病気と仕事の両立を考える① ~ながらワーカー~

「ながらワーカー」という言葉を知っていますか。

ながらワーカーとは「働きながら」「通院しながら」「会社や病院と相談しながら」働くがん患者の方のことで、公益財団法人日本対がん協会が名づけました。
がん患者ではなくとも、なんらかの疾病をかかえながら働いている人は労働人口の3分の1といわれています。
今は病気ではなくとも、病気にかかっている社員がいなくとも、今のあなたの職場は病気と仕事を両立できる環境なのか、制度は整っているのか一度考えてみませんか。

両立が難しい状況

実際に病気を抱える労働者の92.5%は就労継続を希望しています。
しかし治療と仕事を両立できているかという調査では「できている」「どちらかといえばできている」と答えたのは正規雇用で85%、非正規雇用では74.4%となりました。

また過去3年間のがん患者の退職者割合の調査では、「半数以上が退職した」という企業の回答が13.3%となりました。
退職の時期としては休職期間中が39.1%、が復職以降44.2%となり、復職しても仕事を続けることができない現状が伺えます。

必要な支援とは

では疾病をもつ労働者はどのような支援が必要必要としているのでしょうか。アンケート結果は以下のとおりです。

第1位 体調や治療の状況に応じた柔軟な勤務形態(47.8%)
第2位 治療・通院目的の休暇・休業制度(45.2%)
第3位 休暇制度等の社内の制度が利用しやすい風土の醸成(35.0%)
第4位 働く人に配慮した診療時間の設定や治療方法の情報適用(28.0%)
第5位 病気の予防や早期発見、重症化予防の推進(26.0%)
厚生労働省「平成25年 治療と職業生活の両立等の支援対策事業 調査結果」より

企業が実際に行っている支援

疾病を持つ労働者に対して、実際に企業ではどのような支援を行っているのでしょうか。
病気休職制度がある企業は65.6%となっていますが、会社の規模別でみてみると300人以上規模では90%以上なのに対し、50名以下の会社では63.4%となっています。
「私傷病等の疾患罹患者が出た場合に、仕事内容、業務量、勤務時間など働き方を見直すことがあるか」(複数回答可)という調査では以下の結果がでています。

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独立行政法人労働政策研究・研修機構「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査(企業調査)」より

やはり企業規模が大きいほど制度は整っているといえますが、仕組みはあっても実際には相談しにくいといった場合もあります。
中小企業の場合、しくみはなくとも社内の関係性が密接で、周囲が配慮してくれるといったこともあります。仕組みと風土づくりの両方を整えることが重要であると思います。

まとめ

会社からの支援というのは、まずは労働者本人が会社に申し出るところからはじまります。
機微な個人情報ですし、申し出るのはとても勇気がいることです。
今は特に制度などがないという会社も、まずは申し出る窓口を明確化する、情報の取扱い方法を定めておくなど、できるところから制度を整えていきましょう。

今回はデータから、疾病と仕事の両立について考えてみましたが、次回は具体的にどのようなしくみが必要なのか考えてみたいと思います。

参考:
・ 厚生労働省「職場における治療と職業生活の両立のためのガイドライン(全体版)」
・ 厚生労働省「治療を受けながら安心して働ける職場づくりのために」(PDF)
・ 独立行政法人労働政策研究・研修機構「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査(企業調査)」

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須田 友梨佳株式会社ドクタートラスト 大阪支店

投稿者プロフィール

大学卒業後に入社した会社では「働き方改革」が足かせとなり、残業できず苦しむ社員や余計に仕事が増えてしまうような状態をみてきました。働く人達が、健康に前向きに働くことができる職場環境を目指して、勉強し発信していきたいと思います。
【保有資格】健康経営アドバイザー
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