衛生委員会の進め方講座~実践編~

本年9月、『経営の影の立役者となりうる衛生委員会』というタイトルで衛生委員会について所感を書きました。

今回は、では実際にどのように衛生委員会を行っていけばよいか、実践方法について考えていきたいと思います。

大きなテーマを掲げる

大テーマを掲げる理由として、衛生委員会をブレのないものとするため、また、メンバー間での目標が明確になることへの期待があります。
そして、共通目標があることでメンバー一人一人が当事者意識をもち、各自の部署にて実行に向けて働きかけることも期待できます。
目標実現に近づきやすく、衛生委員会を継続するほど組織はより良いものになっていくでしょう。

・ 有給休暇消化率向上
・ 労働時間削減
・ 職場環境改善
・ 人員の適正配置

大テーマ例として上記などがありますが、すべてにおいて必要なステップは、“現状把握”、“目標設定”、“現時点で改善できない原因を知る”等でしょう。
衛生委員会内でもチームを作り、全社的に取り組むことができると理想的です。

たとえば「時短勤務」をテーマとする

「産業保健新聞」を運営しているドクタートラストを例に挙げると、現在の衛生委員会の大きなテーマは「時短勤務」です。
もともと過重労働があるような企業ではありませんが、子育てや介護があっても社員が実力を発揮できるような組織や、個人の生産性の向上を目指し、時短の実現を全社員が目標としています。
時短をテーマにしていることもあり、衛生委員会の時間も30分と決めてあります。
この時間の中で、大きなテーマである『時短勤務』以外にも、もちろん報告事項など議題はあります。

 大きなテーマはどのように決めるとよいか?

ドクタートラストの場合は、従業員数50人未満のいわゆる中小企業にあたります。
社長の考えが伝わりやすく、テーマも設定しやすいという利点が挙げられるでしょう。
テーマを設定するにあたり、できる限り経営者と社員で、組織の向かうべき方向性を考えた上で設定することが望ましいでしょう。
さらに、昨年から50人以上の事業場に義務化されたストレスチェックの集団分析の結果から、テーマを考えることもできると思います。
集団分析の尺度は、①量的負担 ②コントロール ③上司の支援 ④同僚の支援があります。
集団分析を参考にする場合、良い点、悪い点が数値から何かしら見えてくると思います。
たとえば、“①量的負担”が多くても健康リスクが低く出るのは、社員が業務をコントロールしやすいから=“②コントロール”の数値からなのか、あるいは、職場の支援体制がいいから=“③上司の支援④同僚の支援”の数値からなのか、両方からなのか。
逆に、量的負担が多くなくても健康リスクが高い場合もあります。
集団分析結果を様々な角度から分析し、そこから衛生委員会のテーマを生み出す努力をしてみることをおすすめいたします。

年度途中でいきなりテーマを掲げることは難しい場合

労働安全衛生法と労働安全衛生規則に記載のある衛生委員会で話し合う必要がある項目について、具体案を出してみます。

◆健康障害を防止するための対策として
健康診断の結果、健康障害(健診項目のうち異常値が多い項目)に対する対策や措置を、産業医や保健師からの情報をもとに考えましょう。
職場巡視の結果(衛生管理者は1/週,産業医は1/月)、健康障害が生じると考えられる事柄について、衛生管理者や産業医からのコメントから職場改善を計画しましょう。

◆健康の保持増進を図るための対策として
季節や流行に合わせた健康情報を社員に効果的に周知する方法を見直しましょう。

◆労務災害・通勤災害の原因および再発防止対策として
勤務時間中の車両事故について、本人からの報告書提出で終わらせていませんか?
労働災害や再発防止のためには、状況を把握し、起こった背景についても深く掘り下げ、その状況を起こさないようにすることが大切ですが、さらにその状況が起きた場合の最適な行動は何か、を話し合い、再度同じ事故が起きた時はどう対応するかまで共有しておくことが大切です。

◆その他、健康障害の防止および健康保持増進に関する重要事項として
長時間労働について、具体的な時間数や人数を把握していますか? 有給消化率についてはいかがですか?

まずは現状を把握していることが大切です。

従業員の健康管理は、組織を発展させていくなかで避けては通れない問題です。
現状に問題があっても、少しずつでも変化させていくことで、必ず好循環の流れが作り出せます。
各社において、今より少しでも衛生委員会が意味のあるものと考えられるよう、弊社も各種サポートを行っています。
産業医を導入したり、産業保健師による「衛生管理体制アドバイザリー・サービス」といったサービスの提供によって、各企業の衛生管理体制構築のお手伝いを行っています。

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