自己肯定感と自己有用感はここが違う!~誰の視点に立つか~

「自己肯定感」と「自己有用感」、しばしば似たような場面で使われますが、実は違ったものです。
自己肯定感は自己評価で、自己有用感は他社評価です。
今回は「自己肯定感」と「自己有用感」の相違点をわかりやすく解説します。

ありのままの自分を認めることが「自己肯定感」

自己肯定感とは、その字のごとく「自己」を「肯定」する感情のことです。
自分のあり方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味します。(出典:実用日本語表現辞典)

似たような表現として、「自尊感情」「自己効力感」「自信」などといった言葉もありますが、自己肯定感には、これらとは異なる意味がもう一つあります。
それは、「肯定的な側面、そして否定的な側面も含めて、ありのままの今の自分を受け入れている」という意味です。
つまり、自分に対して単に自信を持つだけでなく、「ありのままの自分を認める」ことが自己肯定感となります。

国際比較で、自己肯定感の低い日本人

内閣府の調査(※)によると、日本人は諸外国と比べて自己肯定感が低いことが明らかとなっています。
日本人のうち、自分自身に満足している者の割合は5割弱、自分には長所があると思っている者の割合は7割弱。
いずれも日本人が最も低く、特に10代後半から20代前半の世代において、諸外国との差が大きい結果となりました。

日本人の自己肯定感が低い理由の一つとして、「美徳」が関係していることも考えられます。
謙遜、遠慮などをはじめとして、根拠なく自信満々に振る舞うことが良い印象を持たれない場面も多々ありますね。
あえて自信満々とは言わず、努力し続ける国民性が反映されているのかもしれません。

自己肯定感は子どもの頃に形作られる

しかし、自己肯定感が低いと、言わずもがな以下のような状態に陥りやすくなります。

「自分のことを好きではない」
「自信がないので、難しいことにチャレンジしない」
「自分の最大のパフォーマンスを発揮できない」
「自分に厳しいので、相手にも厳しくなる」
「笑顔が少ない」
「ネガティブである」
「自責傾向が強く、うつ状態になりやすい」

自己肯定感は、子どもの頃にベースが形作られるといわれています。
特に、乳幼児期に親や保護者に絶対的な安心感を持てること、どんな自分もありのままに認めてもらえることなどです。
自己および他者への絶対的な信頼感を自己肯定感の基盤として、青年期までに自分のアイデンティティとして確立されるのです。
乳幼児期の体験は、自分の意識や記憶にはなく、大人になってから修正することやコントロールすることは不可能なことですね。

もし、自己肯定感が低いまま成長した場合は、その後高めることはできないのでしょうか?
答えは、NOです。
自己肯定感は、大人になってからでも高めることが可能です。

人の役に立つことが「自己有用感」

日本人は、遡ると農耕民族であったため、他者との協力が不可欠でした。
西洋系の狩猟民族は、基本的に自分一人で狩猟を行うことができれば良かったのに対して、農耕は一人で行うのはとても非効率です。
そのため、いかに協調性を持ち、周囲とうまく協力・分担できるかが生存において重要なことだったのです。
私たち日本人のマインドとして、自己評価とは他者評価の上に成り立ちやすいものであり、他者の中での自分の位置付けや役割、他者からの評価こそが、自分の評価となりやすいのです。

さて、自己肯定感と似ている表現ですが、自己有用感という言葉があります。
一見同義として扱われがちなこれらの言葉ですが、両者の意味には大きな違いが一つあります。
それは、自己評価なのか他者評価なのかという点です。

自己肯定感 = 自分の自分に対する評価
自己有用感 = 他者からの自分に対する評価

自己肯定感を高めたい場合、特に日本人はまず自己有用感を持つことがポイントとなります。

「相手の役に立っている」
「チームの中で自分の役割がある」
「他者と比較して、得意分野がある」

「貢献感」ともいうことができますが、誰かの役に立てている感覚(=自己有用感)が重要なのです。

自己有用感から自己肯定感へ

貢献感、自己有用感がある
   ⇓
自分で自分にYESを出せる
   ⇓
自己肯定感が高まる
   ⇓
自分の気持ちが安定しているので、相手にもYESを出せる
   ⇓
相手が喜ぶ
   ⇓ 
相手が喜んだ顔を見て、自分も嬉しい
   ⇓
「相手を喜ばせることができた」という「貢献感」「自己有用感」を得られる
   ⇓
さらに自己肯定感が高まる

自己肯定感が高い人は、精神的に安定しているため、突然の災難や困難、逆境に出くわしても「自分なら大丈夫」「自分ならできる」という感覚を持つことができます。
そうすると、冷静な気持ちで乗り越えることができるのです。
ありのままの自分を認める、ありのままの他者を認める、自己有用感を持つことが自己肯定感を高めることにつながります。

自分に自信がない……
自己肯定感が低い……
自分を認められない……

そんな場合はまず、「人の役に立つ」「相手を喜ばせる」というような「貢献感」「自己有用感」を感じられる行動をしてみてはいかがでしょうか。

※ 内閣府「平成26年版子ども・若者白書」
調査対象国:日本、韓国、アメリカ、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン
調査対象者: 満13歳から満29歳までの男女

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高橋 さなえ株式会社ドクタートラスト 産業保健部 保健師

投稿者プロフィール

会社員時代に産業保健に興味を持ち、保健師になりました。
企業勤めの経験を活かし、はたらく人にとって身近なテーマを発信させていただきます!

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