医療費から考える生活習慣病

日本全体で1年間にどのくらい医薬品が販売されているか考えたことはありますか?
普段体調不良の際に何げなく受け取る薬。今日はそこから生活習慣病などについて考えていきたいと思います。

日本の医薬品売上高は国家予算規模!

冒頭でも述べましたが、皆さんは1年間の医薬品売上高といわれてどれくらいの金額を想像するでしょうか?

2016年の医薬品売上高はなんと10兆4,307億円でした。

10兆円というと、フィンランドやギリシャ、アルゼンチンの国家予算の規模にも匹敵します。
日本では毎年これほど多くのお金が医薬品に充てられているのですが、実はこれでも、ジェネリック医薬品の普及により前年よりは下がっているのです。

薬価は低いけれど……

では、その内訳を見てみましょう。

1位 C型肝炎治療薬のハーボニー
2位 抗がん剤のオプジーボ
3位 高血圧治療薬のミカルディス配合剤
4位 抗がん剤のアバスチン
5位 鎮痛剤のリリカ
6位 消化性潰瘍治療薬のネキシウム
7位 C型肝炎治療薬のソバルディ
8位 糖尿病治療薬

この後も9位、11位、13位にも高血圧治療薬が続きます。
上位を占める薬のほとんどは、ひとつひとつが非常に高額な薬のため、どうしても全体的に売り上げ高が多くなる傾向にあり、恐らく2017年の売り上げ高も同じようになると思われます。

しかしその中でも注目していただきたいのが3位のミカルディス配合剤です。
1位のハーボニーは、2016年時点での薬価が1錠で約5万5千円。
対して、3位のミカルディス配合剤は約170円。
こんなに価格に開きがあるにも関わらず、高血圧や糖尿病の薬がランキング上位に入るということは、それほどたくさんの人が、いわゆる生活習慣病にかかっているということを示しています。

日本の社会保険制度では、働く世代は3割負担です。例えば病院で1,000円、薬局で2,000円支払った場合、自分で支払うのは合計3,000円ですが、残りの7,000円は各健保組合や税金の負担となります。
3,000円も、もちろん負担には変わりありませんが、もし7,000円だったらどう考えるでしょう?
「毎月7,000円もかかるなら、なんとか薬をやめられるようにがんばろう」と思う人が増えるかもしれません。

生活習慣を変えれば薬が減ることも

医薬品売上高ランキングの上位に、それほど価格の高くない高血圧や糖尿病の薬が入っているということは、本当に多くの人が生活習慣病にかかり治療をしているということです。
もちろん必要だから治療をしているのであって、お金がかかるから病院に行くのをやめるのでは本末転倒です。

しかし、例えば高血圧であれば減量や塩分制限など薬以外に努力できる部分がたくさんあります。
中年期は太っていて血圧が高かったけれど、年をとって食事量が減り、痩せたために血圧が下がったというケースもかなりあります。
具体的には1キロ痩せると、だいたい「1〜1.5mmHg」血圧が下がるといわれており、肥満傾向が強い場合、10キロ痩せれば血圧も10〜15mmHg下がるので、血圧が140〜150台であった方は投薬治療をやめられることも十分あります。

医療費についてもっと考えてみよう

日本の医療費の制度は、みんなが医療を受けやすいようにできていますが、それと同時に本来かかっている全体の医療費について考える機会が少ないのが現状です。
高血圧や糖尿病、高脂血症などの治療を受けている方も、毎年健診で引っかかってしまう方も、みんなが少しずつ気をつけることが、日本全体の医療費を抑制することにつながります。
現在、次々と新しい抗がん剤、抗ウイルス薬、難病治療薬などの高額な薬が販売されています。
今まで治らなかった病気が治るというのは素晴らしいことです。
その一方、生活習慣病など個人の努力で変えられるものは減らしていかないと、今の制度の維持がどんどん難しくなっていくでしょう。
「食生活を変える」「体重を減らす」「ジェネリック医薬品に切り替える」など、できることがないか、今一度見直してみることが大切です。

 

 

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田中 祥子株式会社ドクタートラスト 産業保健部 保健師

投稿者プロフィール

企業の健康管理室で働いていた経験をさまざまなかたちで皆さまにお届けします。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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