世界一の救命都市
- 2014/8/11
- 雑学

世界一の救命都市といわれている場所、ご存じですか?
それは、アメリカのシアトル。
アメリカのシアトル市における「救命率」は、年間平均で30%~40%という驚異的な数値を示しています。
救命率とは心臓疾患が原因で心肺停止となった人を、一般市民が目撃してから1カ月以上生存した症例の率のことです。
では、日本の救命率はと言いうと……。
わずか5%未満に過ぎません。
シアトルでの高い救命率を支えているものはなにか?
それは・・・「バイスタンダーCPR」(その場に居合わせた人が心肺蘇生法を実施すること)の高さであり、市民 の「救命講習の受講率の高さ」がその背景にあります。
シアトル市総人口 約60万人の約半数が救命講習の受講者であり、2人に1人の市民が応急手当を実施できる有資格者なんです。
シアトル市の高い救命率は、バイスタンダーと救急隊員の連携により「救命の鎖」が機能していることにより達成されているといえます。
現在の日本においては、バイスタンダーCPRが実施されることはあまりありません。
もちろん実施されることもあるが、されない症例も。
一体それはなぜなのでしょう?
法的責任への不安
東京消防庁「平成23年消防に関する世論調査」によると、応急手当てを何もしない理由として、以下が挙げられています。
- 何をしたらよいかわからないから(71.9%)
- かえって悪化させることが心配だから(56.3%)
- 誤った応急手当をしたら責任を問われそうだから(18.8%)
- 感染などが心配だから(9.4%)
日本とシアトルの違い
シアトルには、善きサマリア人法が施行されています。
善きサマリア人法とは、「災難にあったり急病になった人など(窮地の人)を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法です。
誤った対応をして訴えられたり処罰を受ける恐れをなくして、バイスタンダーによる傷病者の救護を促進しよう、との意図があります。
日本においては、救命処置は、義務のない第三者が実施する関係になることから、法律上の免責については、以下のとおり整理されています。
民法との関係では、第698条の「緊急事務管理」に該当すると考えられ、悪意または重過失が無ければ救急蘇生法の実施者が救急患者などから責任を問われることはないと考えられています。
なお、この場合、単なる過失ではなく、重大な過失ということであり、一般市民の場合、医療関係者に比べ、重大な過失であるかどうかの判断基準は低いとされています。
また、刑法との関係では、過失の有無は個々の具体的事例に応じて判断されるところ、救命手当実施者に要求される注意義務が尽くされていれば、過失犯は成立しないとされちます。
またその注意義務の程度は、医師の要求される注意義務のそれより低いもの、とのことです。
【参考】
・ 東京消防庁「平成23年消防に関する世論調査」(PDF)