業務委託契約の安全配慮義務
- 2013/2/5
- 労働安全衛生法

個人事業主への安全配慮義務
先日企業の方からこんな質問をいただきました。
Q:個人事業主と業務委託契約を結んでいますが、安全配慮義務はありますか?
A:義務委託契約であれば、労働契約を結んではいないので安全配慮義務はありません。
労働契約は、民法623条により「雇われるものが雇い主に対して労務に従うことを約束し、雇い主がその対価として報酬を支払うことを約束することによって成立する契約」とされています。
一方で業務委託契約は、民法643条、656条により「事業主として特定の仕事を処理することを目的として行われる契約」となっています。
労働契約と業務委託契約の違い
業務委託契約は、労務の提供による対価として報酬が支払われるのではありません。
社員ではないので、健康保険や厚生年金、雇用保険等の保険料の負担義務がありません。
また、労働基準法を始めとする労働関係法令が適用されませんので、年次有給休暇の付与、最低賃金の適用等もありませんし、健康診断の実施の必要もありません。
ただし、業務委託契約であっても労働者性が高いとして、業務委託契約ではなく、労働契約とみなされる場合があります。
この場合は、安全配慮義務が発生するということになります。
労災がおこった際には、実態をもとに判断されることが少なくありません。
実態の有無
以下の点に注意する必要があります。
① 仕事の依頼、業務従事の指示に対する諾否の自由があるか
② 業務の遂行方法および内容に指揮命令が及んでいないか
③ 通常予定されている仕事以外に従事することはないか
④ 労働時間管理など拘束性がないか
⑤ 本人に代わって他の者が業務を行うことを認めているか
⑥ 報酬の計算単価が時間給や日給といった時間をもとにしていないか
⑦ 本人が所有する機械・器具の使用を認めているか
他にも、判例によると次の場合は労働者性を肯定する有力な材料となります。
① 採用・委託などの選考過程が正規従業員とほぼ同じであること
② 報酬について給与所得としての源泉徴収をおこなっていること
③ 労働保険の適用対象としていること
④ 服務規律を適用していること(就業規則の遵守を求めていること)
⑤ 退職金制度など福利厚生制度を適用していること
現在の契約内容や、運用の実態を再度確認するとともに、自社の安全配慮義務について一度見直してみませんか。
参考:安全配慮義務とは
労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。