「出向社員」に対する安全衛生管理
- 2015/7/2
- 労働安全衛生法

日本では、パートタイム社員、派遣社員等のさまざまな雇用形態が存在しています。
その中でも、今日は「出向社員」に焦点を当ててみようと思います。
そもそも、出向(出向社員)とは?
出向とは、労働者が使用者(出向元)の指揮監督のもとから離れて、第3者である出向先において、出向先との一定の労働契約関係を成立させ、その指揮監督を受けて労務の給付を行う労働形態のことです。
出向には以下の2つの種類が存在しています。
1.在籍出向…出向元との労働契約にもとづく従業員たる地位を保有したまま出向先の指揮監督下に労務を提供する場合
2.転籍出向…出向元との労働契約を解消したうえ、出向先との間で新たに労働契約を締結する場合
※ 世間一般でよく話題にあがる「出向」とは、前者の「在籍出向」を指すことがほとんどでしょう。
安全衛生管理の責任は出向元? 出向先?
まず第一に、労働安全衛生法上の事業主責任については、労務の提供を受けている「出向先」が負うことになります。
しかし! 全責任が出向先のみに生じてくるというわけではありません。
労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と、使用者の安全配慮義務というものが定められています。
在籍出向の場合は、出向元も従業員との労働契約関係が存続している以上、出向先と同等に同義務を負うことになります。
出向元が責任を問われるケース
<事例>
関連会社に出向させた社員が、業務上の精神的・肉体的ストレスにより、うつ病になってしまった。
出向先で起きたことなので、詳しい事情は分からないが、関連会社ということで、業務内容や量に関しては、非常に負荷が高い状況ということは、噂程度でも認識があった。
⇒出向者の負荷が高い状況を認識しながら、健康に配慮せず、また、何らの措置を取っていなかった今回のケースでは、うつ病発生の因果関係は出向元にもあると評価される可能性は極めて高くなるといえます。
出向元も適切な対応を…
企業は、出向させた社員についても、出向させたので無関心となるのではなく、労働環境や、労働者の健康に関する情報を把握し、過酷な労働状況、労働者の過度な精神的負担等を認識したのであれば、その情報に基づき適切かつ相応な措置を行うことがより望ましいのではないでしょうか。