海外の産業医事情

日本では従業員が50名を超えると、産業医を選任しなければならないと法律で定められている。(労働安全衛生法13条)
それでは海外の産業医事情は一体どうなのだろうか。いくつか例に挙げて紹介する。

フランスの場合

フランスでは労働医(日本でいう産業医)の制度がある。
この制度では、企業の社員数や大きさなどに関わらず、すべての労働者が労働医のサービスを受けることができる。
フランスの企業では労働医療機関を設置が義務づけられており、設置基準としては下記のようになっている。

・ 大企業:自社のためだけの労働医療機関を設置
・ 中小企業:複数の企業で共同の労働医療機関を設置・加入

上記区切りに関しては、労働者数などではなく、労働医が職務遂行にあてるべき勤務時間に応じて決まる。
また、この労働医療機関は地方労働雇用局長の事前の承認を受ける必要があり、管理運営・費用に関しては企業側の責任の負担で行われ、従業代表機関である企業委員会の監視のもとにおかれる。

<労働医になるためには?>
労働医になるためには下記条件をクリアしなければならない。
・ 医学部を6年修了後、さらに4年の専門教育を経た者
・ 労働医学専門教育終了証書または労働医学専門教育学位を授与された者

日本の産業医にくらべて、医学部卒業後にさらに4年の専門教育を受けなければならないなど、労働医になる条件は厳しい。

ドイツの場合

ドイツでは1973年に企業内産業保健活動の法令として労働安全法が制定され、産業医の選任がこの法によって義務づけられている。
この産業医の選任形態(契約形態)は次の3つが認められている。

① 産業医を労働者として組み入れないタイプ
② 産業医を労働者として企業に組み入れるタイプ
③ 産業保健サービスとの業務委託契約(中小企業向け)

③産業保健サービスとは、労災保険の保険者である職業組合などが主体となり産業医の雇用・施設の整備などを行っているものである。
このサービスによって労働者はさまざまな産業保健サービスを受けることができる。
また、このサービスを使用する企業の利点として、複数の中小企業から使用料を徴収しているため、個別契約よりも安く利用できる。

<産業医になるためには?>
・ 医師の資格を持つ者
・ 産業医の任務に必要な産業医学上の専門知識を行使できる者
・ 3か月の理論研修を含んだ、産業医としての1~2年の臨床研修を履修した医師

上記条件を満たすことが必要となる。

イギリスの場合

イギリスでは1974年に「職場における安全衛生等に関する法律」が制定されたが、この法律には産業医の選任義務は定められていない。
選任が法定化されていない理由のひとつとして、家庭医登録制度が挙げられる。
家庭医登録制度とは国民がそれぞれの主治医を持ち、健康診断からリハビリテーションまでのすべての医療サービスを原則無料で受けることができるというものである。

企業の中には任意で産業医や産業看護婦の活用等を産業保健サービスとして労働者に提供する企業もあるが、民間で産業保健スタッフを置いているのは全体で8%のみとなっている。

<産業医になるためには?>
法的に産業医の選任義務が定められていないので、必要な資格などは特に定められていない。

3か国の産業医事情について紹介したが、他にも500名以上から選任義務が発生する国など、国によって産業医が必要となる条件はさまざまである。
また、イギリスの家庭医制度など、国によって医療サービスも異なるため、それによって産業医の制度も大きく変わってくる。

厚生労働省HPに上記にあげた国以外の状況も詳しく記載されているのでぜひご覧いただきたい。

<参考>
厚生労働省「諸外国の産業医及び産業保健サービス機関に関する制度」

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