無期転換ルール~企業側の動き~

無期転換ルールの施行から5年。
今春より無期転換の動きが本格化してきたことと思いますが、運用はいかがでしょうか?
今回はこの「無期転換ルール」を、労働者視点ではなく企業の視点から解説していきます。

無期転換ルール

まずは「無期転換ルール」について改めて確認していきましょう。
「無期転換ルール」とは、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールです。
現在、有期労働契約で働いている方のうち、約3割が通算5年を超えて有期労働契約を反復更新しています。
つまり、労働期間に定めのある社員の方々が戦力として社内に定着し、ほぼ毎年「自動的に期間を更新されているだけ」という状態といえます。
そのため、有期社員を無期転換ルールによって期間の定めのない労働契約の社員とすることは、実態と形式を合わせる措置であり、適切な雇用関係を築くためのものなのです。
このルールのメリットは以下の通りです。

・意欲と能力のある労働力を安定的に確保しやすくなる
・長期的な人材活用戦略を立てやすくなる

企業は社内の実務に精通する無期労働契約の社員を比較的容易に獲得でき、長期的な視点で社員育成を実施することが可能になり、有期社員は、雇用が安定し長期的なキャリア形成を図ることが可能になります。

社内制度は大丈夫?

企業は、有期社員の無期転換の申し込み以前に、就業規則や社内制度等の検討・整備等を進める必要があります。

① 社内の有期社員の就労実態の把握

有期社員の人数や労働時間、更新回数、契約期間、職務内容、無期転換申込権の発生する時期等をあらかじめ把握しましょう。
また、有期社員の定義が、就労規則で明確になっているかの確認もしておきましょう。

② 社内の仕事の整理・業務の振り分け

基幹的な業務か補助的な業務か、恒常的な業務か一時的な業務かを振り分け、役割や責任を明確にしておくことで未然にトラブルを防ぎます。
有期社員、無期社員、正社員等で業務内容を適切に振り分ける必要があります。

③ 有期社の転換後の位置づけを決める

単純に契約期間を無期に変更するのか、「多様な正社員」(勤務地や労働時間、職務等に制約を設けた正社員)とするのか、試験の実施や能力によって「正社員」とするのか等、有期社員の転換後の位置づけを検討しましょう。

④ 就業規則の整備・見直し

無期転換者用の就業規則を作成した場合には、作成した規定の対象者を、正社員の就業規則から除かなければならないため、正社員の就業規則も見直す必要があります。
また、有期社員から無期転換の申し出があった場合、口頭でのやり取りでも法律上は問題ないとされています。
しかし、不要なトラブルを防ぐためにも、やはり書面で残しておくことをお勧めします。
無期転換申出書の例は、厚生労働省が公開していますので、参考にしてあらかじめ作成しておきましょう。

雇止め

無期転換を行いたくない企業の中には、無期転換の申込権が発生する前に、雇止めをしてしまうというケースがあります。
しかし、この雇止めが無期転換を阻止するものであると同視される場合は、もちろん無効となるリスクがあります。
大きなトラブルとならないよう、企業は事前に有期労働者の無期転換申込権の発生を把握し、社内制度の見直しや、対策を行わなければなりません。

国の支援【助成金もあります!】

国は、無期転換ルール運用のために、情報の提供や助成などの支援を行っています。
例えば、有期契約労働者や短期間労働者、派遣労働者の企業内でのキャリアアップを促進する目的で、正社員化や人材育成、処遇の改善に取り組んだ事業主に助成金を支給する制度です。
この制度は、7つのコースに分かれており、そのうち「正社員コース」は1人当たり57万円(生産要件を満たす場合は72万円)が支給されます(企業の規模で金額は前後します)。
その他にも、厚生労働省は、無期転換ルールを含む「労働契約等解説セミナー」の無料開催や、「モデル就業規則」を公開しています。また、2017年の9月には、「無期転換ルール特別相談窓口」が設置されています。
無期転換ルールを上手に運用すれば、労働者側は雇止めの不安から解放され、企業は長期的な人材活用の戦略を進めていくことができます。
さまざまなトラブルを防ぐためだけではなく、効果的な運用に向けてぜひ一度社内体制の見直しに取り組んでみてください。

参考:
【厚生労働省】「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト~無期転換を円滑にサポートします~」
【厚生労働省】都道府県労働局「安心して働くための「無期転換ルール」とは~平成30年4月から無期労働契約への転換申込が本格化!~」(PDF)

 

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