組みを行う企業の後押しを最初に初めた自治体は、札幌市です。
同市では「札幌市LGBTフレンドリー指標制度」として、2017年10月から、取り組みを行っている企業を評価しています。

LGBTフレンドリー指標の内容

・ 基本方針に関すること:企業の社内規定等にLGBTへの差別やハラスメントの禁止に関する記述がある。
・ 啓発:従業員向けにLGBTに関する研修やセミナーを実施している。
・ 内部体制:従業員がLGBTに関する悩みを打ち明けられる体制がある。
・ 福利厚生:同性パートナーへの福利厚生等が認められている。
・ 配慮:LGBTの従業員または顧客に配慮した環境の整備やサービスがある。
・ 協力連携:社外のイベントに協力またはNPO法人等と連携した取組がある。
・ その他:市長が適当と認めるもの。

上記のとおり、基本的には「従業員」に対する取り組みが主になっています。
また、同市では、取組のある指標の項目数に応じて評価し、「札幌LGBTフレンドリー企業」として登録のうえ、市のウェブサイトなどで啓発活動を行っており、本稿執筆時点(2019年1月)では、37企業が登録されています。

従業員だけでなく、顧客にとっても理解のある企業を評価 ~大阪市~

札幌市に続いて、制度を導入したのは大阪市です。
2019年1月に始まった「大阪市LGBTリーディングカンパニー」認証制度は、札幌市の取り組みとよく似たものですが、特徴的なのは、「顧客側」に対する取り組みについても言及されている点です。

基準項目

① 商品、サービスの提供に関する取り組み

・ 配偶者やその親族向けに提供するサービスについて、同性パートナーを配偶者と同等に取り扱っている
・ 性別を限定したサービスについて、戸籍上と性自認が異なる人も受けられるようにしている
・ 性別に応じて提供している商品、サービスについて性別にとらわれないものも併せて提供している
・ 商品、サービスの開発にあたって性別にとらわれないものも併せて検討することをルール化している
・ トイレや更衣室など、性別に応じて設けていることの多い施設、設備について、男女だけの区別に抵抗がある人でも抵抗なく利用できるものを設けている
・ 窓口における来所者等の呼出しの際に、番号や氏を用いて行うなど、戸籍上の性が推認できるような表現を用いている
・ 窓口における本人確認は、戸籍上の性以外の項目で行っている
・ 申込書、アンケート用紙等の性別欄について、設けない、男女以外の回答欄も併せて設けるなどの配慮をしている
・ 申込み、アンケート等において、戸籍上の氏名ではなく通称の使用を認めている

② 雇用主としての取組に関する基準

・ 社内規定などに性的指向、性自認等によるハラスメントや差別が禁止されている旨を明記している
・ 従業員向けに性的マイノリティや性的指向と性自認(SOGI)に関する啓発や研修等を実施している
・ 性的マイノリティやSOGIに関する従業員向けの相談窓口等を設置している
・ 業務上で通称を使用できるようにしている。
・ 各種届等(就職希望者のエントリーシートを含む)の性別記載欄について、設けない、男女以外の回答欄も併せて設けるなどの配慮をしている
・ 可能な限り、配偶者やその親族に関わる休暇や福利厚生制度において同性パートナー等を配偶者と同等に取り扱うようにしている
・ 性別適合手術などによる休暇や休職について、他の私傷病と同様の取り扱いをしている
・ トイレや更衣室など、性別に応じて設けていることの多い施設、設備について、男女だけの区別に抵抗がある人でも抵抗なく利用できるものを設けている
・ 制服、事務服、作業服などについて、男女の性別にとらわれないものを提供している。

③ その他の取り組み

・ 1年に1回以上、性的マイノリティやSOGIについての理解や取組の促進に関するイベントに参加している
・ 求人に関する活動において、性的マイノリティやSOGIに関する取組を推進していることをPRしている

優秀な人材獲得には、多様性への寛容さが不可欠

自治体として、LGBTに関する取り組みを行っている企業を認定する制度は、2019年1月現在、上記2自治体にとどまっていますが、今後、さらに増加していくことは大いに考えられます。
また、自治体よりも早く、民間においては、たとえば「LGBTフレンドリーな企業」に特化した求人サイトといったサービスも数多く提供されています。
昨今は、人手不足と言われており、求職者側が主導権をもって、「働きたい企業」を選ぶことができる時代ととらえることができます。
そんなとき、求職者側、労働者側にとっては、「多様性への寛容さ」というのも、魅力として映ることは大いにあるでしょう。
このとき、一つの指標として挙がってくるのが「LGBTへの理解」だと思います。
もちろん、自身がLGBTであるという人にはもちろんですが、それ以外の人にとっても、LGBTへの理解は、「多様性に対して寛容」だと受け止められることでしょう。

<参考>
・ 株式会社電通「LGBT調査2015」
・ 株式会社電通「LGBT調査2018」
・ 札幌市「札幌市LGBTフレンドリー指標制度」
・ 大阪市「「大阪市LGBTリーディングカンパニー」認証への申請を受け付けています」

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
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