8割が法令違反!ドライバーの労働環境とは

トラックやバスの大きな事故は、ここ数年、毎年のように話題に上がります。
そして、その背景にあるドライバーの過密シフトや睡眠不足、健康診断未実施なども必ず報道されています。
ドライバーの安全管理不足は、時として他人の命を奪ってしまうこともある非常に大きな問題です。
しかし、先日厚生労働省から発表されたデータでは、驚くべき高い割合で労働安全衛生法違反が行われていたことが明らかになったのです。

8割超の事業所で労働安全衛生法違反

厚生労働省は、先日、平成28年に全国の労基署がバス・タクシー・トラックなどの自動車運転を使用する事業所に指導監督を行った結果を公表しました。
この「自動車運転者を使用する事業場に監督指導」によると、全国の労基署が監督指導を行った約4,000件の事業所のうち、実に約85%で労働安全衛生法違反が認められたことが明らかになっています。
監督指導に入る時点で、何らかの違反が疑われているケースが多いわけですが、この数字は高いといわざるを得ません。

内訳をみてみると、
労働時間の違反:55.6%
割増賃金の違反:21.8%
休日の違反:5.0%

となっており、労働時間の違反が最も大きな割合を占めています。
ドライバーの過重労働や連続勤務は、運転中の注意力低下をもたらし、大きな事故を引き起こす引き金となります。
また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を抱えるドライバーにとっては、過重な労働は、脳梗塞・心筋梗塞を起こす要因にもなり得るのです。

更に悪質な違反のケースも

さらに、そのうち約60件は送致されているという結果も併せて公表されています。
この「送検」というのは、特に重大な労働安全衛生法違反であったり、何回も指導に入っているにもかかわらず改善が見られない場合に行われます。
少し大げさないい方をすると、60件の犯罪が行われていたともいえる状況です。
発表されたレポートに事例も紹介されていますので、簡単に紹介します。

【事例1】
 ドライバーが作業中にに脳梗塞を発症した事業場において、発症前には1ヵ月最長120時間以上の時間外労働を行わせていた。

【事例2】
 一度立ち入り調査を受け、長時間労働を短縮させるよう指導を受けた事業所が、短い期間で再度ドライバーに長時間労働をさせ、その時間数は最長で1ヵ月200時間にも上った。

【事例3】
 高速道路で死傷者が発生した重大な玉突き事故を発生させたトラックドライバーに対して、事故発生前に違法な長時間労働をさせ、健康診断も実施していなかった。

事例1は、死亡事故にこそつながらなかったもののの、運転中に脳梗塞を発症し運転制御ができなくなっていたらどうなっていたでしょうか。
事例2に関しても、200時間を超える労働では、十分な睡眠・休養時間を確保していたとは到底思えず、居眠り運転や注意力の低下が日常的にあった可能性があります。
事例1や2のような状態では、大切なドライバーの命や周りを走行する自動車の安全を奪う事例3のような事態をいつ引き起こしてもおかしくはありません。

ドライバーの健康を守るために

今回の調査結果からもわかるとおり、厚生労働省も重点的に取り締まった上で改善に向けての指針も出してはいますが、現時点では事業者側がに対応できているとは考えにくい状況です。
運送業界では、労働環境の見直しに入った大手企業もありますが、やはり中小企業では、人材不足や経営上の理由から、改善に至らないケースも多いようです。

しかし、もしも大きな事故を起こしてしまったら、事業の継続すら難しい状況に陥ります。
まずは雇用しているドライバーの健康状況をきちんと把握し、生活習慣病も含めて、再検査・受診が必要ならばそれらを促すこと。
そして睡眠時間・休憩/休息の状況をきちんと把握し、少しずつでも改善につなげていくことが大切です。
ドライバー向けのマニュアルは
事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル
トラックドライバーの健康管理マニュアル
などが活用できます。

事業者の費用負担についても、例えばトラックドライバーを雇用する事業所であれば、全日本トラック協会から睡眠時無呼吸症の検査や安全教育を受ける費用などの助成金も受けられます。
今後、労働人口は減少する見込みであり、再雇用も含めて、労働者の年齢も上昇しています。
自動車を業務であつかう業界だけでなく、労働時間を含めた労働環境の整備は急務ではないでしょうか。

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