事業者の安全配慮義務について
- 2012/11/1
- 労働安全衛生法

事業者の安全配慮義務
労働契約法(第5条など)の定めにより、労働者の健康(メンタルを含みます)と安全につき、配慮しなければならない義務と責任があります。
会社での働き方(長時間労働やストレス、パワハラなど)が原因で、メンタル不調者が出た場合、事業者はその原因を
取り除き、労働者が健康を取り戻すことができるようサポートするとともに、予防対策を講じなければなりません。
心身ともに健康だった方が、メンタル不調に陥る原因は、個人的な問題(死別、離婚、借金、育児、介護など)と「会社での働かせ方の問題」が重なり合って発症するケースが多く、すべての原因が会社にある訳ではありませんが、「会社での問題」を放置してもいいということにはなりません。
安全(健康)配慮義務違反とは
歴史的にみて、昭和のころの「安全配慮義務」=勤務中の「事故や怪我」を予防することと考えられていましたが、昨今では過重労働などの会社での働き方が原因がある過労自殺や脳・心臓系の疾病、うつ病などの精神疾患について、
労災認定がなされるケースが増加したため、裁判などでは、「健康配慮義務」と呼ばれ、引用されることが
一般的となっています。
安全配慮義務違反となるポイントは、下記の2点です。
①社員が心身の健康を害することを会社が予想できた可能性(予見可能性)があり、
②それを会社として回避する手段があったにもかかわらず(結果回避可能性)、手段を講じなかった場合に、
安全(健康)配慮義務違反となります。
最悪のシナリオのひとつである「過労やストレス・パワハラなどにより、うつ病となり、自殺してしまう」ケースを考えた場合、
①実態の残業時間や社員の働き方を直属上司や人事部が把握していれば、予測できないことはすくなく、
②「就業制限–休職や残業禁止処置など」や「配置転換」など人事的な措置を講じていれば、自殺には
至らなかった可能性がある場合、会社はもちろんですが、直属上司や人事担当者を民事や刑事事件として、
遺族が損害賠償請求を提訴するケースが増えています。
過労自殺の裁判で、会社側は「社員の自殺について、予見することができなかった」ことを主張することが多いようですが、1ヶ月間で80~100時間超の残業をさせていれば、当然に予見できるものと扱われるようになってきています。
Q.残業時間が100時間を超える従業員がいます。
体調も思わしくなく、健康診断でも再検査の項目があります。産業医からは受診勧奨の指示が出ていますが、多忙などを理由に拒み続けられています。万が一この従業員が倒れた場合、安全配慮義務違反になりますか?
A.企業としては、産業医面談も定期健康診断後の事後措置も行っているので、安全配慮義務違反とまではいえません。しかし、明らかに勤務に影響が出る状況を知っていながら働かせている状況は見過ごされません。従業員が倒れた場合は会社の責任がないとはいえません。本人にアプローチしても反応が薄い場合は、上司の力を借りることも必要かと思います。
≪コメント≫
安全配慮義務を怠ったということで、事業者側が賠償を請求される判例が多数出てきています。(インターネットで検索するとすぐに出てきます。)
ここまでしておけば大丈夫!という線引きができない為、企業側の対応はとてもむずかしいと思います。但し、過労により労働者がうつ病を患ったり、自殺をしてしまうような会社は良くないというのは、火を見るより明らかです。
事業者側は、常日頃から労働者の状態を管理することが大切です。その為に衛生委員会で注意喚起し、産業医に診てもらったりということが必須になっています。そうしていくことにより、労働者も“会社から大事にされている”ことを再認識することができ、業務に集中し、業績も上がっていくものだと思います。