男性被害者は「相談できない」53.8%—職場のハラスメントの実情—

福井労働局が職場のハラスメントに関するアンケート調査の結果を発表しました。
職場におけるセクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」という)、およびパワーハラスメント(以下「パワハラ」という)の現状と実態を把握するため、県内の事業所においてアンケート調査を実施したもので、福井労働局では初めての試みでした。
アンケートの結果からは、ハラスメントの抱える課題がみえてきました。

職場のハラスメントに関するアンケート調査の結果

アンケートの概要

平成29年7月20日(木)、26日(水)に福井労働局が開催した「改正育児・介護休業法及び労働行政関係助成金説明会」に参加した事業主、人事労務担当者等に対し、アンケート調査を実施。
男性140名、女性110名の合計250 名が回答しています。

アンケートの結果

アンケートの回答では、同性間でもセクハラになると知っていたのは全体の約8割、LGBTの者へのセクハラを知っていたのは全体の約7割と、セクハラについての知識は、多くの社員が保持していました。
また、セクハラ・パワハラについて問題視している人はどちらも全体の98%を超えており、ハラスメントについて高い意識を持つ方々が多いことがわかります。
会社でセクハラ事案またはパワハラ事案が発生した(3年以内)という設問には、セクハラが10%、パワハラは13.6%の方が発生したと回答しています。

セクハラを受けた人の3名に1名は男性

セクハラ事案が発生したと回答した方のなかで、過去に「セクハラを受けた、セクハラと感じた」との回答は 17.6%。
そのうち、男性は29.5%と、3割近くを占めています
セクハラ=女性と思われがちですが、予想外に男性の比率が高いことに驚かれた方も多いのではないでしょうか。
その男性に対して、セクハラを誰に相談したかの内訳を示すアンケートを行ったところ、「相談しなかった」との回答が最も多く 53.8%となりました。
対して女性は「同僚」に相談との回答が最も多く 42.0%でしたが、「会社の相談窓口に相談」は 6.5%と低さが目立つ結果となりました。

セクハラ・パワハラを受けたときの対応について

同調査でセクハラを受けたと回答した44名のうち、男性は13名です。
先ほどもご紹介した通り、セクハラを誰に相談したかという質問の回答で、女性は「同僚」に相談という回答が42.0%と最も多かったのに対し、男性は53.8%が「相談しなかった」に回答しています。
つまり、男性の半数以上が誰にも相談することなくセクハラに耐えていたということになります。
次はパワハラについてみていきましょう。
パワハラを受けたと感じたという回答は54名と、セクハラよりも多くなっており、そのうち27名(半数)は男性でした。
セクハラ同様、パワハラを受けた際の対応に注目してみると、男女別の内訳において男性は「相談しなかった」との回答が最も多く 40.7%となっています。
対して、女性はセクハラ同様、「同僚」という回答が48.1%でした。
以上の調査から、ハラスメントを受けたとき、女性は相談することで事態解決に導こうとするのに対して、男性は約半数が誰にも相談することができないという現状が明らかになりました。
なぜ相談しないのかという理由は様々であることが推測されますが、こうしたことにより、ハラスメントが明るみに出ることがなく、本人が不快な思いをし続けたり、退職を決意するケースもないとはいい切れないのではないかと思います。
それでは困ると、社内に相談窓口を設置して対応策とする企業も多くあります。
しかし、同調査の結果においても、会社の相談窓口の利用はセクハラが11.4%、パワハラが7.4%と低く、会社に情報が伝わりにくい状況であることがわかります。

セクハラ・パワハラを予防するために

ハラスメントでは、アンケートを取ることが、抑止の一つとなるといわれています。
職場のハラスメント防止対策を効果的に進められるよう、職場の実態を把握するためのアンケート調査を早い段階で実施することで、現状確認以外にも従業員の意識の把握に加え、働きやすい職場環境づくりについて考える貴重な機会にもなります。
さらに、そうしたアンケートを定期的に行うことで従業員の意識も高まり、大きな抑止となることも期待されます。
また、社外での相談窓口も効果的な方法の一つです。
社外の相談窓口に相談することで、人事的なことなどを心配することなく、本音で相談することができるという意見も耳にします。
今回の調査からもわかる通り、ハラスメントを明るみにすることは困難で難しいことです。
社員全員で取り組み改善への意識を高めることで、より良い職場環境構築が実健するのではないでしょうか。

◆参考◆
セクシュアルハラスメントについての従業員用アンケート例(PDFダウンロード)
パワーハラスメントアンケ―ト導入マニュアル
外部相談窓口アンリ

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大沼 泉株式会社ドクタートラスト ストレスチェック研究所

投稿者プロフィール

結婚・出産・育児といったライフイベントを乗り越えながら女性がいきいきと働くには、どんな職場環境が望ましいのか。ブラック企業から転職し、産休育休を経た経験をもとに、産業カウンセラー、そして働くママ社員の立場からさまざまな情報をお伝えしてまいります。
【保有資格】産業カウンセラー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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