「精神障害の労災認定基準」見直しへ~厚労省、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」開始~

精神障害の労災認定基準

2019年12月16日から厚生労働省で「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」が始まりました。
この検討会では、2020年6月からパワハラ防止法が適用されることを見据え、過労自殺やうつ病といった精神障害の「労災認定基準」の見直しを行っていきます。


現在の精神障害にかかる「労災認定基準」は2011年に策定

現在、精神障害に関する労災認定基準は、2011年12月に策定された「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づいています。
この認定基準では、6の類型、36の具体的出来事が示されています。

類型① 事故や災害の体験
・ (重度の)病気やけがをした
・ 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした
類型② 仕事の失敗、過重な責任の発生等
・ 業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起こした
・ 会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした
・ 会社で起きた事故、事件について、責任を問われた
・ 自分の関係する仕事で多額の損失等が生じた
・ 業務に関連し、違法行為を強要された
・ 達成困難なノルマが課された
・ ノルマが達成できなかった
・ 新規事業の担当になった、会社の立て直しの担当になった
・ 顧客や取引先から無理名注文を受けた
・ 顧客や取引先からクレームを受けた
・ 大きな説明会や公式の場で発表を強いられた
・ 上司が不在になることにより、その代行を任された
類型③ 仕事の質・量
・ 仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった
・ 1ヶ月に80時間以上の時間外労働を行った
・ 2週間以上にわたって連続勤務を行った
・ 勤務形態に変化があった
・ 仕事のペース、活動の変化があった
類型④ 役割・地位の変化等
・ 退職を強要された
・ 配置転換があった
・ 転勤をした
・ 複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった
・ 非正規社員であるとの理由等により、仕事上の差別、不利益取扱いを受けた
・ 自分の昇格・昇進があった
・ 部下が減った
・ 早期退職制度の対象となった
・ 非正規社員である自分の契約満了が迫った
類型⑤ 対人関係
・ (ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた
・ 上司とのトラブルがあった
・ 同僚とのトラブルがあった
・ 部下とのトラブルがあった
・ 理解してくれていた人の移動があった
・ 同僚等の昇進・昇格があり、昇進で先を越された
類型⑥ セクシュアルハラスメント
・ セクシュアルハラスメントを受けた

上記のとおり、現行の労災認定基準には「セクシュアルハラスメント」は明記されているものの、「パワーハラスメント」については具体的な類型がありません。

精神障害にかかる労災請求件数は6年連続で過去最多を更新

2018年度の精神障害にかかる労災請求件数は1,820件でした。
労災請求件数は2012年度以降、以下のように増加の一途をたどっており、今後も増加が見込まれる状況にあります

2012年度:1,257件
2013年度:1,409件
2014年度:1,456件
2015年度:1,515件
2016年度:1,586件
2017年度:1,732件
2018年度:1820件

今後の見通し

今後は、現行の「精神障害の労災認定の基準」を前提としながら、パワーハラスメントの項目(類型の追加)を追加する見直しを行っていきます。
また、パワハラのみならず、最新の医学的知見から、全般の見直し、整理も行っていく見込みです。

一方、「脳・心疾患の労災認定基準」については、2001年に改訂されて以降、見直しが行われていません。
そのため、2020年度に融資9貴社検討会を行い、認定基準全般の見直しを行う予定です。

<参考>
厚生労働省「第1回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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