2019年4月から採用可能! 新フレックスタイム制度

2018年7月に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(以下、「働き方改革推進法」といいます)では、多様で柔軟な働き方の実現に向けた法改正が行われることになっています。
注目を集めているのは一定の条件を満たした労働者を、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする「高度プロフェッショナル制度」の創設でしょうか(正式名称は「特定高度専門業務・成果型労働制」といいます)。
具体的な対象者は、2018年10月15日より、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で議論が進められているところです。

高度プロフェッショナル制度ばかりの話題の俎上にのる一方で、多様で柔軟な働き方の実現として、フレックスタイム制度も見直されたことはご存知でしょうか。

フレックスタイム制度とは

フレックスタイム制度とは、変形労働時間制の一種で、一定期間の総労働時間内で各日の始業時刻、および終業時刻を選択して働くものです。
日本では1988年施行の改正労働基準法で導入され、およそ30年の歴史があります。

厚生労働省「平成29年就労条件総合調査」によれば、フレックスタイム制を採用している企業は全体のおよそ5.4%、特に従業員数1,000人以上の企業では約2割強、23.6%に上ります。

2019年4月1日からは清算期間の上限が3ヶ月に

現行のフレックスタイム制度では、清算期間の上限が1ヶ月と定められていました。
ざっくり分かりやすくいうと、「1ヶ月以内に決められた労働時間働けば、始業時間も就業時間も好きに決めていい」ということです。

今般の見直しでは、子育てや介護、自己啓発などさまざまな生活上のニーズと仕事との調和を図りつつ、効率的な働き方を一層可能にするため、さらにはフレックス制度を利用しやすい制度とすることを目的として、清算期間の上限が「3ヶ月以内」になりました。
あくまで「上限」に過ぎませんので、現在、就業規則で「1ヶ月」と定めてあるのであれば、そのままにしておいても何ら問題はありません。

また、新たなフレックスタイム制度(以下、「新フレックスタイム制度」といいます)にかかる改正規定の施行期日は2019年4月1日です。

Q&Aで学ぶ新フレックスタイム制度

さて、ここまでのざっくりとしたご説明だけでは、「1ヶ月鬼のように働いて、残りの2ヵ月は遊んでいてもいいのか?」などなど、疑問の余地があるかと思います。
そこで以下では、新フレックスタイム制度についてQ&A形式で、細かい部分についてご説明していきます。

Q 清算期間を3ヶ月にすると、月によっては労働時間にかなりばらつきが出るように思われますが、大丈夫なのでしょうか

A 働かない月があるのは問題ではありませんが、働き過ぎる月があるのはいけません。

清算期間を1ヶ月より長い期間にする場合は、「月ごとの労働時間を1週間当たりに換算したとき、50週間を超えないこととしたもの」とされています。
また今回の働き方改革推進法の施行により、1時間当たり40時間超の労働をしていて、なおかつその超えた時間が1ヶ月あたり80時間を超える場合には、この情報を労働者に通知することが義務づけられますが、新フレックスタイム制度でも同様です。
もちろん、従前どおり、割増賃金の支払い、医師による面接指導も求められます。

Q 新フレックスタイム制度の採用は、企業で勝手にやってもいいものなのでしょうか

A 労働基準監督署長に届出なければなりません。
従前より、フレックスタイム制度の採用に際しては、就業規則で定めること、および労使協定の締結が求められていました。
新フレックスタイム制度において清算期間を1ヶ月超とする場合には、これらに加えて、労使協定に有効期間を定めること、さらには当該協定を所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

Q 清算期間を1ヶ月超にしているのですが、その清算期間よりも、実際に労働した期間が短かった場合はどうしたらいいでしょうか

A 1週間あたり40時間を超えて労働させた時間については、割増賃金を支払う必要があります。
清算期間よりも実際に労働させた期間が短かった場合(短期間で必要な労働時間数を働いたということです)、まず労働させた期間を1週間平均に換算します。
そのうえで、1週間あたり40時間を超えたときには、割増賃金を支払う必要があります。

Q 法定時間外労働となる時間はどのように考えたらよいでしょうか

A 次の①および②の合計です。
① 清算期間を1ヶ月ごとに区分し、各期間を1週間あたりに平均した際、50時間を超えた分
② 清算期間における総労働時間のうち、法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間(①で算定された時間を除く)

企業によっては、清算期間の上限が1ヵ月であったことから、採用しづらかったところもあるかもしれません。
今般の見直しによって、採用のハードルがぐっと下がる業種や職種も出てくるでしょう。
くれぐれも過重労働させないという点に留意して、運用いただければと思います。
<参考>

・ 「労働政策審議会(労働条件分科会)」(厚生労働省)
・ 「平成29年就労条件総合調査」(厚生労働省)
・ 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年基発0907第1号)(PDF)」(厚生労働省)

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
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